肥後産業、3温度帯で茶葉輸送 近・長距離を組み合わせ
物流企業
2016/08/25 0:00
【鹿児島】肥後産業(肥後貴哉社長、鹿児島市)では、3温度帯物流センターと長距離及び近距離輸送モードを組み合わせ、鹿児島県の特産品である茶葉の一貫輸送を担い、地域の農業を支援している。また、大規模災害時の緊急物資支援輸送にも積極的に取り組み、社会貢献を果たす。(上田慎二) 長距離輸送が売上高の8割を占め、地理的ハンディに伴う長時間労働の抑制、ドライバー不足解消などの経営課題に直面しており、トラック輸送を取り巻く事業環境は厳しい。 こうした中、二つ目となる事業の柱として育てるため、これまでほとんど経験が無かった定温物流に着手。2008年から準備を進め、12年の新物流センター(鹿児島市)の稼働を機に本格参入した。 冷凍・冷蔵食品輸送は競争が激しい。お茶の製造に関連する物流は、工程が複雑で営自転換が進んでいない分野で、地元の同業者との競合を避けることが可能な事業でもある。 現在の長距離輸送を維持しつつ、新規事業の拡大も進める。マンパワーと全体的な経営コストの負担には限りがある。社員全員の能力を最大限に発揮させ、両分野で活躍できる人材を育てる必要がある。 肥後社長(41)は「冷蔵・冷凍輸送部門の人材育成は、先駆者である南日本運輸倉庫(大園圭一郎社長、東京都中野区)と、園田陸運のアドバイスを受けている。両社に社員を派遣し、温度管理のカギを握る物流センターオペレーションの手法を一から学んだ」と振り返る。 茶葉は、収穫直後から発酵が始まるため、荒茶加工までの間、低温保管が有効かつ差別化となる。現在、新物流センターのマイナス25度の冷凍庫には、鹿児島県の特産品である茶の生葉が、摘みたての鮮度で保管されている。生葉は、熱処理による荒茶加工、仕上げ加工を経て、市販の茶葉になる。 同社では、生葉の集荷・冷凍保管から、荒茶加工場の入出荷作業、大手飲料メーカーの工場納入までの物流業務を一貫して請け負う。 茶葉は非常にデリケート。温・湿度、においの管理にも細心の注意を払う。高度な品質管理が好評を得て、取引先は宮崎、熊本の両県にも広がっている。 茶葉をはじめ、県産品の長距離輸送を積み合わせることで、地元の荷主企業の物流コストを削減。更に、関西圏からの下り便の受注増で実車率を高める。こうした取り組みにより、肥後グループの売上高は60億円(16年7月期)を見通す。 社会貢献活動は最重要テーマの一つ。東日本大震災での復旧支援活動では、現地で極端な支援物資の不足に直面した。その教訓を生かし、東日本大震災以降、美山倉庫(鹿児島県日置市)内に、水や紙オムツ、ティッシュペーパーなど、大型車7台分の支援物資の備蓄を企業判断で続けている。 熊本地震では、4月14日の前震発生直後、社員、建物ともに無事だった熊本支店(熊本市東区)のスタッフが、被災地の避難所で必要な支援物資を調べ、翌日早朝から、小型車、大型車で支援物資輸送に着手し、大型車5台分の水や紙オムツを、無償で益城町まで運び、寄付した。15年5月、鹿児島県口永良部島の新岳で爆発的噴火が発生した際には、トイレットペーパーなどを海上輸送で屋久島へ届け、島民の避難生活を支えた。 肥後氏は「災害発生時の混乱の中、迅速に支援物資を供給するには日頃の準備が欠かせない。可能な限り物資の備蓄を整えて、救援活動に協力したい」と話している。 【写真=新物流センターと茶葉専用の集配車】