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多重下請け構造是正、取引「2次」まで制限へ

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2024/04/26 4:00

 物流業界の多重下請け構造は、適正取引を阻害する要因として長らく問題視されてきた。通常国会で審議中の貨物自動車運送事業法の改正案では、元請運送事業者に、実運送事業者の社名などを記載した「実運送体制管理簿」の作成義務化を明記。一方、全日本トラック協会(坂本克己会長)の検討会は3月、取引は2次下請けまでに制限すべきとの提言をまとめた。官民を挙げた取り組みを通じ、課題解消への機運が高まっている。(土屋太朗)

官民挙げて課題解消

 多重下請け構造を是正するための規制措置の一つである実運送体制管理簿は、元請運送事業者に作成を義務付ける。実運送事業者の名称、貨物の内容、区間、何次請けに該当するかといった記載項目を規定。電子化も認め、作成後は1年間の保存義務を課す。下請けなどへの開示義務はないが、荷主から請求された場合は見せなければならない。また、記載様式は一律に求めないが、国土交通省は「参考」としての提示も検討する。
 管理簿の作成は、元請けの負担増につながる懸念がある。ある運送事業者の担当者は「物流業界の取引は急なスポットの依頼も多い。こうした取引も全て管理簿に記録しないといけないのか」と指摘。国交省は改正案に盛り込まれていない部分でも、省令などで補足すべき内容は別途検討していく必要性を示している。輸送業務の全てを義務化の対象とするのかといった点も、今後の検討事項となる可能性がある。
 一方、規制措置には書面による運送契約の義務化も示した。これは荷主と元請けとの間だけではなく、運送事業者同士の取引も対象とする。業務の内容に加え、付帯作業料や燃料サーチャージを含めた対価を記載する必要がある。保存義務は規定していないが、同省によると、今後検討される可能性はあるという。
 また、全ての運送会社を対象として、下請けへの業務依頼の際に適正な対応を取るよう努力義務を課す。その上で、一定規模以上の会社には、マニュアルの作成と責任者の選任を義務付ける。「一定規模」の対象に関しては、下請けに依頼する輸送量で区分することを想定している。
 一連の規制措置の制度設計が進む一方、全ト協も3月、坂本会長の諮問機関として「多重下請構造のあり方検討会」(平島竜二委員長)が提言をまとめた。大手運送会社だけでなく、中小運送会社も含め、取引を2次下請けまでに制限すべきと明記した。
 その上で、元請けには、標準的な運賃に加えて利用運送手数料10%を収受するよう、荷主と交渉する必要性を指摘。利用運送事業者にも、依頼元の運送事業者などから運賃とは別の手数料を確保し、実運送事業者に適正な運賃が行き届くように求めた。
 国交省には、管理簿の作成に関する丁寧な指導や効果の検証を要請。都道府県トラック協会にも利用運送事業者を入会させないルールの必要性を訴えている。

交渉力強化が重要

 多重下請け構造の是正に向けた動きは、ここ数年で活発になっている。2022年、公正取引委員会と中小企業庁が、下請けとの取引で価格転嫁を最も受け入れていない業種は「道路貨物運送業」との調査を発表。業界内での適正取引が進んでいない実態が改めて示され、この発表の2日後には、国交省が元請けに適正取引を呼び掛ける会合を初開催する事態につながった。
 今回の規制措置や全ト協の提言は、業界の構造的課題にメスを入れることになる。衆院国土交通委員会(長坂康正委員長)が4月10日に改正案を了承した際、付帯決議では、更なる措置が必要と判断された場合には2次下請けまでに制限する措置の検討も盛り込まれた。ただ、下請け構造が是正されても、適正運賃の収受に結び付かなければ意味がない。業界全体で機運醸成を図り、実運送事業者側も、標準的な運賃などを活用した交渉力の強化が一層重要となる。

多重下請け構造の是正に向けた動きは近年活性化(22年12月、国交省)

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