物流ニッポン – 全国の物流情報が集まるポータルサイト

【2024年問題⑬】自動・無人化へ導入不可避/宅配ロボ&ドローン

2024年問題

2022/08/09 3:10

 少子高齢化が急速に進む中、労働力不足の解消に向け、自動化・無人化が日本の社会・産業で急務となっている。労働集約型産業である物流業界は、労働環境の改善、若年層の獲得、女性や高齢者が活躍できる環境整備などに注力。だが、ドライバー、倉庫作業員の減少は避けられない情勢で、自動化・無人化技術の導入が不可避といえる。屋外向けには宅配ロボットやドローン(小型無人機)の活用に向けた動きが加速しつつある。(田中信也、土屋太朗、星野誠)

コロナで制度整備加速

 「宅配便の配送員が1人で2台の台車を押していた」――。物流支援ロボットを開発、販売するZMP(東京都文京区)の谷口恒社長は、たまたま見かけた宅配作業の実態から、物流支援ロボットの開発に思い至った。2016年に発売した台車型の「キャリロ」は、300を超える物流施設・工場で導入され、主力事業に成長した。
 一方、着想のきっかけとなった屋外配送向けには、18年に自動宅配ロボット「デリロ」を開発。ただ、道路交通法上の規制がなく、歩道の走行が事実上不可能なことが社会実装する上でネックとなっていた。
 こうした障壁を打ち破る原動力となったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だ。マスク着用・アルコール消毒の徹底、テレワークなどの生活習慣・様式が定着。宅配需要が急増するとともに、人の手を介さない非接触型の配送ニーズが高まった。
 これを受け、政府は、成長戦略会議の「実行計画」に「低速・小型の自動配送ロボットによるサービスの早期実現」を明記。4月の通常国会で成立した改正道路交通法で、歩道、横断歩道などの通行について歩行者と同様のルールを適用する「遠隔操作型小型車(自動歩道通行車)」に位置付けた。23年度中の施行に合わせたサービスの実現に向け、宅配ロボットの実証実験が全国で行われている。
 こうした中、楽天グループ、ZMP、パナソニックホールディングス、日本郵便(衣川和秀社長、東京都千代田区)などによるロボットデリバリー協会(佐藤知正代表理事)が22年1月に発足。事務局を担当する城譲氏は「デリバリー需要の拡大でネックとなっている『ドライバー不足』を補うロボットの社会実装に向け、社会に受容される民間主導の安全基準・認証制度をつくるとともに、情報を発信していく」と話している。
 政府の成長戦略実行計画では、ドローンの活用も打ち出している。21年に成立した改正航空法に基づき、22年12月5日にレベル4(有人地帯での目視外飛行)を解禁。これにより、ドローン物流の本格的な社会実装が期待されている。
 18年に日本初のドローン物流の実運用を郵便局間の輸送で行った日本郵便は、中山間地のラストワンマイル配送での社会実装に向け、東京都奥多摩町で実証を展開。21年12月には宅配ロボットとの連携実験も実施した。西島優・オペレーション改革部長は「省人・自動化、サービス向上の観点から、まずレベル3(無人地帯での補助者なし目視外飛行)の実運用を目指す」と話している。
 セイノーホールディングスも物流維持が課題となっている過疎地でのドローン物流の実証実験を進めている。自治体主導で全国に取り組みを広げるため「全国新スマート物流推進協議会」の発足にもつながり、事例や課題の共有を図っていく方針だ。
 現時点では、大手宅配企業や自治体の取り組みが中心だが、設備投資が比較的小規模なため、中小事業者の参入障壁はそこまで高くないと予想される。ドリームホールディングス(三重県松阪市)の渡邉孝雄社長は「宅配事業を拡充しているが、三重県内は交通アクセスが不便な山間部や離島が多く、ドローン物流の潜在的な需要は高い。今後の法整備を注視し、5年計画でじっくり研究していく」と話す。

