物流ニッポン – 全国の物流情報が集まるポータルサイト

Gメン合同パトに密着㊦、管轄外で初の「働きかけ」 和やかでも腹の探り合い

行政

2024/10/08 18:15

 西日本の各運輸局に属するトラックGメンが9月26日、2日連続の合同パトロールの最終日に臨み、大阪府の荷主に対して「働きかけ」を行った。管轄外の荷主に直接働きかけを行うのは初の試みで、長時間の荷待ちが多いと疑われる荷主を選定した。本紙が1日目に続いてパトロールに密着したところ、トラック事業者側と荷主の言い分が食い違うやり取りや駆け引きに直面。今回の活動を通じて、自らを奮い立たせるGメンたちの姿を追った。(根来冬太)

和やかでも腹の探り合い

 午前9時に近畿運輸局の会議室に集合して打ち合わせした後、約束の10時に荷主を訪問。Gメンの所属先は近畿3人、中国1人、四国1人、九州1人という陣容だ。相手側は4人ほどと知らされていたが、応接室に通されたところ、副社長、専務、常務を含め9人が並んでいた。
 まず、働きかけを行う旨の文書を手渡した上で、次のステップである「要請」に移った場合、物流の改善計画を定期的に提出する必要があること、更に「勧告・公表」に進めば、企業名が公開されることを告知。続いて、働き方改革の内容などを説明した。
 これに対し、荷主側は「ここにいる者は全員、その内容を知っています」と応答。彼らは「数年前までは長時間の荷待ちが当たり前だった」と認めつつ、近年は「2024年問題」対策として様々な改善を進めており、「なぜ我々が働きかけを受けるのか分からず、ショックだった」と吐露した。
 Gメンは「継続的に情報が寄せられている」と前置きした上で、「指定の時刻より早めに着いて待っているなど、ドライバー都合の時間は荷待ち時間にカウントしない。トラック側の情報だけをうのみにせず、荷主側の事情も聞くために直接伺った」と意図を伝えた。
 その後、「1日当たりのトラックの出入り量と、繁忙期との差」「構内入場から退場までの平均時間」「荷下ろし順の管理方法」などを具体的に質問。荷主は丁寧に回答していたが、冗談混じりに「どこの運送屋が言ったんやろなあ」「何県からの情報ですか」と繰り返した。
 これに対して、Gメンは「全国の事業者から声が届いています」と念押し。その上で、「情報源の特定につながることは言えず、探るのも辞めていただきたい」と強調した。
 70分ほど面談した後、トラックの待機場所など現場を案内されながら確認。この荷主は「今後も物流改善を進める」と約束した。終始和やかな雰囲気だったものの、お互いが持つ情報の量や真偽を見極める「腹の探り合い」のように映った。
 午後1時45分からは、西日本段ボール工業組合(大坪清理事長)と意見交換を実施。荷待ち時間の定義や、24年問題に関するオンライン説明会などを紹介した。組合員からは「段ボール業界は受注産業で、買い手市場になっている。着荷主に物流改善をお願いしようとしても、取引終了を恐れて言い出せない」といった声が上がった。
 中国運局自動車交通部貨物課の田中幸久課長は「商売の世界で買い手の力が強いことは承知している。そうしたことを踏まえて昨日、大手荷主の本社を多数訪問した。Gメンは何の契約のしがらみもないので、困った時は相談してほしい」と呼び掛けた。
 午後3時30分、近運局に戻り、2日間の合同パトを総括。あるGメンは「普段は電話と文書郵送による働きかけが多かったが、対面によるヒアリングの重要性が分かった。面談の数を増やしていきたい」と意欲を見せた。
 また、荷主団体との意見交換について「『複数の会社で運賃値上げや荷待ち時間削減を求めるのはカルテルに当たるのか』という質問があった。きちんと答えられるよう知識を身に付けるとともに、公正取引委員会など他省庁と連携した取り組みも重要だと思った」との感想があった。
 中国運局の田中氏は「Gメンは新しい活動で、何を参考にすれば良いか分からず、孤独に感じる場面も多いと思う。この2日間で得た知識と経験、他局の仲間とのつながりを大事にし、地元での活動に生かしてほしい」と檄を飛ばした。
 同行した2日間とも足が棒になるほど歩き回ったが、「あと1件(パトロールに)行きましょう」と時間ギリギリまで粘っていたGメンたち。昼食時すら午前中の振り返りを行う積極さで、各局とも本気で取り組んでいる姿勢が印象的だった。Gメンたちは今回のパトロールを通じて、サプライチェーン(供給網)の上流に位置する荷主の物流に対する理解がいかに重要か、思い知らされたのではないか。
 管轄地域の枠を飛び越え、新たな局面を迎えたトラックGメン。ただ、「東京本社に言ってほしい」とかわす荷主も多く、西日本エリア限定の連携では対応し切れない事案もありそうだ。今回の経験が糧となり、全国展開を視野に入れたより実効性のある取り組みへと進化することに期待したい。

