物流ニッポン – 全国の物流情報が集まるポータルサイト

Gメン合同パトに密着㊤、4運輸局連携 初の試み 大阪 荷主へアポなし訪問

未分類

行政

2024/10/08 18:10

 トラックGメン(トラック荷主特別対策官)の活動が新たな局面を迎えている。近畿、中国、四国、九州の各運輸局に所属するGメンが9月25、26の両日、大阪府で合同パトロールを実施。西日本4運局連携による初の試みで、物流の上流から理解を促す狙いがある。25日には計19人のGメンが、大手を中心とした荷主29社に「アポなし訪問」を敢行。真摯に対応する物流担当者がいる一方で、門前払いなどぞんざいに扱われる場面もみられた。本紙では2日間にわたってこのパトロールに密着。前編として、初日の模様をリポートする。(根来冬太)

受付電話越しに門前払い

 事前連絡なしの訪問を継続的に行ってきた中国運局が呼び掛け、近運局が全面的に協力。複数の局が連携して合同パトを行うのは初めてで、各地方の情報収集で名前の挙がった荷主は大阪に本社のあるケースが多いことから、対象を近畿エリアに選んだ。
 合同パトは4班に分かれ、大阪市の北、中央、南の各区と東大阪市をそれぞれ巡回。同じ運輸局ごとに固まらないよう班分けし、Gメンの担当地方から情報源の運送会社が特定されにくいよう配慮している。
 記者は近運局自動車交通部の田中康嗣貨物課長をリーダーに大阪市の中央部を担当する4人の班に密着。25日午前9時に近運局の会議室に集合し、訪問順序の検討などを行った後、10時に出発した。
 1社目の大手食品メーカーでは、物流部門の担当者2人と応接室で面談。啓発用のパンフレットを見せながら、物流に関する法改正などについて説明した。メーカーの担当者は、物流改善の例としてトラック予約受け付けシステムの導入や、本社と各物流拠点による毎月の情報共有会議の開催などを挙げた。アポなし訪問に驚いた様子だったが、Gメンの質問に丁寧に答えていた。
 幸先良いスタートを切ったものの、その後は4社連続で門前払い。受付に電話のみが置いてある場合、「国土交通省の者です。物流の『2024年問題』について周知活動を行っています」と伝えても、担当者が応対に出なければ、パンフレットすら渡せない。各社は電話越しに「アポなしでは対応できない」「東京本社に話を通してほしい」「物流は各拠点に任せている」などとかわした。
 6社目の大手住宅メーカーでは、担当者が立ち話でGメンから説明を受け、「社内で共有します」とパンフレットを受け取った。
 その後、中国運局自動車交通部の田中幸久貨物課長をリーダーとする班と合流。7社目に訪れた飲料メーカーでは、物流部門担当者と40分ほど面談した。
 この荷主は荷待ち時間の削減に注力しており、トラック予約受け付けシステムの導入や物流拠点の増設といった取り組みを紹介。更に、長時間の荷待ちを改善しない着荷主に対しては、商品の販売停止も辞さない方針を明らかにした。
 次に訪れた大手繊維製品メーカーは物流担当者不在で、パンフレットのみ配布。9社目の大手飲料メーカーでは、総務課長が受け付け前で立ち話には応じたものの、「本社は販路拡大がメインで、物流に関する部門も権限もない。グループには物流の子会社もある」と説明した上で、「なぜここを訪れたのか」と質問。更に、「アポなしで来るんですね」「大変ですね、お疲れさまです」などと皮肉混じりに語りながら、「この辺りを全部回っているんですか」と繰り返し尋ねた。
 田中氏は「お約束もなしに大変失礼しました。この周辺の会社をできる限り多く訪問しています」と前置きし、「物流は、商品の受注量によって大きく変わります。営業の方にも物流に対する理解を深めてもらうため、この活動をしています」と語った。
 午後4時半に近運局に戻り、Gメン全員がパトロールの成果や感想を発表。本社と物流現場との温度差を感じたGメンが多く、「説明を親身に聞いてもらえないことがあった」「初めて門前払いを経験した」などの声が上がった。

