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「新物流2法」が成立

 物流効率化法と改正貨物自動車運送事業法の「新物流2法」が26日の参院本会議で賛成多数で可決、成立した。「2024年問題」に対応するとともに、物流の構造的な問題を改善するため、荷主への規制や多重下請け構造の是正措置、軽貨物事業者への安全確保措置などを規定。発着荷主による荷待ち・荷役作業時間の短縮といった物流効率化の取り組みや、一定規模の事業者に対する中長期計画策定と物流統括管理者の選任の義務化、元請事業者による「実運送体制管理簿」作成の義務付けなどの措置を、26年春までに施行する。(田中信也)

 政府が新たに外国人在留資格の「特定技能」の対象分野に追加した「自動車運送業」のうちトラックは、働きやすい職場認証(運転者職場環境良好度認証)に加え、Gマーク(安全性優良事業所認定)の取得でも受け入れられるようにする。法務、外務、厚生労働、国土交通の各省、警察庁が17日に公表した制度運用の方針に関する運用要領で明らかにした。(田中信也)

 全国軽貨物協会(西田健太代表理事)は24日、記者向け説明会を開き、軽貨物運送業界全体の資質向上に向け「適正化のためのロードマップ」を年度内に公表する方針を示した。このロードマップの位置付けについて、西田代表理事は「政府が公表を求めている物流適正化に関する『自主行動計画』の軽貨物業界版に当たるもの」と説明。業界内の自主努力により、コンプライアンス(法令順守)環境の整備を促進していく。(佐々木健)

 丸紅ロジスティクス(五島洋一郎社長、東京都千代田区)は、業界別プラットフォーム事業やBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)サービスなどを軸に業容の拡大を図る。2025年3月期の売上高は前期比で十数%増の450億円に引き上げる。(沢田顕嗣)

 スカニアジャパン(アラン・スーダン社長、東京都港区)は日本国内でのスカニア車の販売・サービス拠点網を強化する。44カ所ある国内の拠点を2027年には60カ所まで増やす。直営の3店舗を含め16カ所ある販売拠点もほぼ2倍となる30カ所にする。25日に開いたメディア向けの懇談会で、経営陣が方針を説明した。(小瀬川厚)

 トラックなどの架装をメインとする三和ボデー工業(林直明社長、北海道北広島市)は、移動式の遺体安置用保冷庫を独自に開発した。100㌾の電圧で動かせる上、専用の台車に載せれば乗用車でけん引できる。特許も取得しており、葬儀場や災害現場での利用を想定している。(朽木崇洋)

 北陸貨物運輸(山田秀一社長、金沢市)は荷物の保管業務に力を入れる。金沢市内の安原異業種工業団地に整備した新設の金沢安原倉庫を活用し、県内で生産された商品をいったん集め、県外へ発送する。着荷主へ直接届けるパターンと異なり、方面別に積み替えることで輸送効率化を図るとともに、ドライバーの労働時間削減につなげる。(河野元)

 富士運送(山下裕司社長、高松市)は早くから労働時間の短縮に取り組み、ドライバーの年間時間外労働は最も長い人で450時間、短い人では十数時間にとどまり、上限規制(年960時間)をクリアしている。2023年6月には働きやすい職場認証(運転者職場環境良好度認証)の二つ星を受け、24年5月には「2024年問題」対策の一環として新しい配車システムを導入。細かい改善基準の順守状況を改めて検証し、25年度には三つ星を申請する。(江藤和博)

 「2024問題」に対応するために告示された新たな標準的な運賃では、「積込料・取卸料(荷役料)」や下請け手数料率などを新たに設定した。トラック運送事業者は、ドライバーの賃上げの原資となる適正運賃収受の環境整備に向け、より「実運送ファースト」の制度になったことを歓迎する。一方、制度開始から4年で届け出率は6割を前に足踏みし、実際に希望する運賃を収受できたケースは1割程度とみられる中、実勢運賃との隔たりがより拡大することへの戸惑いの声も少なくない。(特別取材班)

実勢運賃 隔たりに戸惑いの声

 新しい標準的運賃告示では、物価高を受け、運賃表の水準を平均8%引き上げるとともに、荷役料や共同輸配送を念頭にした「個建て運賃」、多重下請け構造の是正に向けた下請け手数料の料率などを新規に設定した。
 三共陸上輸送(川崎市川崎区)の鈴木雄三社長は「運賃水準が上がることで、荷主との交渉で適正運賃を提示しやすくなり、要望を伝える際の根拠として大いに役立つ」と歓迎。木津運送(白山竜太郎社長、大阪市住之江区)の西村英二常務も「物価が高騰する中、料金が上がるのはありがたい。荷役料の追加も、料金収受を促すきっかけになるかも」と期待を示す。
 旧来の告示では、距離制と時間制の運賃表がメインで、こと料金に関しては待機時間料のみだった。新たな告示では、リードタイムが短い運送や、有料道路を利用しない場合の運賃割増率なども設定。荷主に対して厳しい要求を突き付ける中身へ大きくリニューアルされた。
 フレンズ運送(群馬県太田市)の滝澤将司社長は「サービスで荷役作業を行っているケースが多い中、きちんと対価をもらうべきという大きな証拠になる」として、「メディアがもっと大騒ぎしてもらえるよう、どんどんやってほしい」と話す。
 新鮮便(伊勢崎市)の佐藤稔也社長は「荷待ちにスポットが当たり過ぎな気はする」とした上で、「(荷役作業などの)数字(料金)を明確化したことは、業界全体で考えると、直接荷主も巻き込めるという点で良い」と評価する。
 それに加えて、佐藤氏は「運送の多層構造に本気でメスを入れるつもりなのがうかがえる。直接荷主と交渉できないが、実際に日本の物流を支えている(中小・零細の実運送)事業者向けには良いことだ」と言及する。
 しかし、標準的運賃の普及・活用の状況をみると、バラ色の未来が約束されているとは言い難い。対象事業の導入割合は、2月末時点で58.5%となっている。20年4月の告示から2年半で過半数に達したが、その後は足踏みし、ここ数カ月はゼロコンマの微増が続く。
 滝澤氏は「標準的運賃はベースとして必要だが、この水準の運賃を頂けるとは思っていない」と指摘。佐藤氏も「標準的運賃と契約額の隔たりはかなりある」と本音を漏らす。

一定の強制力「必要」

 中小・零細事業者には至れり尽くせりな内容が、実際の導入に当たってはむしろ「仇(あだ)となる」可能性がある。西村氏は「現状では、従来の標準的な運賃で示された料金を収受するのは難しい。一定の強制力を持たせる取り組みも進めてほしい」と話す。
 また、実運送ファーストの制度でも、実際に荷主と交渉するのは元請事業者だ。トラック業界側の商慣行に蓋(ふた)をしたまま、数次にわたる下請けへの手数料を上乗せした運賃を荷主側に納得させるのは理にかなわない。全日本トラック協会が2月に提言した「2次下請けまでの制限」といった多重下請け構造の解消とセットで進める必要もある。

 26日の参院本会議で、物流総合効率化法と貨物自動車運送事業法の改正案が可決、成立した。「2024年問題」や物流の構造的問題に対応するため、荷主への規制と多重下請け構造の是正、軽貨物事業者への安全確保といった措置を規定。発・着荷主による荷待ち・荷役作業時間短縮などの取り組みや、一定規模の事業者に対する中長期計画策定と「物流統括管理者」選任の義務化、元請事業者による「実運送体制管理簿」作成の義務付けといった措置を公布後2年以内に施行する。(田中信也)

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