荷主団体と意見交換する合同パトロールメンバー

タグ:



本紙ピックアップ

函館―長万部「並行在来線の経営分離」、貨物鉄道維持の議論停滞

 北海道新幹線の札幌延伸で、JR北海道から経営分離される並行在来線(函館―長万部)。経営分離後の貨物鉄道について、国の有識者会議は「必要」との方向性を示したが、維持費の負担割合など、かねて指摘される課題の結論は見えない。…

JR東日本、荷物専用新幹線を来月23日から定期運行

 JR東日本は6日、盛岡新幹線車両センター(岩手県盛岡市)で、全車両を荷物輸送専用に改造したE3系(7両編成)を初公開した。東北新幹線の盛岡-東京で、3月23日からの平日に定期運行を開始する。新幹線の速達性、定時性、安定…

JR貨物など、温度管理機能付き31㌳コンテナ導入

 JR貨物と武田薬品工業、三菱倉庫は5日、武田薬品の医療用医薬品輸送で初めて31㌳温度管理機能付きコンテナを導入した、と発表した。武田薬品は2023年から幹線輸送のモーダルシフトに着手し、東北、九州、四国、北陸、上越の各…

北海道/エゾシカによる交通事故、運送業者の被害増加

 北海道でエゾシカが関係する交通事故が多発している。道警によると、2025年はエゾシカが原因の事故が6705件発生。24年比で1245件増えており、9年連続で過去最多を更新している。北海道トラック交通共済協同組合(大友龍…

オススメ記事

函館―長万部「並行在来線の経営分離」、貨物鉄道維持の議論停滞

 北海道新幹線の札幌延伸で、JR北海道から経営分離される並行在来線(函館―長万部)。経営分離後の貨物鉄道について、国の有識者会議は「必要」との方向性を示したが、維持費の負担割合など、かねて指摘される課題の結論は見えない。…

JR東日本、荷物専用新幹線を来月23日から定期運行

 JR東日本は6日、盛岡新幹線車両センター(岩手県盛岡市)で、全車両を荷物輸送専用に改造したE3系(7両編成)を初公開した。東北新幹線の盛岡-東京で、3月23日からの平日に定期運行を開始する。新幹線の速達性、定時性、安定…

JR貨物など、温度管理機能付き31㌳コンテナ導入

 JR貨物と武田薬品工業、三菱倉庫は5日、武田薬品の医療用医薬品輸送で初めて31㌳温度管理機能付きコンテナを導入した、と発表した。武田薬品は2023年から幹線輸送のモーダルシフトに着手し、東北、九州、四国、北陸、上越の各…

北海道/エゾシカによる交通事故、運送業者の被害増加

 北海道でエゾシカが関係する交通事故が多発している。道警によると、2025年はエゾシカが原因の事故が6705件発生。24年比で1245件増えており、9年連続で過去最多を更新している。北海道トラック交通共済協同組合(大友龍…

Share via
Copy link
Powered by Social Snap