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ホワイト物流 賛同の輪(27)/レンゴー&レンゴーロジ、改善策を4年で1295件実行 着荷主に働き掛け 連携し24年問題対応 軋轢恐れず課題を伝え

物流企業

2023/11/24 2:40

 レンゴーとレンゴーロジスティクス(森實光博社長、大阪市西淀川区)は、ドライバーの労働環境改善に向け協議する「物流改善会議」の開催を重ね、2019年から4年間で1295件の改善策を実行した。レンゴーロジが現場の課題を伝え、着地での改善が必要なケースでは、レンゴーから着荷主に働き掛けるほか、中継輸送や倉庫の集約、ドライバーの増員などの対策を実施。ドライバーの17年度の月平均残業時間は75時間だったが、22年度には62時間に削減され、「2024年問題」に対応可能な体制が整った。(根来冬太)

着荷主に働き掛け

 レンゴーロジは17年当時、残業時間が100時間を超える月のあるドライバーもいたことから、早急な改善が必要と判断。同年5月、月当たりの残業時間を80時間以内とする目標を全社の方針として発表した。
 目標達成のため①ドライバーの増員②中継輸送の推進③拠点間の人員の応援体制構築――を実施。同年3月時点で652人だったドライバーを、23年3月には716人まで増やした。また、中継輸送では、ドライバーの年間労働時間を計2800時間削減(1運行当たり2.5時間削減)している。
 発荷主であるレンゴーのバックアップも後押しとなった。同社は19年9月にホワイト物流推進運動の自主行動宣言を、20年6月にはパートナーシップ構築宣言を、それぞれ発表している。更に、両社の本社間と、工場と営業所の間で物流改善会議を定期的に開催。19年10月から23年9月までに、計2265件の改善案を検討し、うち1295件を実行した。
 こうした取り組みの結果、残業時間が80時間を超える月のあったドライバーの割合は、17年度の92.0%(600人)から、22年度には5.9%(42人)と大幅に改善された。24年度以降は、65歳以上の元ドライバーに荷役作業を担当してもらう体制の整備を推進し、現役のドライバーが荷役に費やす時間を更に削減する。

連携し24年問題対応

 一方、レンゴーでは、淀川流通センター(大阪市福島区、21年開設)、八潮第二流通センター(埼玉県八潮市、22年)など、大型ハブ拠点を相次いで設置し、倉庫を集約した。
 更に、トラックの荷役順を管理するシステムの導入、フォークリフト車載端末へのピッキングシステムの搭載といった、物流のデジタル化も推進。19年にグループの大和紙器(窪田英志社長、大阪府茨木市)の大阪工場(同市)で、トラックの荷下ろしを受付時間順から事前に指定した順に変更した結果、135分だった平均荷待ち時間が15分に短縮された。23年からは、GPS(全地球測位システム)機能を持たせたデバイスでトラックの動態管理も行っている。
 また、RFID(無線自動識別)タグの導入で、発着荷主ともドライバーの付帯作業削減と製品管理効率化に効果があったことから、日本製紙連合会(加来正年会長)、全国段ボール工業組合連合会(大坪清理事長)に対し、RFID利用時のフォーマットやコード体系の統一と、システムの共同利用を提案している。
 レンゴーが着荷主と協力して実現した改善策も多い。Mizkan(ミツカン、吉永智征社長兼CEO=最高経営責任者、愛知県半田市)の栃木工場(栃木県栃木市)から開示された生産計画や在庫情報を基に、レンゴーが効率的な生産・配送計画を作成する取り組みでは、ドライバーの年間労働時間を480時間削減した。従来はミツカンからの発注に合わせ、その都度レンゴーが段ボールを納品していたため積載率が低く、便数の増加につながっていた。

軋轢恐れず課題を伝え

 レンゴーの担当者は「営業マンが着荷主に改善提案する地道な活動が続いた。社内では『(着荷主に)言っても変わらないのでは』という雰囲気もあったが、真剣にお願いして受け入れられる改善策が出てくると、社員の間で機運が高まり、実行に移せる案が増えていった」と振り返る。
 レンゴーロジの森實社長は「まず、長時間働いて稼ぐ意識の改革から始め、労働時間を短くしつつ給料のベースアップも行ってきた。そのためには着荷主側も改善が必要になるが、当社からは直接言えない。そこで、軋轢(あつれき)を恐れずレンゴーに物流現場の課題を伝えるようにした。24年問題に対応できる体制が整ったのは、レンゴーとの連携強化と、着荷主の協力のおかげだ」と話す。
 課題として「430(4時間ごとに30分)休憩」が可能な駐車場所の確保を挙げる。23年から、最適な出発時間や休憩場所の選定、課題の抽出など、ルートごとに430休憩を適切に行うためのトライアルを始めている。引き続き、ドライバーの付帯作業の削減、納品時間の緩和にも注力していく。


 ▼レンゴー 板紙から段ボール製品まで一貫で製造・販売。23年3月期連結売上高が8460億円で、単体では3440億円。国内グループ企業114社163工場、海外グループ企業198工場。


 ▼レンゴーロジスティクス レンゴーの物流子会社。保有車両727台(23年3月時点)、23年3月期売上高366億円。


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)

改善実績の例




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