燃料サーチャージ制、中東情勢緊迫化で注目
中東情勢の緊迫化による燃料価格高騰により、燃料サーチャージへの注目が高まっている。これまで導入していなかった宅配事業者でもサーチャージ導入の動きが浮上。ヤマト運輸(阿波誠一社長、東京都中央区)では法人向けの宅配便での導入を視野に入れており、佐川急便(笹森公彰社長、京都市南区)も、個人向けも含めた設定について検討している。宅配以外では、これまで普及はあまり進まなかったが、標準的運賃にも燃料サーチャージが盛り込まれるなど状況が変わりつつある。(特別取材班)
燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建て運賃として設定する燃料サーチャージは2008年に導入された。9月の米投資銀行のリーマン・ブラザーズの経営破たんによる「リーマン・ショック」に端を発する燃料価格高騰で、同年中に4割の事業者が導入したものの、高騰局面が沈静化したことに伴い、その後、普及ペースが鈍化した。また、導入が進まない背景には「荷主が輸送費の変動を嫌う」「燃料費が下がった場合に還元しなければいけなくなる」といった事情もあるとみられる。
しかし、愛知県トラック協会(青木均会長)の調査によると、会員事業者の3月の燃料価格は全体平均で1㍑当たり前月比26円上昇。こうした急激な上昇に対応するためにも、燃料サーチャージの重要性が高まっている。
先駆けてサーチャージ制を導入した中田商事(三重県伊賀市)の中田純一社長は「きっかけはリーマン・ショックだった。仕事が一気になくなり、諸条件の変更で顧客を回った際に燃料サーチャージのお願いもした」と振り返る。当時は厳しい状況だったため、多くの荷主が承諾してくれたという。
新型コロナウイルス感染拡大による輸送力の減少を契機に導入したホレスト(林利浩社長、埼玉県入間市)は、2020年の標準的運賃の設定と同時に検討を開始。運賃と別建てで請求できる仕組みを23年ごろから段階的に導入している。
また、光陽商事(西野嘉一社長、大阪府門真市)はロシアによるウクライナ侵攻が始まった22年から交渉を本格化。燃料の高止まりの懸念が高まったことから、先手を打つ必要に迫られた。最近は特に軽油価格の乱高下が続いているが、サーチャージの契約で価格上昇分を転嫁できているという。
中東情勢の不安定化を受け、取り組みを加速させたのは泉海商運(岡山健治社長、大阪府和泉市)。従来は6割の荷主と燃料サーチャージを運用していたが、今年4月1日付で燃料サーチャージ変更の運賃届け出を行い、残りの4割へも導入を促している。
国によるさらなる支援を期待する声も聞こえる。バンボード運輸の吉原社長は「トラックの『適正原価』が指針になる。28年度までに予定されている適正原価の導入を前倒しするなど、価格交渉を進める企業に対する国の後押しを求めたい」としている。
原油相場の変動を理由にこれまで導入を見送っていた事業者にも検討の動きが広がっている。中鋼運輸(広島県呉市)の高橋誠二社長は「イラン情勢で上昇していくのは間違いなく、転嫁しなければ事業が成り立たなくなる」とみて、広島県トラック協会(小丸成洋会長)のガイドラインを参考に自社の対策を検討している。
これまで親会社と共同で長距離輸送は海上輸送を利用し、サーチャージ料金を適用してきたが「トラックでもある程度は受け入れてくれるのではないか」と期待を込める。
「2024年問題」以降、荷主にも運賃値上げの重要性への理解が進んでいる。しかし、荷主側から運送コストの内訳がブラックボックス化していることに対して戸惑いの声も聞こえる。透明性の高い運賃を提示するためにも、サーチャージの重要性は高まるだろう。
一方、導入の難しさを指摘する企業もある。24年秋から導入を開始したバンボード運輸(吉原啓介社長、佐賀市)は、それまでは「10%値上げ」といった形で値上げ交渉を行っていた。その後、その内訳を示したほうが荷主の理解を得やすいと感じ、荷役や付帯作業の費用、休日出勤手当とともに、燃料サーチャージを提案した。ところが「チャーター便を利用する顧客は導入できた一方、スポット便利用の顧客は導入しづらいことが分かった」(吉原社長)という。
これに対し、スポット便の割合が高いホレストでは、その形態がサーチャージの交渉をスムーズにさせたと考えており、契約形態だけでなく荷主とのマッチングが課題となっていることがうかがえる。
価格については、国土交通省のガイドラインを基に決定している企業が多い。ほかにもガソリンスタンドの軽油平均価格や資源エネルギー庁の「石油製品価格調査」を活用している例もある。
