ホワイト物流 賛同の輪(9)/よつば乳業、無人リフトが氷点下で稼働 脱「手積み・手下ろし」
荷主
2020/06/12 0:00
北海道の乳業大手、よつ葉乳業(有田真社長、札幌市中央区)は、道の地域特性である長距離輸送や、乳製品の手積み・手下ろしの多さといった物流課題の解決に向け、パレット化やロボット化を推進している。2018年10月、埼玉県加須市の物流センターを増築し、マイナス25度下でも稼働する無人フォークリフトを導入。異常気象時の計画運休や納品日の集約化など、荷主の立場から多角的に「ホワイト物流」を構築する。(土屋太朗)
【写真=ドライバーが休憩しやすい環境を整え(埼玉県加須市)】
同社は1967年に設立し、現在、道内では道東の音更町や釧路市、オホーツク海に面した紋別市や浜頓別町に工場を持つ。グループ会社のよつ葉物流(植田隆幸社長、音更町)は貨物利用運送事業を、とみん自動車運輸(宮部康士社長、埼玉県加須市)では一般貨物自動車運送事業を行う。
乳製品の工場は都心部から離れているため、広大な土地の道内でも更に輸送距離が長くなる。浜頓別町の工場からの出荷に関しては、旭川市の協力会社の車両が工場まで向かい、そこで積んだ製品を300㌔以上離れた苫小牧港まで運んでいる。併せて、片荷輸送も解決が難しい。
更に、製品の脱脂粉乳や全粉乳は1袋当たり25㌔になるため、荷役作業の負担も大きい。同社ではパレット化による荷役作業を進めているものの、全粉乳については、脱脂粉乳に比べ荷崩れしやすいため、パレット化になじまない面があるという。
こうした環境の中、よつ葉乳業は物流業界の働き方改革を後押しするため、よつ葉物流からの提案もあり、「ホワイト物流」推進運動に賛同。現場の環境改善に向け、自主行動宣言を提出した。
納品日集約を推進
具体策として、宣言にはパレットの活用に加え、既存施設への設備投資を盛り込んだ。実際に2018年10月、関東圏の物流拠点である加須物流センター(同市)の隣接地に新たな冷凍・冷蔵倉庫を建設。既存施設と合わせた延べ床面積は4800平方㍍と、従来比3倍に広がり、倉庫の収容能力も2300㌧と5倍に増えた。
20億円に及ぶ投資を通じ、ドライバーが休憩しやすい環境を整えるとともに、特に作業員の確保が難しい冷凍倉庫内の荷役作業に関しては、マイナス25度でも対応できる無人のフォークリフトを導入して省力化を実現。作業員が1階のエレベーターにパレットを載せるだけで、冷凍製品の管理を無人で行えるようにした。
また、近年問題になっている異常気象時のトラックの運行については、グループの連携を強めて無理な運送依頼を行わないよう徹底。効率化を図るための納品日の集約化も、運送事業者と互いに提案できる環境づくりを進めており、関東の一部エリアなどで取り組みが進んでいる。
併せて、パレットの積み付け方法の見直しや、粉乳などの製品重量の軽量化も、荷役作業の負担軽減に向け、重要な検討課題と位置付けている。同社では「メーカーが管轄する工場では自動化が進み、力作業を必要としていない半面、工場から先の物流ではそうなっていない」(管理統括部総務広報グループ)としており、更なる環境改善の必要性を示している。
▼よつ葉乳業 1967年、十勝管内の農業協同組合の出資により、北海道協同乳業として設立。バターや脱脂粉乳の製造を始め、69年には「よつ葉3.4牛乳」を発売した。86年、よつ葉乳業に社名変更。現在、道内では音更町、釧路市、紋別市、浜頓別町に工場を構えるほか、本州では千葉県でも製造している。2019年3月期の売上高は1080億円。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
※本紙2020年3月3日付掲載
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)