物流ニッポン – 全国の物流情報が集まるポータルサイト

ホワイト物流 賛同の輪(16)/TOTO、出荷貨物をパレット化 積み込み3時間→20分

荷主

2020/10/02 0:00

トイレなどの衛生陶器で国内最大手のTOTOは、物流本部が中心となり、出荷貨物のパレット化や運送事業者と連携した改善活動、待機時間の削減などに取り組んでいる。トラックドライバー不足が深刻化する中、持続可能な物流の実現に向け「ホワイト物流」推進運動に賛同。コンプライアンス(法令順守)や負担軽減を後押しすることで、物流事業者とのパートナーシップを強め、未来志向の改善を進めていく。(高松美希) 【写真=物流事業者とのパートナーシップを強め、未来志向の改善を推進(本社=TOTO提供)】

 国内の物流体制は、物流部の中に7部署105人が所属しており、このうち共同物流などの施策の優先度を上げて重要なテーマに位置付け、2019年4月に安全輸送プロジェクトチームを設置。通常、企画管理やオペレーション管理などを3PL(サードパーティー・ロジスティクス)事業者に全て委託するケースが多いが、化学品という扱いの難しい荷物特性から、事業者と一緒になって進めているのが同社の特徴だ。
 ホワイト物流推進運動の自主行動宣言は、19年6月に提出。同社物流部が以前から「物流会社から選ばれる荷主でないと製品を運ぶことができない」という危機感を持って経営者層に物流の事情を説明していたこともあって、スムーズに宣言できたという。
 取り組み項目の一つに、予約受け付けシステムの導入を挙げる。宣言以前から、トラックの待機時間削減に向け、対象の工場を限定しながら検証を推進。システムの効果確認とノウハウを蓄積しつつ、要件定義や運用ルールを設定するなど、試行錯誤を重ねている。
 19年初頭からローリー車両を対象に実証を開始。いかにして工場に適用していくか検討する一方、入場するトラックのナンバーが決まるのが1、2時間前と直前すぎて活用しづらいといったことが大きな課題という。現在は3カ所の工場で検証中で、来年4月以降にシステム選定などを具体化させる意向だ。
 同社は、同業他社や運送会社と共に、16年から共同配送を推進。輸送業務は化学品輸送で実績があり、東北地方のネットワークを有するサンネット物流(山部雅春社長、千葉県市原市)が担う。荷主企業は三井化学を含めて現在9社。直近では、DICの塗料製品と住友化学の樹脂製品の取り扱いを開始し、荷主企業及び取扱品目の幅を広げている。
 今後は京浜地区の企業との共同配送を検討。ミルクラン方式で京浜地区の小口貨物を集荷し、サンネット物流の本社で積み替えて東北向けに配送する案を模索している。また、京浜、京葉から東北向けの輸送に利便性の高い埼玉県で、ストックポイントを設置する案も出ている。こうした取り組みを通じて、出荷先エリアや荷主企業を拡大していきたい意向だ。
 このほか、現場で働く人の生の声を吸い上げ、物流課題の抽出と解決に取り組む。同時に、ホワイト物流の自主行動宣言で挙げる内容などで、改善が必要な取り組みや未着手の取り組みを進めていく。
 物流部の末弘晴男部長は「第一線で働くドライバーや作業員は常に危険にさらされている。そうした人が、けが無く健康に働ける取り組みを、三井化学、顧客、物流が一体となって進めなければならない。また、物流従事者の作業を『見せる化』することが必要。もっと世間に知ってもらうべきだ」と指摘する。


 ▼三井化学 1997年に三井石油化学工業と三井東圧化学が合併して誕生。自動車やヘルスケア、食品パッケージなど幅広い化学品を取り扱う。国内の生産拠点は全国6カ所で、各工場に物流グループを配置している。2020年3月期の連結売上高は1兆3390億円。


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)





本紙ピックアップ

公取委と中企庁、研究会発足

 公正取引委員会と中小企業庁は、サプライチェーン(SC、供給網)全体での適切な価格転嫁の取引環境実現に向けた官民の検討を開始した。現状の買いたたき規制の執行強化に加え、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を視野に、「…

北海道半導体人材育成推進協、物流課題調査へ検討会

 北海道で半導体関連産業の基盤強化を目指す「北海道半導体人材育成等推進協議会」は、関連する物流課題を調査するとともに、専門の検討会を設ける。秋ごろをメドに初会合を開き、年度内に現状の課題と対応策を整理する。18日、札幌市…

ヤマトオートワークス、事業者の最適稼働に貢献

 ヤマトオートワークス(金井宏芳社長、東京都中央区)は「稼働を止めない」を掲げ、物流・運送事業者のアセットの最適稼働に貢献している。整備計画や実績はデジタルデータで顧客と共有し、営業担当が顧客を月1回訪問して掛かったコス…

北陸道開通後/NEXCO調べ、農水産品の輸送量8倍

 中日本高速道路と東日本高速道路のNEXCO2社が19日発表した北陸自動車道に関する調査によると、部分開通された1972年から50年で、北陸から全国に向けた農水産品の輸送量が8倍に増えたことが分かった。新潟、富山、石川、…

オススメ記事

外国人労働者雇用、「社会全体の適応」重要

 人手不足を背景に、外国人労働者の採用が増えている。永住権のある外国人の採用をはじめとした従来の雇用の枠組みに加え、外国人在留資格の「特定技能制度」に自動車運送業が追加されるなど、様々な背景の外国人労働者が活躍できるよう…

公取委と中企庁、研究会発足

 公正取引委員会と中小企業庁は、サプライチェーン(SC、供給網)全体での適切な価格転嫁の取引環境実現に向けた官民の検討を開始した。現状の買いたたき規制の執行強化に加え、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を視野に、「…

北海道半導体人材育成推進協、物流課題調査へ検討会

 北海道で半導体関連産業の基盤強化を目指す「北海道半導体人材育成等推進協議会」は、関連する物流課題を調査するとともに、専門の検討会を設ける。秋ごろをメドに初会合を開き、年度内に現状の課題と対応策を整理する。18日、札幌市…

ヤマトオートワークス、事業者の最適稼働に貢献

 ヤマトオートワークス(金井宏芳社長、東京都中央区)は「稼働を止めない」を掲げ、物流・運送事業者のアセットの最適稼働に貢献している。整備計画や実績はデジタルデータで顧客と共有し、営業担当が顧客を月1回訪問して掛かったコス…

Share via
Copy link
Powered by Social Snap