味の素物流、食品メーカーの共配支援 車両数3割削減
物流企業
2016/06/09 0:00
味の素物流(田中宏幸社長、東京都中央区)は、労働力不足時代への対応を強化している。全体最適を実現する物流統合システム「ALIS(アリス)」を駆使し、4月から食品メーカーの共同配送を支援するサービスを開始。労働環境の変化を背にした製(メーカー)と配(卸)の新たな連携に貢献している。 食品メーカーの共配は6社(味の素、カゴメ、ミツカン、日清オイリオグループ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社)を中心に、北海道で先行スタート。効率化に不可欠な共通の言語・オペレーションを採用するとともに、パレット単位の事前出荷情報を納品先の卸に送信。これにより、検品の簡略化に結び付ける計画だ。車両数も3割以上の削減を見込んでいる。 同社では、ALISを武器に、より多くの荷主に共配への参加を提案していく方針。既にALISを利用したい意向を表明している会社がある他、業務用食材を取り扱う新規荷主との取引も今秋をメドに開始する予定だ。 更には、味の素グループのSCM(サプライチェーン・マネジメント)戦略に並走する「グローバルALIS」の開発にも取り組んでいる。同社はタイやカンボジアで海外事業を展開しており、今後も東南アジアを中心に、海外事業を拡大していきたい考え。 2016年度は、労働力の豊富な時代を前提とした仕事のスタイルも抜本的に見直す。貨物とサービスの内容を踏まえたセンター構築を目指し、マテハンや自動化技術の活用も含め現場を基点とする運営体制を確立する。事業部別センター経営の推進に加えて、荷主別損益システムの運用にも注力。センターの特性に応じた新KPI(重要業績評価指標)を設け、事業・荷主単位の最適化を追求する。 人材教育は個々の生産性を1割高める「パワーアップ10運動」を軸に実施しており、3月の成果発表大会では、10チームが取り組みを報告。今後は、顧客が参加する「現場力発表会」に衣替えできるような活動に発展させていく方針だ。 この他、食品の輸配送車両を中心とする数千台の車両を対象に、全地球測位システム(GPS)の導入を加速。モーダルシフトを促進する一環として、鉄道輸送用の31フィートコンテナ「レールライナー」の運行も拡充していく。 16年3月期の売上高が607億円、17年3月期は前期とほぼ横ばいの605億円を見込む。田中社長は「荷主や事業ごとに数字を精査し、仕事のやり方を再点検する必要性を痛感した。マン/アワー(1人当たりの1時間の生産性)という言葉があるが、人手確保難の時代にはそぐわない尺度だ。例えば、自動倉庫を活用するのが適当である場合に、人手を掛けることを前提とした指標は意味を成さない。一つひとつの作業を分析した上で、改善を図っていきたい」と話している。(沢田顕嗣) 【写真=鉄道輸送用の31フィートコンテナの運行も拡充】