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トラック運転者派遣、「割高」でも市場拡大 人手確保へ中小零細の利用増 単価 11年比2割増

行政

2017/11/02 0:00

 トラックドライバー派遣市場が拡大している。運送事業者とで、直接雇用よりもおおむね「割高」とされるドライバー派遣だが、大手ばかりでなく、中小規模の運送事業者にも利用が広がっている。既存の派遣会社が業績を伸ばす中、ブルーカラー派遣大手のフルキャストグループが今夏、新たに事業を開始。トラック事業者の現場の窮状に対する荷主の理解の浸透などが利用増の要因とみられる。ドライバー派遣市場の現状と見通しをリポートする。(高橋朋宏、沢田顕嗣)  「ニーズは宅配、食品、日用雑貨など千差万別かつ旺盛。当社に対する期待の高さを実感している」と話すのは、ランスタッド(猿谷哲社長、東京都千代田区)DR(ドライバー)事業部の雲戸隆使部長(42)。「売り手市場にあるのは確か。物流の継続性を担保する上で、経営の選択肢の一つとなっている」  同社は近年、ドライバー不足を背景に、物流会社への派遣実績を右肩上がりで伸長させている。特に、ここ1、2年は急激な上昇カーブを描いており、現在では1日に500~600人を派遣。単価は引き合いの増加に伴い、2011年比で2割程度アップしている。  同社は顧客と向き合いながら人手確保を支援する姿勢を身上としており、「募集広告や採用活動などの助言も行っている。短期的な取引ではなく、コンサルタントも交えて根本的な解決を目指す」と説明。  一方、「その仕事に魅力が無いと求職者は来ない。実際にはオーダーの5、6割しか応えられていないのが実情だ。容易に人を採れる状況ではないことを物流事業者に理解して欲しい」と訴える。ドライバー不足は20年まで続くとみている。  また、「ドライバー派遣が定着したのはリーマン・ショック以降。物流事業者はドライバーの派遣及び紹介を人手確保の選択肢に入れていると思う」とし、今後は関東圏外の需要にも段階的に応じていくほか、自社でドライバーを抱える構想も持っている。  フルフィルメント・ホールディングス(中村真一郎社長、同区)傘下のWin Job(ウィンジョブ、鷹野雄太社長、同)の売上高は35億~40億円規模。グループで物流事業を手掛けていることもあり、ドライバー派遣を得意とし、成長を続けている。  全国展開を進め、現在は16支店・オフィスを構える。顧客の7割は食品関係で、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアなどが多い。  中村社長(49)は「自社の人事部に任せておけず、経営層から直接連絡を受けることも多く、『第2人事部』として活用してもらっている。(派遣後、一定期間で直接雇用に切り替える)紹介予定派遣の要望も多く寄せられており、オーダーメイド型で要望に応えていく。ただし、今はオーダーが多すぎる。何千人分も来るが、全てには応じられない」と話す。  同社では「適正料金」を収受するため、顧客は中堅以上の物流事業者が多かった。しかし、最近は売上高が2億円に満たない事業者の利用も増えてきた。  中村氏は「以前は『割に合わない』と利用することが少なかった小規模事業者からも、声が掛かるようになった。切迫感もあるのだろうが、荷主との交渉で運賃が上がっているのかも知れない」とみている。  実際に、東京都トラック運送事業協同組合連合会(石川和夫会長)が10月に公表した運賃動向アンケートでは、「半年後には値上げができる」と回答した運送事業者が21.7%に上り、前回調査(1月)の6.5%から大幅に増加。宅配現場がメディアでクローズアップされたこともあり、アンケート結果は荷主の強い危機感をうかがわせる。  また、働き方として、正社員よりも派遣を選択する労働者が少なくないという。中村氏は「労働者派遣法を守らないと、派遣会社はやっていけない。派遣先では、労働時間などのルールを必ず守ってもらう。サービス残業などは無い。ある意味、正社員よりも法に守られている」と指摘する。  トラックドライバー派遣市場の拡大を見込み、7月に設立されたのがフルキャストグループのフルキャストポーター(小田延宏社長、新宿区)だ。フルキャストグループはブルーカラー派遣の大手で、物流業界向けには庫内作業員を派遣していたが、16年辺りからドライバー派遣の問い合わせが急増した。  昨年末にドライバー派遣事業について検討を始め、今年初めに参入を決定。フルキャストホールディングスの経営企画部長も務める小田社長(39)は「クライアントからの要請が多く、機会損失している状態だった。宅配現場の危機が報じられるようになってから、更にニーズが強くなった」と強調する。  新会社立ち上げに当たって、庫内作業員ら数千人にトラックドライバー業務に興味があるかアンケートを実施し、半数近くが「興味がある」と回答。クライアント、働き手の双方に需要があると判断した。  小田氏は「ドライバー職に長時間重労働というイメージを抱き、二の足を踏んでいた庫内作業員が多いという印象を受けている。当社の派遣ドライバーには高い技術は求めない。運転だけといった一般的に誰でもできるような業務に携わってもらう。荷物の積み下ろしなどの付帯業務は、当社が派遣した庫内作業員に行ってもらうなど、業務を分離し、負担を減らしている」と説明する。  顧客は大手の宅配事業者や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業者から中小零細まで幅広く、登録しているドライバーは千人程度。グループの採用人数が年間40万人と突出しているフルキャストのブランドネームが強みだ。  「お陰さまで採用はできている。高度な業務でなければ運送事業者の要請に応じられる。自社で雇うより安価だし、人が入ってから料金が発生するため、採用の確約が無い求人広告に何十万、何百万円と掛けるより、ずっと効率的だ」  現在の事業エリアは関東のみだが、1、2年のうちに東海、関西に展開し、その後、大都市を中心に進出していく。  「今は労働者の立場が強い。週3回でいいといったライトな働き方を求める労働者もおり、事業者側は多様な対応をしないと人を呼び込めない。派遣会社の役割は単なる人集めから、労働者と事業者の間に入っての調整に変わってきた。物流業界にこそ、派遣会社という中間業者が入るメリットがあると感じる。ドライバー派遣市場はこれから大きくなる」 【写真=トラ事業者の現場の窮状に対する荷主の理解の浸透などが利用増の要因とみられる(イメージ画像)】





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