【2024年問題⑥】物量確保が最大の課題/中継輸送
2024年問題
2022/07/01 3:00
幹線輸送における「2024年問題」解決の有効手段として注目を浴びている中継輸送。労働時間短縮に加え輸送効率化、二酸化炭素(CO2)排出量削減などの効果もあり、定期・定時運行や広域運用、中継支援サービスなどに本腰を入れる事業者が出始めている。ただ、普及には物量確保や機材の普及、高速道路通行料金制度の見直しなどが不可欠だ。(特別取材班)
荷主の変化待たず努力
萬運輸(東海林憲彦社長、横浜市鶴見区)は、21年2月末から仙台配送(尾上寿昭社長、仙台市宮城野区)と相模原市―仙台市でドライバー交代式の中継輸送を開始。22年6月からはヒサマツホールディングス(久松孝治社長兼CEO=最高経営責任者、大阪市阿倍野区)傘下のトランスポートアトミック(久松社長、同)と、セパレートボディー車を使った京浜―阪神の共同中継輸送を行っている。
円滑な中継実現の前提として東海林社長は、連携相手とのコンプライアンス(法令順守)意識の統一、固定観念からの意識改革、遅延時・費用分担の取り決めなどを挙げ、「まずは経営トップ同士の信頼関係が何より重要」と強調する。
これまでの検証では、積載率・稼働時間の最大化、定時・定期性確保による幅広い集荷、DX(デジタルトランスフォーメーション)活用による情報公開などの必要性が見えてきた。
「運賃上昇を抑えた輸送で荷主にメリットを還元することも重要。一方、荷主側も定時発の中継便に合わせた出荷体制を整えるなど、柔軟な対応が必要だ」と東海林氏は話す。
ヒサマツホールディングスでも、自社単独でのセパレートボディー車による中継輸送を毎日運行させて課題を検証。セパレートボディーは同社独自開発のもので、脱着が容易な上、既存車両を改造できるのが特徴だ。開発の経緯について、同社では「当たり前のことが当たり前ではなくなる24年に向けて、荷主の変化を待つのではなく、我々物流業界が努力して働き方を守ることが必要と考えた」と説明する。
中継の最大の課題としては、安定した物量の確保を挙げる。新型コロナウイルス禍では貨物量が大幅に減少。ウクライナ情勢でも貨物量は影響を受けている。また、限られた車両台数でのマッチングも課題の一つだ。同社では「セパレートボディーが広く認知され普及することでマッチング率も高まり、更なる効果が見込める。今後、3年間で千台の普及を目指す」としている。
後押しする制度必要
24年までに宮城―福岡に至る広域の中継輸送網の本格運用を目指している東部ネットワーク。トレーラ交換方式に加え、ドライバー交代方式や各地の協力会社との共同中継など、様々なパターンを試行している。
阿部悟志・執行役員東日本営業部長によると、これまでの検証では夜間のサービスエリアにおいてトレーラ駐車スペースが満車で中継できない問題などが浮上。阿部氏は「いったん高速道路を下りた場合でも料金を通算するなど、中継を後押しする制度見直しが必要」と指摘する。
一方、今後の中継輸送の拡大を見据え、運送会社への中継拠点提供と沿線の複数の物流施設を活用した中継輸送支援サービスに注力しているのが、遠州トラックだ。
同社では、関東―関西の中間地点となる新東名高速道路・浜松サービスエリア(SA)の隣接地で、中継輸送拠点「コネクトエリア浜松」を運営。東西双方からトラックを走らせる各運送会社に、中継ポイントとしての利用を促している。
しかし、認知度は向上しつつあるものの、当初想定していた異なる事業者間での利用には至っていないようだ。小澤宙通常務執行役員は「契約上の問題や荷物に何かあった場合の補償の在り方などで、難しさがある」と語る。
更に、高速道路を下りてコネクトエリアに入らなければならず、高速道路料金の継続性が失われることや、同拠点に荷物の積み替え・保管施設がないことも、利用に広がりが見られない理由だという。
同社ではこれを補う形で近隣の自社の複数物流施設を提供し、貨物の積み替えや一時保管に役立ててもらうことを推奨。同社が展開する「e―change」はこれらの中継支援サービスの総称で、各運送会社にリレー輸送、貨物積み替え、保管型中継など、様々な中継方式を提案している。
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