女性・高齢者が運転しやすいトラック、乗降容易で視野良好 国交省&全ト協調べ 「小物入れ充実を」
行政
2018/10/11 0:00
運転席や荷台へ乗降しやすく、後方・左側の視界が良好なトラックを――。国土交通省と全日本トラック協会(坂本克己会長)が5日明らかにした、女性や高齢者ドライバーが運転しやすいトラックの開発や改良に向けて実施したアンケートで、機能や装備に対する評価が女性、60歳以上の高齢者の傾向がおおむね一致した。運転席まわりでは「小物入れの充実」が、運転支援装置では「バックアイカメラ」が共通して上位に位置。年内にも取りまとめ、あらゆるドライバーが活用できるようガイドラインか手引書として策定し、車両の開発や購入などの参考にしてもらう方針だ。 5日、女性ドライバーなどが運転しやすいトラックのあり方検討会(鎌田実座長、東京大学大学院教授)の会合で、全国591社の事業者(経営側)、女性、60歳以上の高齢ドライバー、女性職員を対象とした3種のアンケートと、ドライバー・コンテストで優秀な成績を収めた女性ドライバーへのヒアリングの結果を事務局が報告。取りまとめの方向性について協議した。 事業者アンケートでは、女性と60歳以上の高齢者の雇用状況や運行形態に加え、車両に対する改善が必要な点、必要な装置・技術などを聞いた。定着状況について「辞めないケースが多い」と答えたのが女性74.6%、高齢者86.9%といずれも良好で、事業者による雇用意欲は総じて高い。運行形態は「近中距離」「市内配送」が大半を占める。 また、「女性や高齢者が転職したいと思われる改善」について、ハード面は「安全対策の充実」「車両の改良」「運転支援装置の充実」「小型・女性向けトラックの導入」が上位を占めた。運行管理などソフト面では「労働時間の改善(待機時間を含む)」「荷役作業の軽減」「勤務体系の改善」「給与面の待遇向上」が上がった。 一方、ドライバー向けでは、①運転席まわり②AT(オートマチックトランスミッション)、AMT(セミオーダートランスミッション)の使用意向③装備して欲しい運転支援装置や先進技術④荷役性――に大別し、評価や改善を求める項目などを聞いた。 運転席まわりで改善してもらいたい項目では、「小物入れの充実」が女性、高齢者とも最も多く、傾向がほぼ一致。身長160センチ以下が大勢を占める女性では「運転に適したシートの調整範囲」が比較的上位に付けた。「ミラー類の使いやすさ」では女性が左側、高齢者は後方の視界確保を指摘する声が多く、傾向が分かれた。 具体的な指摘では、「キャビンが高い」「UV(紫外線)カットガラスが必要」などが共通して多い。このほか、女性は「(キャビンに乗降するための)ステップの位置が高い」「(シートの)リクライニング機能の改善」「メーターがハンドルで見にくい、死角ができる」が、高齢者は「ステップの幅が狭い」「メーターを明るく」が目立った。 AT、AMTの使用意向は、女性が「使ってみたい」48.6%、「使ってみたくない」51.4%と伯仲する一方、高齢者は「使ってみたい」が68.4%で、傾向が割れた。 運転支援装置や先進技術に関しては、女性、高齢者ともに「バックアイカメラ」「ドライブレコーダー」「定速走行・車間距離制御装置(ACC)」「サイドビューカメラ」「レーンキープアシスト」――の順。荷役性で改善を求める項目も「荷台への乗降性」「(ウィング車の)側面あおりの開閉しやすさ」「後部ドアの開閉しやすさ」「日常点検の容易性」がいずれも上位を占める。 女性と高齢者で改善を求める項目がおおむね合致していることから、ガイドラインもしくは手引書では、女性、高齢者を問わず全てのドライバーが運転しやすいトラックの在り方を追究する。メーカーの新モデルやオプションの開発に役立てるとともに、事業者の車両購入の参考にしてもらう方針で、各メーカーの既存の機能・装備についても比較できる形で紹介する予定だ。(田中信也) 【写真=女性ドライバーなどが運転しやすいトラックのあり方検討会でアンケート結果を報告し、方向性を協議】