泉海商運業務部の勝本篤史部長代理は「燃料サーチャージがなければ、大変なことになっていただろう。やはり恩恵は大きい。当社の場合、サーチャージに理解のある取引先が多いと感じるが、直取引を推進してきたことが背景にあるかもしれない」と説明。ホレストは導入前後で燃料費に数千万円の差が出た。この差は中小企業にとって死活問題であり、経営に直結する、と指摘する。
光陽商事では荷主に対し、軽油1㍑当たり120円を基準に、一定幅以上の変動分を自社と荷主双方で負担する仕組みを構築。「長引く燃料高騰時にサポートしてもらうことを考慮すれば、いずれ安くなった時に還元しても十分に吸収できると判断した」(物流事業部)としている。
中田商事の中田氏は「燃料サーチャージ交渉で大事なのは、タイミングと本気度。『このままでは仕事ができなくなる』と本気で訴えることだ。燃料高騰で多くの中小事業者が赤字の心配をする現在は、絶好のタイミングでありチャンスだと思う。サーチャージの交渉をするなら、今しかないのではないか」と力を込める。


7日に開かれた業種横断の荷主企業9社による共同配送コンソーシアム「CODE」の代表者会議の初会合では、データドリブン(データ主導)での共配の実現に向け、各社がデータを提供し「コースマッチング」の仕組みを構築することを確認した。データを順次準備・投入し、2026年度下期以降の相応の規模感で、共配の実績を積み上げていくことを目指す。荷主主導による物流効率化のソリューションになり得るのか。12月の次回会合での成果報告が注目される。(田中信也)
共同配送の定期運行を行っている花王と三菱食品(伊藤和男社長兼CEO=最高経営責任者、東京都文京区)が呼びかけ、食品・日用品・医薬品・出版にまたがる荷主企業が参加するCODEは、地域圏内の物流拠点間や、物流拠点から小売店などへの納品を担う支線配送領域の物流効率化を目的に掲げる。
物流効率化法(新物効法)に基づく、物流の効率化の取り組みは「各社単独ではなし得ない」との共通認識に基づき、荷主間が連携して、限られた物流リソースを有効活用することが求められる。
ただ、地域間を結ぶ幹線輸送で検討・実行されているような混載や帰り便を活用した共同輸送、中継輸送による日帰り便の運行といった取り組みについては「運行が複雑・細分化されているため、課題の多い支線配送での荷主企業間の連携はチャレンジングな取り組みになる」(花王の森信介執行役員ロジスティクス部門統括CLO=物流統括管理者)と強調。こうした支線配送固有の課題をクリアするため、まずは参加企業同士が共配できる可能性の高いコースの組み合わせを可視化する「コースマッチング」を目指す。
コースマッチングは、混載など従来の共同配送と区別するため打ち出したもので、実現には、データドリブンによる共同配送計画を組み上げることが不可欠。このため、各社の配送データを収集し、データプラットフォームを構築し、その計算に基づき、最適なマッチングを行うことになる。
三菱食品の田村幸士・取締役常務執行役員SCM統括兼CLOは「これまでの共配は両社がそれぞれ表計算ソフトで作成した配車表を持ち寄って計画を立てていた。しかし、3社、4社と増えてくると対応できなくなる」と指摘する。
このため、各社は自社の配送データを開示し、その中から結合可能なものを抽出し、配車計画を組み立てることになる。その上で重要なのは公平・公正性の担保だ。事務局を担う花王の田坂晃一ロジスティクス部門戦略企画部長は「ある企業に(メリットが)偏ることのないような健全なマッチング運営に向け、ガバナンス(組織統治)をしっかり定める」ことを強調した。
9社は、業種はもちろん運行形態、商品の荷姿・重量、さらには競合他社の多寡なども多種多様なため、共同化には困難が伴うことが予想される。
しかし、参加者から「できない理由を探すのではなく、ポジティブに考えていきたい」(PALTACの五反将史・執行役員物流本部長)、「データドリブンは自社の方針に合致。CODEは日本語で『行動』とも読めるすごく良い名称だ」(三井物産流通グループの安達秀之・取締役専務執行役員物流ユニット長)、「物流データを客観的に取り扱っていくという理念に深く共鳴した」(メディセオの今村正博ロジスティクス本部副本部長)といった前向きな声が上がった。
