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【2024年問題⑪】解決導く”救世主”に/トラガール

2024年問題

2022/07/29 3:00

 「2024年問題」を解決に導く救世主、それはトラガール――。ドライバー不足・高齢化の改善に向け、国土交通省は14年に女性トラックドライバーの愛称を「トラガール」と名付け、プロジェクトをスタートさせた。しかし、全ドライバーに占める女性の割合は3%前後にとどまっており、大きなうねりには至っていない。女性が働きやすい職場環境、労働条件の整備は働き方改革そのもの。24年問題の特色的な取り組みとして加速させていくべきだが、課題は多い。(特別取材班)

職場環境・労働条件整備を

 「トラガール促進プロジェクト(PJ)」により、業界全体に女性を積極採用する機運は高まりつつある。髙野商運グループ(髙野和久社長、栃木県さくら市)は、軽貨物運送を中心に女性を積極的に採用。現在、グループの女性比率は27%と、トラック運送業界の中ではかなり高い。髙野社長は「40%まで引き上げたい」と意欲を語る。
 以前に比べ女性ドライバーの活躍をよく目にするようになったものの、総務省の調査では「輸送・機械運転従事者」に占める女性の割合は3.4%(19年末時点)と依然低い状況で、大きな伸びには至っていない。
 岡山県貨物運送の原田知充社長は「宅配などBtoC(企業―消費者)に比べ、当社の場合は荷物が大きく重いものが中心で、女性ドライバーはなかなか増えない」と話す。飲料輸送がメインの松本運輸機工(神奈川県平塚市)の松本義弘社長も「業務の8割に手荷役の付帯作業があり、20㌔以上の荷物を扱う現場もあるので、荷主が女性を受け付けない」と指摘する。
 女性活躍の観点からも荷役の機械化・自動化が進みつつあるが、手荷役の解消は一朝一夕には進まない。こうした中、荷役がほとんどないダンプドライバーへの女性進出が目立つ。広信工業(海老名賢一社長、札幌市東区)の小川美帆さんは、夫の急逝をきっかけにダンプドライバーに転身。「建設業界で働く知人が『荷物を運ぶ作業は機械がやってくれるので、力仕事の心配はない』と勧めてくれた」という。
 国交省は6月、トラガールPJのウェブサイトを、開設以来初めて全面リニューアルした。トラック運送事業で活躍している女性へのインタビュー記事を刷新し、具体的な働き方や様々な経歴・経験を深掘り。また、経営者のインタビューを新たに掲載し、女性を積極的に採用する考え方や活躍を推進するための方策を紹介している。
 また、全日本トラック協会(坂本克己会長)とリクルートが6月に合意した「会員事業者向け採用支援サービス」の一環として、PJサイトとも連携。求人検索エンジン「インディード」などの無料利用など、業界での女性の仕事探しから各企業への応募までを一気通貫でマッチングできるサービスを展開する。前全ト協常務の藤原利雄氏は「女性で特に若い人はハローワークを敬遠しがちなので、求人検索エンジンを無料で利用できる効果は大きい」と期待している。

働き方改革の試金石

 女性ドライバーの活躍を妨げるものにインフラの未整備も挙げられる。その中でも、経営者が頭を悩ませるのが「トイレ問題」だ。関東のある事業者は、緊急時の備えとして簡易トイレを支給しているという。同社では女性ドライバーの採用が進む中で、男女別のトイレの整備を進めてきた。女性ドライバー用トイレの対策を行っている荷主も一部ではあるというが、設置費用や場所といった課題が残っている。また、この会社の経営者は「セキュリティーを高めた結果、ドライバーがトイレに移動できない荷主先などもある」と指摘する。
 女性労働論を専攻し、トラック事業の労働問題にも詳しい首藤若菜立教大学教授は「労働力不足、高齢化が進み、若年層が減っていく中、女性が働けない業界はこれから相当厳しくなる」と指摘。その上で、「女性のいる職場には男性も入ってくる。男性前提の労働慣行・環境を、まずは見直して欲しい」と訴える。
 ただ、受け入れ側の態勢が整っていなければ女性の定着は望めない。松本運輸機工の松本氏は「18歳以上の女性が持ち運びできる重量は『継続作業で20㌔未満』。また、暗黙の了解で無料で提供している付帯作業・待機時間の料金をしっかりと収受できるようにすることも必須で、荷主が法令を理解・順守しない限り、女性ドライバーは増えない」と断言する。女性が活躍できる環境整備は、トラック業界の働き方改革の試金石といえる。

少子高齢化が進み、生産年齢人口が減る中、女性が働けない業界はこれから相当厳しくなる(北海道丸和ロジスティクスの女性ドライバー)




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