ホワイト物流 賛同の輪(28)/濵田酒造、翌々日納品へ共配網活用
荷主
2024/01/12 2:10
焼酎メーカー大手の濵田酒造(濵田雄一郎社長、鹿児島県いちき串木野市)は2015年から、運送事業者と連携してドライバー不足や低賃金の問題解決に取り組んできた。「材料調達、商品供給安定化の取り組みを物流の問題解決に役立てたい」と19年、県内でいち早くホワイト物流推進運動に賛同。ロジスティックス部は「物流で会社・社会・環境に貢献」を方針に掲げ、卸企業やトラック事業者とタッグを組み、「2024年問題」を克服していく。(上田慎二)
全国にSPを整備
①物流の改善提案と協力②運転以外の作業部分の分離③リードタイムの延長④契約の相手方を選定する際の法令順守状況の考慮⑤働き方改革などに取り組む物流事業者の積極活用⑥異常気象時の運行中止・中断――を宣言した。
重点施策「物流の改善提案」では、17年から全国各地に整備してきた共配・ストックポイント(SP)網を活用。東北、中部地区にはそれぞれSPを新設し、北海道と関東は移転拡張させた。24年は中国地区に新SPを開設する計画だ。
SPでは、既存の食品共配網を利用したり、同業者と共配を始めたりして配送距離と運転時間を減らす。また、SPの整備に伴い、物流大手に全面委託していた商品の全国発送を見直した。現在はSPごと計10社の運送事業者と運送契約を締結。九州から北海道まで、本格芋焼酎「だいやめ」「赤兎馬(せきとば)」や本格麦焼酎「隠し蔵」など全ての商品が受注の翌々日までに取引先の卸企業などに届く体制を整えた。
物流改革の中で、ドライバーに最も恩恵をもたらしているのが「リードタイムの延長」だ。濵田酒造は、卸企業を中心とする全ての得意先に「D1(翌配)からD2(翌々日配)」への転換を3年がかりで要請。メーカー、卸、小売りが一体で無理な運行を防ぐ必要があると協力を求めた。
長期にわたる交渉の末、23年5月、酒類メーカーでは極めて珍しい「全エリア(離島を除く)・全得意先のD2配送」が実現。ロジスティックス部の坂元学部長は「卸企業や小売企業の欠品リスクを高めるため、すぐ納品するのが業界の常識だが、得意先の皆さんに根気よく説明、提案し続けたことで、トラック輸送の重要性を理解していただけた」と話す。
更に、ロジスティックス部のトラック担当者が全国の協力配送会社を定期訪問し、高速道路料金の支払いや付帯作業の削減、有料化などを協議。安全で安定的な輸送サービスを維持するための改善を重ねている。
パレット化推進 荷受け時間45分→15分
着荷主の立場からも、ドライバーの業務負担を減らす。資材の調達物流で、バラ納品だった段ボール資材の調達を21年から濵田酒造の負担でパレット化。これにより、1台当たりの荷受け時間が45分から15分に短縮した。また、キャップの納品も購入ロットを変更して納入頻度を3回から2回程度に抑え、配送頻度を減らすことでトラック事業者の労働時間削減に貢献する。
更に、調達、販売の両物流とも「車上渡し」を原則にしている。本社工場である「傳藏院蔵(でんぞういんぐら)」の物流センターには、自社フォークリフト作業員を配置。トラックからの荷下ろしと積み込みに従事する。
坂元氏は「得意先の卸企業は、その先の小売企業、飲食店に向けた物流を手掛けており、トラックドライバーの不足や労働時間削減は共通の課題。24年問題を社会全体で受け止め、協力して解決を目指す」と話している。
▼濵田酒造 明治元年(1868年)創業。鹿児島県内に主力工場の「傳藏院蔵」と製造蔵の「伝兵衛蔵」「薩摩金山蔵」を持ち、一日当たり商品70㌧を国内外に出荷。全国に7カ所のストックポイントを設け、九州から北海道まで2日配送の体制を構築した。23年6月期の売上高は138億円。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)
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