費用・社会的受容性が課題

 ただ、宅配ロボット、ドローンともに技術面に加え、採算性の確保、社会的受容性の醸成など課題は山積する。
 宅配ロボ、ドローンの実証事業に参画している佐川急便(本村正秀社長、京都市南区)は「(活用に)期待している」(経営企画部広報課)とする一方、「ともに法整備が途上で、かつ当社が求める性能、荷物の運搬可能重量や航続距離などを満たす製品がない」と課題に言及。また、期待に沿ったものが製品化されたとしても「価格帯が高額になることが想定される」とコスト面も懸念している。
 こうした中、ZMPは人間が操縦もできる台車型のロボット「キャリロ・ライド」を開発。屋内外で使用できる汎用(はんよう)型で、価格も100万円程度に抑える予定だ。ドローンでは災害時の緊急物資輸送を主目的としつつ、平時は買い物支援などに活用する事業スキームを多くの自治体が想定している。まずは身の丈にあったコストや用途からのスモールスタートが求められている。

宅配ロボット、ドローンともに技術面に加え、採算性の確保、社会的受容性の醸成など課題は山積(日本郵便による連携実験、21年12月、東京都奥多摩町)




本紙ピックアップ

高速道/速度制限引き上げ1カ月、重圧感じるドライバーも

 高速道路での大型トラックなどの法定速度80㌔の90㌔への引き上げから1カ月――。元々の実勢速度にのっとり、速度抑制装置(スピードリミッター)の更新・改造の必要もないため、大きな変化はないようにみえるが、自車に加え周囲の…

次期社会資本整備・交通基本計画、自然災害・24年問題へ対応

 国土交通省は、社会資本整備重点計画と交通政策基本計画の次期計画(2026~30年度)の策定に向けた検討に着手した。地球温暖化による気候変動に起因する自然災害の激甚化や、人口減少に伴う物流・交通・建設業の「2024年問題…

フジ・イズミ・ハローズ、中四国で物流研究会発足

 中四国で小売業を展開するフジとイズミとハローズの3社を中心とした小売業12社と物流会社2社の計14社による「中四国物流研究会」が発足した。「物流は協調領域」と捉え、「2024年問題」や環境問題の解決を目的に競合企業が連…

東山協組/外国人技能実習生、受け入れ事業を本格稼働

 東山協同組合(青木均理事長)は、外国人技能実習生の受け入れが可能となる特定監理事業の許可を受けたことから、監理団体として技能実習生の受け入れ事業を本格稼働させた。今後、特定技能在留資格での就労が予定される外国人トラック…

オススメ記事

高速道/速度制限引き上げ1カ月、重圧感じるドライバーも

 高速道路での大型トラックなどの法定速度80㌔の90㌔への引き上げから1カ月――。元々の実勢速度にのっとり、速度抑制装置(スピードリミッター)の更新・改造の必要もないため、大きな変化はないようにみえるが、自車に加え周囲の…

次期社会資本整備・交通基本計画、自然災害・24年問題へ対応

 国土交通省は、社会資本整備重点計画と交通政策基本計画の次期計画(2026~30年度)の策定に向けた検討に着手した。地球温暖化による気候変動に起因する自然災害の激甚化や、人口減少に伴う物流・交通・建設業の「2024年問題…

フジ・イズミ・ハローズ、中四国で物流研究会発足

 中四国で小売業を展開するフジとイズミとハローズの3社を中心とした小売業12社と物流会社2社の計14社による「中四国物流研究会」が発足した。「物流は協調領域」と捉え、「2024年問題」や環境問題の解決を目的に競合企業が連…

東山協組/外国人技能実習生、受け入れ事業を本格稼働

 東山協同組合(青木均理事長)は、外国人技能実習生の受け入れが可能となる特定監理事業の許可を受けたことから、監理団体として技能実習生の受け入れ事業を本格稼働させた。今後、特定技能在留資格での就労が予定される外国人トラック…

Share via
Copy link
Powered by Social Snap