任意団体として発足したCODEだが、将来的には法人化も視野に入れている。会合後の報道陣の囲み取材で、森、田村の両氏は、食品メーカー5社による物流企業、F-LINE(坂本次郎社長、東京都中央区)のように車両を保有し、物流サービスを提供するといった事業形態は「想定していない」と明言。「データが活動のメインなので、データを活用したマッチング結果の提供をイメージ」(森氏)、「データの提供や加工、(データに基づく)アドバイスなどが生業になるのではないか」(田村氏)とそれぞれ言及した。
データプラットフォームの構築やコースマッチングといった、これまでにないアプローチでの荷主主導の連携を、業種横断で取り組むことで、全産業レベルで物流改善が進むことが期待される。メーカーや小売店、物流事業者などサプライチェーン(供給網)の川上から川下までの連携を期待する声もあるが「まずは同じポジションの9社で一つの型をつくりたい」(田村氏)としている。

センコー、埼玉・草加にセンター
センコー(大越昇社長、大阪市北区)は8日、埼玉県草加市に草加ロジスティクスセンターを開設した。18日に入庫を始める。首都圏のディスカウントショップ向けの品目を取り扱う。貨物をソーターに自動で投入するデパレロボットや自動フォークリフトを導入し、省人化も図る。
マルチテナント(複数企業入居)型物流施設「CPD草加」(鉄骨造り地上5階建て)の延べ床面積3万5千平方㍍(1~3階の全区画と4、5階の一部区画)を賃借。1日100人体制を取るとともに、車両も100台配備する。
全階に連結した仕分けソーターを備え、デパレロボットと自動フォークリフトをそれぞれ4基導入。AI(人工知能)自動配車システムを採用し、効率的なオペレーションを進めていく。
同施設は、4階まではスロープを利用してトラックが各階に直接乗り入れることが可能。最大68台の車両が接車できる。東京外環自動車道・草加インターチェンジと、首都高速道路6号三郷線・八潮南入り口からそれぞれ4㌔と都心へのアクセスに優れる。付近には住宅地が広がっていることから、労働力確保の面でも優位性がある。各フロアには空調設備を取り入れるとともに、全バースに大型ファンを導入している。
18日に入庫を始め、6月1日から出荷を開始。5月8日の開所式で、大越社長は「2026年度に開設した第1号の物流センターになる。建設コストは増えているが、これからもセンターを増やして物流網を大きくしていきたい」との考えを示した。(土屋太朗)
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物流ニッポンからのお知らせ
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このたび、物流ニッポンのホームページをリニューアル公開いたしました。
これまで2つに分かれていたホームページを1つに統合し、より分かりやすく、情報を探しやすい構成へと刷新しております。
また、紙面に掲載している記事を閲覧いただける数が大幅に増えました。
今後も利便性の向上と情報発信の充実に努めてまいりますので、ぜひご覧ください。 -
物流年鑑2023年度版 電子版の登録を2025/9/30をもって削除いたします。 2025/10/1より閲覧不可となりますこと、ご了承のほどよろしくお願いいたします。
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25年4月より電子版利用料の引き下げ・新聞と電子版のセットプランを開始いたします
いつも『物流ニッポン』をご愛読いただき、誠にありがとうございます。
この度、2025年4月よりご要望の多かった新聞と電子版のセットプランをスタートさせます。
併せて、電子版を使いやすくするとともに、利用料を引き下げることにいたしました。
電子版セットプランは、紙の新聞に月額プラス1,100円(税込み)で新聞と電子版をご利用いただけます。
電子版は、従来の価格(月7,293円)より1,298円(税込み)お安くなり、閲覧可能な新聞を直近4号分(2週間)から8号分(1カ月分)へ拡大。
これまでより使いやすく、お得になります。
今後とも、物流ニッポンをよろしくお願いいたします。
<新料金 詳細>
電子版セットプラン 41,916円(6ヵ月) 下記内訳です
新聞 35,316円(うち 消費税2,616円 軽減税率8%)
電子版 6,600円 (うち 消費税600円 軽減税率10%)
電子版
新料金 17,985円(うち 消費税1,635円 税率10%)
旧料金 21,879円(うち 消費税1,989円 税率10%)