【2024年問題②】「貨物鉄道」代替手段へ期待/モーダルシフト
2024年問題
2022/06/14 3:10
2024年4月からの時間外労働規制(年960時間)により、多くのトラック運送事業者が「長距離輸送ができなくなる」という危機感を強めている。こうした中、代替輸送手段として期待を集めるのが貨物鉄道だ。日本貨物鉄道(JR貨物)はトラックからのモーダルシフトの受け皿として貨物鉄道の売り込みに力を入れる一方、事業者も輸送枠の確保に奔走している。(特別取材班)
輸送枠確保に奔走
JR貨物は陸運大手を中心に、貨物列車の往復貸切サービス「ブロックトレイン」を増発している。佐川急便(本村正秀社長、京都市南区)が2004年に東京―大阪で「スーパーレールカーゴ」の運行を始めたのを皮切りに、福山通運は13年に同区間で、西濃運輸(小寺康久社長、岐阜県大垣市)も18年に大阪―福島・宮城で、それぞれスタートした。
福山通運や西濃運輸はその後も路線を拡大。新型コロナウイルス禍の21年には、JR貨物は福通、西濃向けに3往復を新設した。トラックによる長距離運行を鉄道に切り替え、労働時間短縮を図っている。
貨物鉄道の輸送実績はコロナ禍で低迷しているが、陸運大手によるブロックトレインを含む積合せ貨物は、取扱量を着実に増やしている。19年度は鉄道シフトの流れを受け18年度比8.8%増の287万㌧に拡大。コロナ禍の影響を受けた20年度は、19年度比0.2%増の287万5千㌧と伸び悩んだものの、EC(電子商取引)需要の取り込みに成功した。新型コロナが収束しない21年度になっても20年度比6.2%増の305万3千㌧と伸び、コロナ前を上回っている。
一方、主力のコンテナ輸送実績を見ると、2076万8千㌧だった19年度に対し、20年度は1883万8千㌧(19年度比9.3%減)、21年度は1848万5千㌧(20年度比1.9%減)と減少傾向が続く。
荷主も鉄道転換推
荷主側にも、鉄道への転換を進める動きが出ている。金属製屋根部品のサカタ製作所(坂田匠社長、新潟県長岡市)は、将来的な長距離トラックの便数減少に備え、鉄道にシフト。北海道向けに利用していた鉄道コンテナ輸送を、関西圏より西側の地域への発送でもスタートした。物流管理課の早川謙二課長は「九州向けは週1回のペースで出している」と話す。
18年にトラックの長距離便確保にかなり苦労した経験が、鉄道輸送に本腰を入れるきっかけになった。取引のあるトラック事業者から「長距離を走るドライバーがいない」とも言われたという。同社では「長距離は長時間労働につながる」と受け止めているようだ。
また、JR貨物の鉄道ロジスティクス本部営業部では「時間外労働規制の影響により、北海道や九州などの域内物流でのモーダルシフト需要も出ている」としている。富良野通運(永吉大介社長、北海道富良野市)は20年から、苫小牧地区から富良野地区への肥料輸送を鉄道コンテナに切り替えた。輸送量は20年度の57個から、21年度には100個と堅調に伸びている。JR貨物では「輸送距離300~400㌔超のトラック輸送は、荷役・荷待ち時間を加味すると、トラックで対応できないケースも増えるのでは」とみている。
JR貨物は貨物ターミナル駅に物流施設「レールゲート」を建設。東京、札幌で完成しており、仙台や福岡でも検討している。鉄道輸送収入がメインの同社には、思い切った取り組みとなる。24年問題に対応するための受け皿となるには、従来以上にトラックと貨物駅の接続性向上が求められる。今後は、貨物駅へのアクセスを重視する倉庫会社や運送会社が増えそうだ。
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