ホワイト物流 賛同の輪(26)/タイガーラック、運賃上げ&荷待ちゼロへ
物流企業
2023/08/04 2:30
タイガーラック(南和良社長、大阪府東大阪市)は、ドライバー出身の森正樹氏を物流事業部の部長に任命し、現場目線の物流改善を進めている。5月には全協力会社の運賃を引き上げた。更に、荷待ちをさせない、実運送企業との取引を重視するなど、森部長が体験してきた「物流業界の理不尽」を徹底的に排除するよう取り組んでいる。6月にホワイト物流推進運動の自主行動宣言を提出した。(根来冬太)
「業界の理不尽」徹底排除
森氏は高校を卒業後、佐川急便(本村正秀社長、京都市南区)でドライバーとして11年勤務。更に、ドライバー仲間と運送会社を立ち上げたり、アマゾンジャパン(ジャスパー・チャン社長、東京都目黒区)で生産管理を担当し、物流センターの立ち上げなどに携わったりといった経験を持つ。
そうした中で、長時間の荷待ちとそれに伴う路上駐車、手積み手下ろしの過酷な荷役作業、多重下請け構造による実運送会社の経営の厳しさといった問題を目の当たりにしてきた。また、現在でも物流に関する情報を積極的に収集し、業界の現状や法令改正の把握に努めている。
2020年にタイガーラック入社後、自社配送拠点の美原倉庫(堺市美原区、敷地面積3100平方㍍)設立の責任者として、荷待ち時間を発生させない仕組みづくりに注力。倉庫内のレイアウトなどを工夫して出荷スピードを早めた上、商品受注の締め切りを前倒ししたり、協力会社の運行計画を聞いて荷物の順番を入れ替えたりと様々な施策を実行した。その結果、営業開始直後にトラックが着いてもすぐに積み下ろしを始められる体制を実現。到着時間も指定せず、ドライバーの負担軽減に努めている。
同倉庫にはフォークリフトが4台あり、タイガーラックグループのリフトマンが積み下ろしする。倉庫スタッフには会社負担でフォークリフトの免許を必ず取得してもらい、誰でも臨機応変に荷役作業をできるようにしている。荷物は全て出荷先ごとに仕分けした上でパレタイズしている。
現場目線の改善推進
更に、全都道府県に対応した最低運賃を設定し、出発・到着地点の住所を入力すると、その区間の最低運賃を表示するシステムも作成。これらを基に、会議などで運賃引き上げの必要性を強調した。
営業担当者などから「今この価格で配送できているのに、なぜ値上げするのか」と疑問視する声もあったが、「2024年問題」など物流業界の課題とその背景を丁寧に説明し、人手不足で商品を届けられなくなる前に対応する必要性を訴えた。23年5月、全協力会社に対し、片道の高速道路通行料金分以上の運賃引き上げを実現した。
営業担当者が物流業界の知識を深めたことで、顧客にも適切に説明でき、配送価格の上昇について理解を得られているという。森氏は「自分も運送業界出身でなければ、運賃引き上げなど考えもしなかっただろう。ドライバー時代、神奈川から大阪まで下道で走っていた経験が自分を奮い立たせた」と振り返る。
また、飛び込みで訪問した地元企業に輸送を依頼するなど、実運送企業との直取引にこだわっている。森氏は「実運送企業と直接コミュニケーションをとる方が運行体制を把握でき、信頼関係も構築しやすい。中小企業同士、急な出荷が発生しても優先的にトラックを確保してくれるなど、お互いを支え合う良好な関係を築けている」と話す。
今後の課題には、OEM(相手先ブランドによる製造)を委託している工場での荷待ち時間削減を挙げ、トラックの予約システムの開発などを検討。また、「主力製品のラックの改善・販売を通じて、倉庫の保管効率と出荷スピードの向上に更に貢献していきたい」(森氏)という。
▼タイガーラック スチールラックを主力とする物流機器の開発、販売を手掛ける。2003年に太陽設備として創業、06年に株式会社化して設立し、18年に現社名へ変更。EC(電子商取引)販売が9割以上を占める。23年2月に物流子会社のタイガーラック物流を設立した。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)
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