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ホワイト物流 賛同の輪(24)/エプソン、専用パレットで積載率⤴ 輸送効率化 東京集中→地方港活用 持続可能な物流確保へ

荷主

2023/05/23 2:50

 セイコーエプソンは、持続可能で安定的な物流の確保に向けた取り組みの強化を図る。慢性的なドライバー不足や「2024年問題」などへの対策を経営上の課題として重視。19年9月に行ったホワイト物流推進運動の自主行動宣言を機に、東京以外の港湾活用による輸送の効率化、モーダルシフト、積載率を上げる専用パレットの導入といった改善策を次々に打ち出している。(原田洋一)

 広丘事業所(長野県塩尻市)の敷地内にある床面積1万3200平方㍍の物流拠点「EBL自動倉庫」では、ノックダウン(KD)部品やアフターケア部品の物流管理を担っている。主な品目は、インクカートリッジ、プリントヘッドのパーツと完成品、インク原材料、消耗品などで、国内でのみ入手できる素材で作られ、偽造品の流通を防止するために海外で生産しない製品を取り扱う。
 更に、隣接工場で製造する産業用大型プリンターも加え、国内外の取引先や東南アジア、中国などの現地工場に向け出荷している。
 ここで浮かび上がった課題は、東京港の集中利用だった。同社のコア技術が凝縮するプリントヘッドの主要生産拠点は、東北エプソン(則松力社長、山形県酒田市)と秋田エプソン(遠藤正敏社長、秋田県湯沢市)の2工場。以前は東京へトラック輸送していたが、ドライバーの負担軽減、環境負荷の低減、輸送コストの削減の3点を実現するには、物流拠点や製造工場に近い港湾へ直送して使用台数と走行距離を抑える必要があった。
 20年の東京五輪の影響も重なった。同港周辺に大会施設が集中しており、期間中の通行制限による首都圏周辺の物流停滞を回避する対応も求められ、地方港のリサーチに着手した。この結果、五輪の影響回避と事業継続計画(BCP)対策として、同事業所に近く、コンテナヤードの待機時間も短い清水港を選択。KD部品については、名古屋港からも出すことを決めた。
 東北2工場で生産するプリントヘッドは、日本海側の酒田港からの輸出を始めた。ただし、荒天による遅延と抜港リスクを回避するため、冬季は従来通り東京港に運ぶ。現在、各港の利用頻度は、東京港が5割、酒田港3割、清水港と名古屋港はそれぞれ1割となっている。

鉄道利用 遠隔地輸送も視野に

 併せて、モーダルシフトも積極的に進める。定期性に優れ、大量輸送に適した鉄道には早くから注目しており、全国に拡散した空パレットを回収する実証を22年11月から開始した。
 東京や大阪などの都市部から日本貨物鉄道(JR貨物)の南松本駅貨物ターミナル(長野県松本市)に積載済みコンテナを集積し、同事業所へ運び込む。将来は北海道や九州といった遠隔地への製品輸送の分野での活用も見据えている。
 一方、インフラ面の課題も存在する。太平洋側の港へ向かうルートには海上コンテナが通過できないトンネルが存在するため、鉄道コンテナで発出しなくてはならない。積み替え作業が発生してコストが増えるため、輸出用貨物で利用するにはハードルが高い。
 このほか、積載率の向上にも独自のアイデアで対処している。パレット輸送に完全対応する中、標準的なT11型パレット(1100㍉×1100㍉)のほか、国内輸送には幅1100㍉×奥行き650㍉の特注パレットも使用。梱包サイズを小さくし、デッドスペースを埋められるよう工夫を凝らす。
 また、木材梱包材の検疫が厳しい中国向けの荷物には、廃木材をチップにして圧縮した再生パレットを使い、くん蒸工程を回避できるようにした。

自家用トラ導入も検討

 24年問題には、ドライバーの労働環境改善を見据え、車両1台当たりの輸送距離の短縮と運行台数の抑制に主眼を置いて対応する。中継輸送の強化に取り組むトラック運送事業者との連携強化に加え、1年ごとに更改している契約期間を複数年に改めることも検討している。
 取引先には、半日から1日程度のリードタイム延長を求める方針。生産企画部の神津幸栄部長は「適用後もドライバー不足は進み、段階的に様々な影響が出てくると思われる。厳しさを増す環境に備え、自家用トラックの導入も検討していきたい」と先を見据える。
 今後に関しては、「交通インフラをはじめ、自動化や先進機器の導入に後れを取っていると感じる。政府もDX(デジタルトランスフォーメーション)などを推進しているが、一企業だけで解決できない課題が多い。物流環境を根本的に改善する政策に期待したい」と要望する。


 ▼セイコーエプソン 1942年、長野県諏訪市で第二精工舎(現セイコーインスツル)の出資を受けて創業した精密機器メーカー。時計製造の技術から派生して、水晶振動子、半導体、液晶パネル、センサーなどの電子部品、プリンター、プロジェクターといった情報関連機器を生産、販売する。グループは国内20社、海外61社の計81社。売上高1兆3303億円、資本金532億400万円、従業員数7万9906人(23年3月末時点)。


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)

標準的なT11型パレット㊨のほか、国内輸送には特注のパレットも使用




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