貨物事業法改正案、国交相ら荷主に働き掛け 「違反要因」疑いあれば 標準運賃を大臣告示 経団連・日商が趣旨に賛同
行政
2018/11/26 0:00
自民党トラック輸送振興議員連盟(細田博之会長)は20日、総会を開き、貨物自動車運送事業法改正案の概要を明らかにした。国土交通、農林水産、経済産業、厚生労働の各大臣の協力により、荷主に働き掛けを行えるようにする規定や、標準的な運賃の告示制度の導入を2023年度末までの時限措置として盛り込む。また、策定に当たっては、経団連(中西宏明会長)、日本商工会議所(三村明夫会頭)の両団体の賛同も得ており、事業者や荷主、関係省庁が一体となって推進していく。改正案は22日の自民、公明両党の国交部会で了承。早ければ臨時国会に議員立法として提出し、可決、成立する可能性も出てきた。(田中信也) 同議連の総会では、坂本克己会長ら全日本トラック協会の首脳や、国交省をはじめ厚労、農水、経産の各省や公正取引委員会の担当官、衆院法制局の担当職員が出席。議連の盛山正仁幹事長代行が、改正の目的や趣旨について報告した。 改正案の最大の目玉となるのが「国交相による荷主への働き掛けなどの新設」で、自動車運送事業への時間外上限規制の適用猶予期間である23年度末までの時限措置として規定する。 荷主に、トラック事業者の違反の原因となる行為をさせている疑いがある場合、国交相が当該荷主の情報を関係行政機関の長(農水、経産、厚労の各大臣)と共有するとともに、荷主への働き掛けを実施。立証された場合、国交相とともに荷主への要請を行う。それでも改善されないケースでは、関係省協力の下、荷主勧告を行った上で社名を公表。また、荷主の行為に独占禁止法違反の疑いがあるときは、公取委に通知する。 更に、荷主への交渉力が弱く、必要なコストに見合った対価を収受しにくいために持続的な運営のできない事業者が、法令順守可能な運賃を設定するための目安として「標準的な運賃の告示制度」を導入。ドライバーの労働条件改と事業の健全な運営を確保するため、国交相が標準的な運賃を定めて告示できるようにするもので、23年度までの時限措置として定める。 このほか、参入規制の厳格化に向け、行政処分による事業廃止後の欠格期間の延長(現行2年から5年へ)に加え、事業継続に必要な保有車両台数・資金などの許可基準、定期的な点検・整備といった輸送の安全に関する義務、健康保険加入の義務といった順守事項について、それぞれ明確化するよう規定。荷主への対策では荷主配慮義務の新設、荷主勧告制度の強化(荷主名公表の明記など)を盛り込む。 盛山氏は、改正案の策定段階で経団連、日商にも説明し、「トラック運送が衰退すれば日本経済もダメになるとして、(趣旨への)賛同を得た」ことを報告し、荷主の理解を得られるとの認識を示した。 出席した議員からは、行政機関に説明・協力を求める質問が出たが、全員が賛同した。 細田会長が「ドライバー不足の中、時間外労働の削減に大きな制約があることから、事業法の改正で諸問題に適切に対応できるようにしたい。一気に国会で成立させるよう頑張る」と決意を述べた。 一方、全ト協の坂本氏は「真っ当に、一生懸命事業に取り組む事業者が報われるルールをつくっていただき、その中で公正な競争を行う。国交省のみならず厚労、経産、農水の各省に加え、公取委にも協力していただき、ドライバーの労働条件を改善することで、日本の経済を支えていく」と力を込めた。 【写真=荷主への対策では荷主配慮義務の新設、荷主勧告制度の強化(荷主名公表の明記など)を盛り込む】