物流ニッポン – 全国の物流情報が集まるポータルサイト

ホワイト物流 賛同の輪(15)/霧島酒造、輸送距離短縮で負担減 全国に在庫型センター

荷主

2020/09/11 0:00

 焼酎の「黒霧島」で知られる酒類製造・販売の霧島酒造(江夏順行社長、宮崎県都城市)は、ビジネスパートナーである物流事業者に支持される荷主企業であり続けようと、ホワイト物流推進運動に賛同している。物流を担う人手が不足する中、全国各地への拠点設置による輸送距離の短縮や積み荷のパターン化による手荷役の廃止など、トラックドライバーや倉庫作業員の負担軽減を推進。社内の定期的な物流監査による事故予防策を検討するなど、日頃から物流品質の向上に努めている。(高松美希)

【写真=JRコンテナの「積荷レシピ」でオーバーハングを抑制】

 従来、都城市内の工場からトラックの特別積合せ便で全国に向けて輸送していたが、2004年から05年にかけて芋焼酎のブームが起こった際、宮崎県から全国各地へ輸送する際のリードタイムが課題となり、在庫型センター(DC)の設置の必要性に迫られた。
 04~15年に、首都圏や近畿、東北、札幌など8カ所にDCを次々と開設。更に、本社での製品物流倉庫の再構築に伴い、17年に新たに通過型機能を備える都城ターミナルセンター(TC、都城市)を設置した。
 18年には淀ハブセンター(京都市伏見区)を設けるなど、現在は12カ所にセンターを持ち、本社工場からセンターまではJRコンテナや海上コンテナ、大型トラックで1次輸送を行い、センターから各地の卸店までは地域の協力事業者に2次輸送を依頼している。
 こうした輸送網を構築し、受注から配送までのリードタイム短縮を実現させるとともに、トラックドライバーによる長距離輸送の削減にもつなげた。最もリードタイムの長い北海道エリアへの納品は、中3日から中1日に短縮し、配送コストを3分の1にした。

 積み荷「レシピ」策定

 人手不足の中、物流の効率化に向けた様々な取り組みを推進。JRコンテナの空スペースを活用した小ロット製品の輸送、2種類の自動倉庫の運用、JRコンテナへの積み込み・荷下ろし時の手荷役作業の廃止、在庫補充計画に基づいた詰口作業(焼酎の瓶詰めなど)の効率化など試行錯誤を重ねている。
 同社では長さ1100㍉×幅900㍉のビールパレットを使用して本州向けの物量の半分をJRコンテナで運んでいるが、製品の特性上、製品がパレットからはみ出してしまうオーバーハングが課題だった。手作業によるバラ積みや隙間を空パレットで間詰めをして輸送することもあり、コンテナ輸送の4%は空パレットでの間詰めスペースがある状態で、トラック輸送でも同様の課題を抱えていた。
 更に、同社が主力とする1800㍉リットル1パック製品はパレット込みで750㌔グラム、8パレット積載で6㌧となり、最大積載重量5㌧も大きな壁だった。
 その対応策として、最大積載重量の範囲内で効率よく積載できる「積み荷パターンのレシピ」を策定。「オーバーハングありの製品」と「無しの製品」をうまく組み合わせ、JRコンテナ5パターン、トラック6パターンを用意した。あらかじめ作成したセンターごとの製品別在庫補充計画値を各パターンに振り分け、算出した最も効率的な輸送モード・台数に基づき配車・出荷指示を出すことで手荷役作業を廃止した。
 霧島ホールディングス(江夏順行社長、宮崎県都城市)では「引き続き、情報化とパレット化、トレーラ化、モーダルシフトの活用などの物流効率化をはじめ、社内の定期的な物流監査による事故防止対策、環境負荷の低減に向けた改善に努めていく」(同社企画室)としている。


 ▼霧島酒造 1916年から前身の「川東江夏商店」で本格焼酎の製造を開始。焼酎を中心にスピリッツ、クラフトビールなどを製造、販売し、レストラン事業も展開している。国内の生産拠点は5カ所、物流拠点は12カ所。従業員数は583人(2020年4月時点)で、19年3月期の売上高は625億3600万円。


トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)





本紙ピックアップ

公取委と中企庁、研究会発足

 公正取引委員会と中小企業庁は、サプライチェーン(SC、供給網)全体での適切な価格転嫁の取引環境実現に向けた官民の検討を開始した。現状の買いたたき規制の執行強化に加え、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を視野に、「…

北海道半導体人材育成推進協、物流課題調査へ検討会

 北海道で半導体関連産業の基盤強化を目指す「北海道半導体人材育成等推進協議会」は、関連する物流課題を調査するとともに、専門の検討会を設ける。秋ごろをメドに初会合を開き、年度内に現状の課題と対応策を整理する。18日、札幌市…

ヤマトオートワークス、事業者の最適稼働に貢献

 ヤマトオートワークス(金井宏芳社長、東京都中央区)は「稼働を止めない」を掲げ、物流・運送事業者のアセットの最適稼働に貢献している。整備計画や実績はデジタルデータで顧客と共有し、営業担当が顧客を月1回訪問して掛かったコス…

北陸道開通後/NEXCO調べ、農水産品の輸送量8倍

 中日本高速道路と東日本高速道路のNEXCO2社が19日発表した北陸自動車道に関する調査によると、部分開通された1972年から50年で、北陸から全国に向けた農水産品の輸送量が8倍に増えたことが分かった。新潟、富山、石川、…

オススメ記事

外国人労働者雇用、「社会全体の適応」重要

 人手不足を背景に、外国人労働者の採用が増えている。永住権のある外国人の採用をはじめとした従来の雇用の枠組みに加え、外国人在留資格の「特定技能制度」に自動車運送業が追加されるなど、様々な背景の外国人労働者が活躍できるよう…

公取委と中企庁、研究会発足

 公正取引委員会と中小企業庁は、サプライチェーン(SC、供給網)全体での適切な価格転嫁の取引環境実現に向けた官民の検討を開始した。現状の買いたたき規制の執行強化に加え、下請代金支払遅延等防止法(下請法)の改正を視野に、「…

北海道半導体人材育成推進協、物流課題調査へ検討会

 北海道で半導体関連産業の基盤強化を目指す「北海道半導体人材育成等推進協議会」は、関連する物流課題を調査するとともに、専門の検討会を設ける。秋ごろをメドに初会合を開き、年度内に現状の課題と対応策を整理する。18日、札幌市…

ヤマトオートワークス、事業者の最適稼働に貢献

 ヤマトオートワークス(金井宏芳社長、東京都中央区)は「稼働を止めない」を掲げ、物流・運送事業者のアセットの最適稼働に貢献している。整備計画や実績はデジタルデータで顧客と共有し、営業担当が顧客を月1回訪問して掛かったコス…

Share via
Copy link
Powered by Social Snap