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【2024年問題①】埋まらぬ労使の溝/改善基準告示改正 着地点いまだ見えず

2024年問題

2022/06/10 15:50

  「2024年問題」の一丁目一番地の政策課題における着地点がいまだ見いだせない――。厚生労働省は、24年4月からの時間外労働の罰則付き上限規制適用に当たり、改善基準告示を22年末までに改正するため、業態別の専門委員会で検討を推進。ただ、バス、ハイヤー・タクシーが決着したのに対し、トラックでは労使の主張は平行線をたどり、溝が埋まっていない。(田中信也)

労働者側、長時間労働で過労死懸念

 18年に成立した働き方改革関連法では、時間外労働の上限が規制される中、他業種と比べて長時間労働が著しい自動車運転者は、24年3月末まで適用が猶予された。一方で、猶予期間中の改善基準告示の見直しが付帯決議として盛り込まれた。
 これを受け、厚労省は19年11月に労働政策審議会労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会(藤村博之委員長、法政大学大学院教授)を設立。また、21年4月にはトラック、バス、ハイヤー・タクシーの三つの作業部会を立ち上げた。
 このうち、バス、ハイタクの作業部会は、22年3月に検討結果を取りまとめた。一方、トラックは、事業者やドライバーへの実態調査を19、20年の2回にわたり行ったことから、バス、ハイタクの検討より遅れ、22年7月ごろまでに結論を取りまとめる見通し。だが、これまでの専門委や作業部会での議論は、労使双方の主張は平行線をたどっている。
 1年、1カ月の拘束時間では、労働者側の主張「年3300時間」に対し、使用者側は休日労働分108時間を加えた「年3408時間」を提案している。また、1日の拘束時間は、例えば宿泊を伴う運行の場合、現行最大16時間を「18時間」まで拡大し、この場合、1日の休息期間を「11時間以上とするなど運行実態に応じてメリハリを付ける」(馬渡雅敏・全日本トラック協会副会長)よう主張。更に、運転時間に関しては、業務簡素化の観点から「不要」とし、「連続運転時間」は現行4時間から「5時間」に延長を求めている。
 こうした主張に対し、労働者側は「規制が骨抜きになる」として真っ向から反対。ただ、「年3300時間がジャンプとすれば、ステップの段階としてタクシーやバスの短縮の数字をポイントと捉えながら議論するのはやぶさかではない」(世永正伸・運輸労連副委員長)としている。
 1年、1カ月の拘束時間について、車格や運行形態などで共通点が少なくない貸切バスは、労使協定により、「年3400時間を超えない範囲で月294時間以内」まで容認している。一方、休息期間、運転・連続運転時間などは「過労死防止の観点から緩和すべきではない」(貫正和・交通労連トラック部会事務局長)と譲らない。

トラックは7月ごろまでに結論を取りまとめる見通しだが、労使双方の主張は平行線をたどる(5月の作業部会)

使用者側、まず荷主の商慣行改善

 トラック部会で公益委員を務める立教大学の首藤若菜教授も「3業態ともに自動車を運転する労働で共通しており、バス、タクシーで先行して取りまとめが行われた影響は小さくなく、トラックだけ別の基準を規定する根拠は見いだせない」と指摘する。
 使用者側が強硬姿勢を崩さないのは、荷待ちや付帯作業の強要といった「荷主の商慣行が改まらない中での規制強化では実効ある改善につながらない」(馬渡氏)との思いからだ。馬渡氏は「労働基準監督機関による荷主対策への関与」を求めているが、厚労省側は「労働時間が延びた原因を追求する権限はない」と難色を示す。
 首藤氏も「労働監督機関が関わるのは難しい」としつつも、個人事業主として働く人が増加していることを踏まえ、「業界を超えて適正な取引環境を整備することが求められている」と話す。こうした中、厚労省は、労働時間等設定改善法で定めている「他の事業者との取引上の配慮」に基づき、改善基準の周知・順守を要請する可能性に言及。馬渡氏は「国が対策を強化してくれるならば、労働時間の在り方に関しても改めて考える余地がある」と軟化の姿勢をみせた。
 一方、首藤氏は「荷主側も現下の物流課題には強い関心を持っている」とした上で、使用者側に対し「これを好機と捉え、改善基準の見直しを物流に関わる商慣行見直しの起爆剤にして欲しい」と強調する。政労使がそれぞれ一歩踏み出し、納得できる結論が得られることを期待したい。





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