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ホワイト物流 賛同の輪(18)/ダイト、法令順守へ出荷体制改善 パレット活用し負担軽減

荷主

2021/09/10 0:00

 医薬品の受託製造・販売を手掛けるダイトは、トラック輸送関係の法令を確実に順守できるスケジュール作成、荷役作業の負担を軽減するパレット活用など、ドライバーに配慮した環境整備と出荷体制の改善を図っている。ホワイト物流推進運動への賛同を契機に、従来の商慣行や業務プロセスの見直しに着手。事業活動に必要な物流の安定的な確保に向けた体制づくりを推し進める。(原田洋一)

【写真=ドライバーに配慮した環境整備と出荷体制の改善を図る】

 国土交通省、経済産業省などが連名で発出した運動への参加依頼文書をきっかけに、2020年6月に購買物流本部が中心となりプロジェクトを立ち上げた。その2カ月後、運搬を担当するトラック運送事業者向けにアンケートを実施。回答と現場の調査に基づいて問題点を洗い出した。
 富山市の本社工場で製造した製品は、主に東京や大阪方面に出荷する。輸送に携わるトラックの1日当たりの台数を3カ月分整理したデータによると、最も少ない日でゼロ、多い日は20台以上運行していた。不安定なスケジュールによって荷待ちや遅延が発生し、波動が大きくなることが分かった。
 出発時間の遅れがドライバーの連続運転時間と休憩時間、休息期間を定めた法令の順守に影響するため、改善に向けて出荷台数の平準化に取り掛かった。生産管理部門と一緒にスケジュールを見直し、1日平均10台以下の出荷に抑え、毎日一定の台数を運行するよう調整。併せて、午後4時までに荷役作業を終えられるようにした結果、法定速度をはじめ、交通ルールを順守した運行で納期に間に合う出荷体制が出来上がった。取引先でもある西村運輸(西村一生社長、富山市)と提携し、荷待ち時の待機場所も確保している。
 手作業で荷下ろしを行う納品先が半数を占めることも把握できた。手作業では、作業中に誤って商品を落としたり、衝撃を与えてしまったりといった破損事故が課題となっていた。これらの解決へ、顧客にパレットの支給を要請し、製造段階から使用して手荷役を削減。ドライバーの負担軽減と破損リスクの低減を図った。
 更なる改善にも余念がない。21年1月に北陸地方を襲った大雪では、幹線道路で立ち往生が発生するほどの大きな影響が出た。同社でも作業スペースの入り口付近でスタックする車両が多発した。この経験から、降雪地帯で事業展開していることを改めて重く受け止め、風除設備の設置を決断。スペースを覆う屋根、壁、電動シャッターを新たに取り付けた。このほか、入庫の際に邪魔だった道路向かい側の壁を取り払って可動エリアを広げ、ハンドル動作の数を減らすことでスムーズな進入を可能にした。
 同月、GDP(医薬品の国際的な流通基準)ガイドラインに対応するためのワーキンググループを立ち上げ、医薬品の温度管理や輸送体制に関する仕組みづくりに着手。今後の方針について、購買物流部の長田自由治(じゆうじ)係長は「GDPへの対応も含め、物流の管理手法が課題。保管を委託している倉庫との連携も併せて、出荷指示をスムーズにできるシステムを構築したい」と説明している。


 ▼ダイト 1942年、家庭薬の輸出統制会社として設立した医薬品の受託製造メーカー。ジェネリック(後発医薬品)を含む処方薬、一般薬をはじめ、原材料、健康食品を製造、販売する。東京、大阪のほか、米国、中国に拠点を置き、アジア・北米を中心に輸出も手掛ける。売上高487億1499万円(2021年5月期)、資本金62億7123万円、従業員数676人(5月末時点)。


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)





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