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【2024年問題⑧】ツール林立「標準化」課題/物流DX

2024年問題

2022/07/15 3:00

 DX(デジタルトランスフォーメーション)は物流業界の生産性向上に大きく寄与する。ベンダー各社は業界を良くしようと多様なツールを提供しているが、同様の機能を持つツールが林立しているのが実状だ。中小の運送事業者までDXを浸透させるには、帳票類の電子化やバース予約システムなど、DXの根幹を成し、かつ、どのベンダーがつくってもあまり機能が変わらない「競争領域が少ない」ツールを標準化することも必要かも知れない。(高橋朋宏)

小規模事業者 用途限定し生産性向上

 DX関連のソリューションには、様々な情報をデジタル化し共有するプラットフォーム(PF)のように拡張性が高いシステムから、バース予約システムなど用途が限定されたツールまで非常に幅広い。
 小規模な運送事業者ではDXによる生産性向上は限定的で、導入などに付随するコスト、手間といった負担しかない、とみなされがちだが、バース予約システムや帳票類の電子化などに限定して活用すれば、ドライバーの拘束時間は確実に短縮できるはずだ。
 バース予約システムは、ドライバーの荷積み・荷下ろし先での待機時間の削減・解消に有効。パソコンなどを使って事前に使用するバースや到着時間を指定、納品先と調整して待機時間を減らす。
 こうしたサービスは、Hacobu(佐々木太郎社長、東京都港区)などが先駆けて提供し、その後、様々なベンダーが同種のサービスで市場に参入している。
 便利な機能だが、導入している予約システムが異なると、運行管理者やドライバーは納品先ごとに複数のシステムを使い分けなければならず、現場の負担を増やしてしまっているケースもある。

データ相互循環を可能に

 一方、物流DXの「入り口」とも表される帳票類の電子化。現在、大半の運送事業者では紙の帳票類が使われているが、電子化すれば納品先などでの事務手続きの簡素化、社内での使用や保管が容易になり業務の効率化につながる。
 更に、伝票には荷物の種類、数量など基本情報が記載されているため、デジタルの特性を生かしてデータを集約・分析し、ルートや荷物の組み合わせを工夫すれば、積載率の向上につながるなど大きな可能性を秘めている。
 電子化はまだ浸透していないが、今後、物流業界でDXが進み、電子化が普及すれば既存・新規のツールが林立することが予想される。バース予約システムと同様、納品先ごとにツールが異なれば、恩恵より負担の方が大きくなってしまうことが懸念される。
 電子メールのように異なるシステム間でも自由に送受信できるような仕組みがあれば、利便性は一層高まる。
 帳票をクラウドで出力するソリューションなどを提供するウイングアーク1stとTSUNAGUTE(春木屋悠人社長、千代田区)は2021年6月、国土交通省の第1回「加工食品分野における物流標準化アクションプランフォローアップ会」で、電子化を前提として紙伝票の標準化を提言した。
 また、「関連するシステムが複数併存する場合でも、ユーザーの利便性を確保するため、サービスの考案・提供・普及の黎明(れいめい)期から、電子化伝票における課題をあらかじめ考慮・解消することが必要」と指摘。その上で、「各システムのデータが相互に循環できる仕組み(仮称・納品伝票エコシステム)を検討すべき」とした。
 22年度は納品伝票エコシステムの実装を推進。フィジカルインターネットとも連携すれば、特に加工食品、日曜雑貨、百貨店、青果物などの分野での物流効率化に効果的だという。
 伝票電子化システムなどを「協業分野」とし、国や各種業界団体、ベンダーといった関係先を交えて検討を重ね、ドライバーの時間外労働時間の上限規制が始まる24年4月の半年ほど前までに標準化フォーマットを作成することは難しいだろうか。
 ウイングアーク1stオープンイノベーション推進室の小島薫氏は「デジタル化は避けては通れない最も優先すべき課題。国交省などが推進しているフィジカルインターネットの世界を実現するには、デジタル化や企業を超えたデータの共有、分析の仕組みが不可欠だ。加えて、AI(人工知能)や最新のデジタルツイン技術を利用して初めて社会、産業の基盤である物流の最適化が実現できる」と話す。

複数のシステムが併存する際に起こる課題の解消が必要




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