物流ニッポン – 全国の物流情報が集まるポータルサイト

ホワイト物流 賛同の輪(29)/エムケー精工、出荷時間の前倒し徹底

物流企業

2024/03/29 2:40

 モビリティー関連・生活機器などを製造、販売するエムケー精工は、物流事業者を重要なパートナーとして受け止め、出荷体制の改善に力を入れる。2019年9月に「ホワイト物流」推進運動の趣旨に賛同し、自主行動宣言を行った。環境に優しいモノとサービスの提供を目指しており、脱炭素化も見据えながら、様々な対策を講じる。(河野元)

発送伝票 カーボン複写→ラベル

 「モビリティー&サービス」「ライフ&サポート」「住設・建材」の各領域で、関連製品をそろえる研究開発型のメーカー。主力の門型洗車機は業界トップクラスのシェアを誇る。自動車整備で利用する機器、ガソリンスタンドにあるデジタルサイネージ(電子看板)式の料金看板、交通情報表示に使うLED(発光ダイオード)装置なども手掛ける。一般消費者向けには、ホームベーカリーや餅つき機といった調理家電、音響関係でイヤホン、小型スピーカーも作っている。
 自主行動宣言では、トラック事業者が法令を順守できるよう、必要な配慮に努めることを表明。昨年11月には出荷方法の見直しに着手し、受注の締め時間を繰り上げ、その推進徹底を図った。
 それまでは午前11時に締めるものの、送り状を作製しながら、遅れてきた注文にも対応し、結果的に午後3時まで受け付けるパターンが常態化していた。これを午前10時に締め切り、30分後にはその日のオーダーが出そろうように変更した。ただ、実現するためには社内的な調整が難しく、配送センターだけでなく、全国の支店をはじめ様々な部署の理解、協力が必要だった。
 管理本部の吉田学・物流業務部長は「午後3時に連絡すればやってくれるという雰囲気が、いつの間にか出来上がっていた。しかし、国や県、社会的にもトラック事業者への配慮努力を求められており、強力に推し進めた」と振り返る。
 当初は「本当に効果があるのか」「ウチだけの取り組みではないか」と懐疑的な声も聞かれたが、実際に前倒ししてみると、「意外とできた」と印象が変わる。トラック事業者には当然好評で、中には「非常に助かる。ここまで改善してもらったのは初めて」と言われたこともあるそうだ。
 併せて、発送伝票もカーボン複写式からラベル式への切り替えを進める。ドライバーの負担軽減と時間短縮につながり、双方にとってメリットがある。
 着荷主の中には、バース予約システムを取り入れているところもあり、待ち時間の削減に貢献。貨物量も事前に分かるため、効率的に配車計画を立てられる。
 特別積合せ事業者5社、宅配事業者2社、関係会社の信濃輸送(早川和弘社長、長野県千曲市)などに運送業務を依頼。チャーター便では、密に連絡を取り合い、到着時間に合わせて荷物を用意し、積み込み作業もサポートする。以前から行っていたが、更に積極的に手伝うよう方針を替えた。
 「2024年問題」を背景に、運送事業者から運賃の値上げ要請が来ている。これに関しては「公正取引委員会からもアンケートで対応を聞かれる。社会全体で改善しなければならない課題で、当社も製品への転嫁を考えたい」と協力姿勢を示す。残業時間の上限規制強化に伴うリードタイム延長、台風や豪雨、大雪など気象変化による運行計画の変更も、トラック事業者の判断を尊重する構えだ。
 なお、見直しを進める中で、一番のネックはパレット化だ。多様なジャンルの商品を製造しているため、サイズが様々で、積み重ねしづらいものもある。
 今後はこの点の改善にも力を入れたい意向。このほかにも、環境管理の国際規格ISO14001の認証取得を踏まえ、長距離輸送では鉄道への利用転換も図っていく。


 ▼エムケー精工 1956年設立、資本金33億7355万円、本社は長野県千曲市。従業員909人で、県内に3工場、全国に15支店、25営業所、7出張所を持つ。89年に株式を店頭登録し、2022年に東証スタンダード市場へ移行。23年3月期の売上高は273億2784万円。


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)

主力の門型洗車機を運ぶ関係会社の信濃輸送のトラック




本紙ピックアップ

特定技能1号開始1年、大手~中小で採用進む

 自動車運送業分野特定技能1号評価試験が始まって1年が経過した。トラックは4304人が国内外で受験し、3054人が合格。大手、中堅に加え、中小規模の運送事業者が特定技能制度を活用して外国人ドライバーを採用する事例が各地で…

「危険運転致死傷罪」適用要件見直し、飲酒・速度超過に基準    

 法務省は、飲酒や大幅な速度オーバーなど悪質運転による交通事故を厳罰化するため、危険運転致死傷罪の適用要件として数値基準を盛り込んだ自動車運転死傷行為処罰法の改正案を明らかにした。9日、法制審議会の刑事法(危険運転による…

国交省/次期安全プラン、走行距離当たり件数を指標に

 国土交通省は、2026年度からスタートする次期事業用自動車総合安全プラン(26~30年度)の死者数、人身事故件数などの目標値について、適切に評価できるよう総走行距離当たりの件数を指標として用いる。目標設定対象の業態に関…

グリーン物流優良者表彰、ドラッグストア納品効率化         

 国土交通、経済産業の両省は8日、2025年度グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰の受賞者を決定した、と発表した。国交大臣表彰には、宅配拠点と物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したドラッグストアの店…

オススメ記事

特定技能1号開始1年、大手~中小で採用進む

 自動車運送業分野特定技能1号評価試験が始まって1年が経過した。トラックは4304人が国内外で受験し、3054人が合格。大手、中堅に加え、中小規模の運送事業者が特定技能制度を活用して外国人ドライバーを採用する事例が各地で…

「危険運転致死傷罪」適用要件見直し、飲酒・速度超過に基準    

 法務省は、飲酒や大幅な速度オーバーなど悪質運転による交通事故を厳罰化するため、危険運転致死傷罪の適用要件として数値基準を盛り込んだ自動車運転死傷行為処罰法の改正案を明らかにした。9日、法制審議会の刑事法(危険運転による…

国交省/次期安全プラン、走行距離当たり件数を指標に

 国土交通省は、2026年度からスタートする次期事業用自動車総合安全プラン(26~30年度)の死者数、人身事故件数などの目標値について、適切に評価できるよう総走行距離当たりの件数を指標として用いる。目標設定対象の業態に関…

グリーン物流優良者表彰、ドラッグストア納品効率化         

 国土交通、経済産業の両省は8日、2025年度グリーン物流パートナーシップ優良事業者表彰の受賞者を決定した、と発表した。国交大臣表彰には、宅配拠点と物流DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用したドラッグストアの店…

Share via
Copy link
Powered by Social Snap