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【2024年問題③】全事業者へ周知必要を/標準的運賃

2024年問題

2022/06/17 3:00

 物流の「2024年問題」の解決に向け、ドライバーの労働条件改善や労働力不足の解消を図るためには、トラック運送事業者が法令を順守し、持続的に事業を行うために必要な運賃の参考として国土交通省が告示した「標準的な運賃」の導入が重要な鍵を握る。告示の期限まで2年を切る中、全国での導入率は半数に満たないものの、トラック協会の加入事業者ベースでは6割強に上る。非加入事業者を含めた制度の周知が最も優先すべき課題といえそうだ。(田中信也)

全国導入率、半数満たず

 新型コロナウイルス感染拡大が本格化した20年4月の告示という最悪のタイミングもあって、全国の運輸支局などへの標準的な運賃に基づく運賃変更の届け出件数は、しばらく低調が続いた。
 だが、経済活動の復調や、国交省、全日本トラック協会(坂本克己会長)、都道府県ト協の連携による普及活動の強化が実り、21年3月末で対象事業者(霊柩事業者を除く)5万6990社の8.9%だった全国の導入率は、1年後の22年3月末には46.0%にまで達した。国交省の秡川直也自動車局長は「前年同月比5.2倍は相当の伸びだ」と評価する。
 ただ、告示が24年4月までの時限措置であることを踏まえると、半数に満たない現状は、楽観視できるどころか相当厳しい局面と考えざるを得ない。かつ、21年11月末時点の40.0%から4カ月で6.0㌽のアップと、足踏みといっていい状況が続いている。
 一方、全ト協が毎月取りまとめている全国加入事業者の届け出率をみると、22年4月末時点で66.1%と全事業者(47.1%)と比べ20㌽近くも高い。かつ、21年10月末時点の56.2%から半年で10㌽近くアップと、増加率も順調といえる。
 これらは、全国での標準的な運賃の基礎編、応用編の活用セミナー開催や、「全事業者の8割の届け出」を目標に掲げ、月単位で届け出状況を共有するといった官民による普及推進運動の効果がトラック協会の加入事業者に限られ、非加入の事業者にまで行き届いていないことが要因と考えられる。
 原則、全ての事業者が標準的な運賃、あるいはこの設定と同水準の運賃を収受できなければ、トラック業界の取引適正化が実現したことにはならない。また、こうした現状を放置したままでは、告示に基づく運賃を荷主に提示すれば「安い運賃の競合他社に仕事を取られる」との疑心暗鬼を助長させかねない。より、深く、広い周知啓発活動を行っていくことが求められる。

地域間格差は方針の違い?

 また、導入に関して、地域間の格差も顕著化している。22年4月末時点で、全事業者ベースで四国82.0%、中国77.5%、九州66.0%に対し、関東は19.9%。都道府県別では、トップが高知県88.6%、最少は群馬県9.8%と、80㌽近い格差となっている。
 ただ、こうした状況は、「荷主との交渉合意後に届け出を行う」か、「運賃変更の届け出後に荷主と交渉する」といった、各地域(協会)での方針の違いによるところが大きいとの見方がある。秡川氏は「どちらの方法でも良いと思うし、現在は低調な都道府県の届け出率が上がってくれば、荷主交渉が順調に進んでいる証明となる」としている。
 期限まで2年を切る中、告示の適用期限の延長を求める声が高まってきた。期限が終了してもタリフ(運賃料金表)として使用することは可能だが、全ト協の松崎宏則常務は「告示でなくなれば効力を失い、以前あったタリフに過ぎなくなる」と言い切る。
 秡川氏も「制度が浸透しても、適正運賃を収受できなければ意味はない」とした上で、「『効果があるので続けるべき』といった声の高まりなど、状況を見据えていきたい」とする。もちろん、期限内に100%を目指すのが大前提で、松崎氏は「延長の話が出てくるとすれば23年度の臨時国会前になるだろう」と強調する。

トラ協会員と全事業者の届け出率の推移




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