ホワイト物流 賛同の輪(2)/日本製粉、パレット化進め 着荷主・運送事業者と協力
荷主
2020/05/19 0:00
製粉から業務用の食品素材、加工・冷凍食品と、小麦粉を核とした多角的な食品メーカーである日本製粉は、労働力不足や物流危機の回避を目的に、2019年6月に国土交通、農林水産、経済産業の各省が展開するホワイト物流推進運動の自主行動宣言を提出した。パレットの活用などの推奨項目を中心に、物流改善の取り組みを深掘りしていく。(田中信也)
【写真=関東エリアのローリー、業務用の輸送は子会社のニップンロジスが担当】
「自社としても『物流危機』を身をもって感じる中、物流業界はもちろん、自社のためにも物流業務の改善で協力できることはしよう」――。同社の物流部門を担当する流通業務部の女沢一夫次長は、ホワイト物流推進運動の自主行動宣言の提出に「賛成できない理由が無かった」と話す。
ホワイト物流推進運動に賛同する荷主企業を業種別にみると、特に加工食品メーカーが目立つ。19年に国交省が実施した輸送品目別の調査で、「荷主都合による荷待ち時間」が最も多い業種だが、それだけにかねて問題意識は高く、物流のソリューションに取り組んできた。
同社は小麦粉の製粉が創業事業で、現在も売上高の3割を占め、製パン・製麺工場への輸送はタンクローリーがほとんど。一方、売上高のうち6割を支える主力の食品事業(食品素材、加工食品、中食)では、ウィング車などの使用がメインとなっている。
関東エリアのローリー、業務用の輸送は子会社のニップンロジス(磯崎勤社長、千葉市美浜区)が担当するが、それ以外の地区・製品の輸送については各地の協力運送事業者が輸送している。
宣言に当たり、推奨項目は①物流の改善提案と協力②パレットなどの活用③リードタイムの延長④納品日の集約⑤契約の相手方を選定する際の法令順守状況の考慮⑥働き方改革などに取り組む物流事業者の積極的活用――を選択。いずれも「これまでの取り組みを深掘り」するもので、新たに何かを始めるものでないことを強調する。
ただ、パレットの活用は「パレット化しないと(輸送する)トラックが見つからない傾向となっている」と、喫緊に取り組むべき課題に位置付ける。
業務用の小麦粉や、「プレミックス」と呼ばれるホットケーキミックスや唐揚げ粉などの食品素材は、10~25㌔単位の紙袋で運んでおり、かねてパレット化が進んでいたものの、「オーマイ」ブランドで販売するパスタやパスタソースなどの加工食品、冷凍食品などのパレット化は顧客であるスーパーマーケットの物流センターなどの設備の関係で「パレットが使えないケースがある」という。
パレット化は「積載効率が落ちる」との課題もあるため、着荷主、運送事業者の理解と協力を得て、着々と進めていく方針だ。
また、リードタイムの延長はゴールデンウィークやお盆休みなどの長期休暇期間については「顧客の理解が進んだが、年間を通してとなるとまだ道半ば」としつつも、まずは発荷主として、担当ドライバーが適切に休憩を取りながら運行できるよう、出荷予定時間を厳守していく。
「メーカーにとって製品・商品が運べないことが最大の問題であり、安定供給・輸送が第一」と指摘。運送事業者の改善提案に真摯(しんし)に耳を傾けるとともに、同社にとっては顧客である着荷主に対しても「できることから改善を働き掛けていく」としている。
▼日本製粉 1896年9月に日本で最初の機械式製粉の民間企業として設立。製粉事業をコアビジネスに食品素材事業、加工食品事業、冷凍食品事業、弁当・総菜の中食事業など食品事業を幅広く展開するほか、ヘルスケア、ペットフード事業など多角化も進める。資本金は122億4千万円。従業員数は3696人。2018年3月期の連結売上高は3353億円。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
※本紙2019年9月27日付掲載
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)