物流への理解度 低さ実感

 更に、「『トラックGメンってほんとにいるんだ』と言われたケースもあり、認知度を上げるため、もっと訪問数を増やしていきたい」と意欲的な発言も聞かれた。
 今回の合同パトについては「荷主の本社を初めて訪れ、経営・管理側の考え方を知る良い機会になった」「他の局のパトロールの手法を勉強できて有意義だった」と好評だった。
 田中氏は「サプライチェーン(供給網)の上流にいる人々と接してみて、物流に対する理解度の低さを実感できたと思う。これが現実であり、普段、運送事業者が抱いている不信感につながっている。だからといって、感情的になって反感を買ってはいけない。トラック業界の声を届けるのが我々の仕事だ」と強調した。
 今回の新たな取り組みは、パトロールの先頭に立ってきた田中氏が、そのノウハウを西日本の各トラックGメンに伝える「Gメン育成研修」にもなっている。Gメンの荷主対策が広域化・深度化するための試金石となりそうだ。

合同でパトロールするトラックGメンのメンバー

タグ:



本紙ピックアップ

軽油引取税の暫定税率廃止、交付金継続へ展望開ける

 軽油引取税の旧暫定税率を2026年4月1日で廃止することで与野党6党が合意した。暫定税率分である1㍑当たり17円10銭の減税はトラック・バス事業者の経営安定化につながる。一方、暫定税率を原資とする運輸事業振興助成交付金…

啓和運輸、日本語学校を来春開校

 啓和運輸(川島満社長、埼玉県入間市)は2026年4月に啓和テラス日本語学校(同市)を開校する。ミャンマー、ネパール、ラオスなどから来日する外国人材を対象に、語学教育だけでなく、日本で働く力を育むことを目的とした独自カリ…

ヤマト運輸、ベトナム人年100人採用

 ヤマト運輸(阿波誠一社長、東京都中央区)は特定技能外国人制度を活用し、2027年以降、毎年、拠点間輸送を行うベトナム人大型トラックドライバー100人の採用を目指す。ベトナムで人材育成事業を展開するFPTグループと12日…

自民税調会長、振興助成法改正で対応

 自民党の小野寺五典税務調査会長は17日、軽油引取税の暫定税率の2026年4月1日の廃止に向け、「租税特別措置(租特)法の改正法案で対処したい」として、与党の税制改正議論を経て、通常国会に提出する方向性を示した。運輸事業…

オススメ記事

軽油引取税の暫定税率廃止、交付金継続へ展望開ける

 軽油引取税の旧暫定税率を2026年4月1日で廃止することで与野党6党が合意した。暫定税率分である1㍑当たり17円10銭の減税はトラック・バス事業者の経営安定化につながる。一方、暫定税率を原資とする運輸事業振興助成交付金…

啓和運輸、日本語学校を来春開校

 啓和運輸(川島満社長、埼玉県入間市)は2026年4月に啓和テラス日本語学校(同市)を開校する。ミャンマー、ネパール、ラオスなどから来日する外国人材を対象に、語学教育だけでなく、日本で働く力を育むことを目的とした独自カリ…

ヤマト運輸、ベトナム人年100人採用

 ヤマト運輸(阿波誠一社長、東京都中央区)は特定技能外国人制度を活用し、2027年以降、毎年、拠点間輸送を行うベトナム人大型トラックドライバー100人の採用を目指す。ベトナムで人材育成事業を展開するFPTグループと12日…

自民税調会長、振興助成法改正で対応

 自民党の小野寺五典税務調査会長は17日、軽油引取税の暫定税率の2026年4月1日の廃止に向け、「租税特別措置(租特)法の改正法案で対処したい」として、与党の税制改正議論を経て、通常国会に提出する方向性を示した。運輸事業…

Share via
Copy link
Powered by Social Snap