ホワイト物流賛同の輪(22)/カンダ、当日発送締め切り設定 正午まで 労働時間を大幅削減
荷主
2022/09/13 3:10
業務用厨房用品の製造卸を手掛けるカンダ(神田智昭社長、新潟県燕市)では、出荷体制の見直し、保管施設の増強、省力化による荷待ち時間の短縮といった発送業務の改善を図っている。慢性的な人手不足や「2024年問題」など、多くの課題を抱える物流業界の実情を深く理解し、荷主企業として誠実に向き合う姿勢を鮮明にする。(原田洋一)
「残業ゼロ」の目標を打ち出す同社では、以前からトラックによる集荷が午後9時まで続き、ドライバーや社員の働き方改革を推進する上でネックとなっていた。この課題をクリアするため、既に導入していた夏の勤務時間を1時間早めるサマータイム制度を2年前に通年化。配送作業の時間を前倒し、短縮するよう体制を変更した。
更に、受注した製品を全て当日中に発送する慣例を改め、当日出荷で対応する注文の締め切りを毎営業日の正午に設定した。
中野孝行取締役は「発注元にはしっかりと説明し、理解を得る努力を積み重ねた。この結果、午後5時半には最後の輸送車両が出発できるほどに状況が改善した。今では、運送事業者から集荷時間の希望があれば、積極的に応じるようにしている」と取り組みの成果を強調する。
本社を構える燕市エリアでは、ほとんどの労働者がマイカーで職場に通う。周囲の企業と稼働時間をずらすことで朝夕のラッシュアワーを回避し、従業員の快適な通勤環境も担保することができた。
18年5月に建物を増設する形で新社屋が完成した。隣接する3階建ての商品ストックエリアには、フォークリフトも乗せられるエレベーターを設置。上層階でも走行できるよう床の耐重性を強化した上でリフト2台を導入し、搬入出作業の高速化と効率化を実現した。
併せて、パレット、パレティーナ、カゴ台車といった省力化器材の使用も始めたところ、発送準備のリードタイムが短くなり、トラックの荷待ち時間の削減につながった。現場を仕切る物流部の石田雄一部長は「入荷した製品を収納する仕事も早くなった。庫内作業に携わる従業員は女性が多い。非力でも多くのモノを運べるツールの利用は必須だった」と話す。
将来は、出荷に関わる帳票類のペーパーレス化も視野に入れる。「物流事業者と社内のシステムをオンラインで連動させて伝票を自動処理しているが、ピッキング作業のために一度紙へ出力している。これをタブレット(多機能携帯端末)やスマートフォンに置き換えていきたい」(中野氏)
1965年に「神田熊市商店」として創業した同社は、中国料理用器具の品ぞろえに定評がある。2010年4月に発売した中空二重構造の金属製ラーメン丼「メタル丼」は、地元のチェーン店が採用して話題となった。取扱商品は10万アイテムを超え、6シリーズある自社ブランドと8種類のオリジナルカタログに分類し、関東・関西を中心に全国へ展開している。また、ホームページ上にオンラインショップを設け、一般消費者向けの通信販売も行う。
中野氏は「物流がないと生活は成り立たず、当社の仕事も支えてもらっている。しかし、過酷な仕事というイメージが先行していて、人を集めることに苦労していると聞く。健全、安全、安心の3拍子がそろった無理難題のない業界になるよう、荷主としてサポートしたい」とエールを送る。
▼カンダ 1965年、新潟県燕市で業務用厨房用品の製造卸として創業。得意分野の中国料理用器具をはじめ、キッチン・テーブルウェア全般を取り扱う。2004年、東京・日本橋にショールームをオープン。18年、大阪事務所を開設。売上高25億円(19年6月期)、資本金1200万円、従業員数55人(20年1月末時点)。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)
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