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九州「物流」南北寸断 地元経済に大きな打撃

産業

2016/04/21 0:00

 熊本県を中心に相次いでいる地震で、路面の崩落やひび割れ、土砂災害で通行止めが相次ぎ、大動脈の九州自動車道の一部(熊本県内)、大分自動車道の一部(大分県内)も通れなくなって、九州南北の物流は寸断された。18日時点で死者は44人に拡大。気象庁は「14日は前震、16日の地震が『本震』と考えられる」とみており、被害は更に広がる可能性がある。熊本県内に集積する自動車や電機などの大手メーカーの工場が相次いで操業停止となり、農水産物の出荷も困難な状況で、運送業界を含めた地元経済に与える影響は深刻だ。(武原顕)  熊本県トラック協会(住永豊武会長)は14日午後9時46分、現地災害対策緊急本部を設置。国土交通省、全日本トラック協会(星野良三会長)、九州トラック協会(眞鍋博俊会長)と連携態勢を構築し、緊急支援に乗り出している。  発生直後から県と市の要請を受け、15日早朝から緊急救援物資輸送に着手。18日までに県内の500カ所余りの避難所に100台を超える会員事業所のトラックが出動し、食料品、飲料水、毛布などの生活物資を届けた。  15日午前7時から739の会員事業所に被害状況を確認。19事業所から、ロッカー、パソコンの転倒、シャッター破損、壁のひび割れ、水道・ガス管の破裂が報告された。その時点では、人的被害は無かった。  また、運行待機や運行中止、時差出発、増便で対応しているほか、配送先で荷下ろしができずに持ち帰ったり、2次被害防止のために運行途中で中止の連絡が入ったりしている。  熊ト協では、県内の45市町村(14市23町8村)と緊急物資輸送協定を締結しており、今後、被災地のライフライン復旧の長期化を見越し、救援物資輸送体制の拡充、強化に移る。  熊本県は15日、熊ト協との協定に基づき、県庁や八代地域振興局、県消防学校、上益城地域振興局から県立体育館、氷川町役場、益城町保健福祉センターに食料品と毛布を運搬した、と発表。  県商工観光労働部によると、15日午前6時半時点で避難所は県内45市町村の505カ所に設置され、避難者数が4万4449人。だが、その後も避難所は増設され、避難者数は10万人以上に増えている。  一方、15日には福岡県トラック協会(眞鍋会長)に、九州大学病院から熊本大学病院へ透析液7千リットルの緊急搬送の要請があった。福岡ト協が運営している筑後緊急物資輸送センター(福岡県筑後市)、筑豊緊急物資輸送センター(飯塚市)も地元自治体と調整し、避難所の開設に対応していく。  大分県でも16日未明、別府市や由布市などで震度6 弱の強い地震が発生したため、大分県トラック協会(青木建会長)は、別府市、由布市、庄内町、挾間町の4カ所の避難所に生活物資を届けた。九州各県ト協でも、各自治体と緊急物資輸送協定を締結しており、いつでも出動できる態勢を整えている。  東日本大震災では、発生直後から支援物資が滞り、スムーズに避難所へ物資が届かなかったケースが多く、被災地も受け入れで大混乱した。こうした5年前の教訓を生かし、①民間物流施設のノウハウの活用②物流専門家の派遣③現地の指示連絡体制の徹底④ボランティアの活用⑤ガソリンスタンドなど燃料の安定供給⑥通信手段の確保──など、実効性を高める支援物流体制が求められる。  被災地の状況は刻一刻と変わるだけに、その時々に必要とされる生活支援物資の受け入れ、ボランティアが支援に入るタイミング、トップの指示連絡の徹底などは、被災地での混乱を避けるためにも欠かせない。  九州道・益城熊本空港インターチェンジ(IC)近郊の物流企業を始め、熊本県内の物流事業者に大きな影響が出ている。熊本交通運輸(住永金司社長、益城町)の本社物流センター倉庫などでは、建物の窓ガラスが割れ、壁が崩れ落ちるなどの被害が発生。自社の復旧作業に加え、被災地への緊急救援物資輸送などの支援活動を始めている。  九州の高速道路は、依然として一部区間が路面の崩落やひび割れ、橋の倒壊などで通行止めが続く。部分的には解除されているが、九州道の植木IC─松橋ICで高速道路上に架かる橋が落下、御船IC─松橋ICの上下線では道路が陥没。復旧工事は長期化しそうだ。  こうした被害により、地元の運送会社は深刻な状況に陥っている。セイコー運輸(鳥部敏雄社長、鹿児島市)の江崎浩康常務(49)は「鹿児島―福岡を国道3号ルートか東九州ルートで運行しているが、輸送時間は通常の倍に当たる9時間程度かかっている。東九州ルートは東九州自動車道や大分自動車道を利用している」と話す。  また、エスライン九州(鹿児島市)の岡元幹雄社長(65)は「熊本営業所(熊本市南区)では従業員、施設ともに無事で、鹿児島本社から飲料水などの支援物資を送っている。熊本エリアの集配業務再開に向け、荷物の受け入れ態勢や倉庫・センターの被災状況、輸送ルートの安全性などを確認中。鹿児島―福岡は東九州経由のため遠回りを強いられている。運転時間や積載率を考慮し、無理のない体制で事故を防ぐ」と対応策を語る。  九州の物流は南北で完全に遮断された。一般道では、至る所で陥没や亀裂が生じ、う回路の利用はままならない。復旧の見通しも全く見えていない。全国大手の物流会社などが取り扱う宅配便、郵便などの配達の遅れも当分続きそうだ。  一方、県内の基幹産業である農水産物の流通も深刻だ。新鮮な野菜や果物、魚介類は厳格な鮮度維持が求められる。大都市圏の市場での競り、相対取引における競争力の低下は死活問題になりかねない。地元農業協同組合や漁業協同組合は高速道路網の遮断に伴い、代替ルートの検討を進めているが、日本貨物鉄道(JR貨物)でも運休・遅延が続き、物流を巡る経済的な損失は深刻さを増している。 【写真=熊ト協の会員事業所から出動したトラック。災害用簡易組み立てトイレを積み込み、避難所へ(18日、熊本県民総合運動公園陸上競技場)=写真武原顕】





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