ホワイト物流 賛同の輪(17)/三井化学、三位一体で効率化推進 物流業者&荷主と
荷主
2020/10/23 0:00
三井化学は、ひっ迫する物流需給の中で製品を安定して供給するため、共同物流やモーダルシフト、トラック予約受け付けシステム導入など、幅広い取り組みを進めている。物流維持に向け危機感を持って対策と解決を図る中、ホワイト物流推進運動に早期に賛同。化学品という危険の伴う製品の荷主企業として、物流、顧客と三位一体となって物流効率化を図るとともに、物流従事者の安全と健康の確保にも努めていく。(井内亨) 【写真=同業他社や運送会社と共に共配を推進(サンネット物流本社)】
国内の物流体制は、物流部の中に7部署105人が所属しており、このうち共同物流などの施策の優先度を上げて重要なテーマに位置付け、2019年4月に安全輸送プロジェクトチームを設置。通常、企画管理やオペレーション管理などを3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業者に全て委託するケースが多いが、化学品という扱いの難しい荷物特性から、事業者と一緒になって進めているのが同社の特徴だ。
ホワイト物流推進運動の自主行動宣言は、19年6月に提出。同社物流部が以前から「物流会社から選ばれる荷主でないと製品を運ぶことができない」という危機感を持って経営者層に物流の事情を説明していたこともあって、スムーズに宣言できたという。
取り組み項目の一つに、予約受け付けシステムの導入を挙げる。宣言以前から、トラックの待機時間削減に向け、対象の工場を限定しながら検証を推進。システムの効果確認とノウハウを蓄積しつつ、要件定義や運用ルールを設定するなど、試行錯誤を重ねている。
19年初頭からローリー車両を対象に実証を開始。いかにして工場に適用していくか検討する一方、入場するトラックのナンバーが決まるのが1、2時間前と直前すぎて活用しづらいといったことが大きな課題という。現在は3カ所の工場で検証中で、来年4月以降にシステム選定などを具体化させる意向だ。
同社は、同業他社や運送会社と共に、16年から共同配送を推進。輸送業務は化学品輸送で実績があり、東北地方のネットワークを有するサンネット物流(山部雅春社長、千葉県市原市)が担う。荷主企業は三井化学を含めて現在9社。直近では、DICの塗料製品と住友化学の樹脂製品の取り扱いを開始し、荷主企業及び取扱品目の幅を広げている。
今後は京浜地区の企業との共同配送を検討。ミルクラン方式で京浜地区の小口貨物を集荷し、サンネット物流の本社で積み替えて東北向けに配送する案を模索している。また、京浜、京葉から東北向けの輸送に利便性の高い埼玉県で、ストックポイントを設置する案も出ている。こうした取り組みを通じて、出荷先エリアや荷主企業を拡大していきたい意向だ。
このほか、現場で働く人の生の声を吸い上げ、物流課題の抽出と解決に取り組む。同時に、ホワイト物流の自主行動宣言で挙げる内容などで、改善が必要な取り組みや未着手の取り組みを進めていく。
物流部の末弘晴男部長は「第一線で働くドライバーや作業員は常に危険にさらされている。そうした人が、けが無く健康に働ける取り組みを、三井化学、顧客、物流が一体となって進めなければならない。また、物流従事者の作業を『見せる化』することが必要。もっと世間に知ってもらうべきだ」と指摘する。
▼三井化学 1997年に三井石油化学工業と三井東圧化学が合併して誕生。自動車やヘルスケア、食品パッケージなど幅広い化学品を取り扱う。国内の生産拠点は全国6カ所で、各工場に物流グループを配置している。2020年3月期の連結売上高は1兆3390億円。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)