ホワイト物流 賛同の輪(6)/住友ゴム工業、時間指定で工場滞在時間半減 運送事業者と「対等に」
荷主
2020/06/02 0:00
住友ゴム工業では、トラックの荷待ち時間の削減に向け、入庫の時間指定を行ったり、バス・トラック用のタイヤの積み込み・積み下ろしにクランプリフトを採用したりして、ドライバーの負担軽減に努めている。従来、物流改善へ向けて自社と運送事業者とで対等に話し合う場を設けるなど、一体となった活動を進めてきた。ホワイト物流推進運動にも賛同し、自主行動宣言を提出している。(黒須晃)
【写真=効率化を図るため、バス・トラック用タイヤの積み込み、積み下ろしにはクランプリフトを利用】
2015年から物流改善への取り組みをスタートさせた。最も効果を上げたという時間指定は、あらかじめ入庫して欲しい時刻を運送事業者に知らせ、作業計画を提示するもの。それまで、荷物の積み込みは「早い者勝ち」の状況になっており、早朝からトラックが工場に来てしまい、長時間にわたる荷待ちが常態化していた。
また、工場内に倉庫が複数あるため、トラックが数カ所を行き来する必要があったことも、拘束時間を長引かせる要因になっていた。これを改善するため出荷計画を見直し、トラックが1カ所で積み込みを終えられるように荷物の配置変更を行った。
また、効率化を図るため、バス・トラック用タイヤの積み込み・積み下ろしにはクランプリフトを利用。以前は手積み・手下ろしが中心だったが、リフトを活用することで負担軽減につなげている。
このような取り組みが奏功し、かつて4、5時間だったトラックの工場滞在時間を2時間弱まで減らすことができた。
物流部門を担当するタイヤSCM本部の服部好則物流部長は「これらの取り組みを重ねてきたのは、持続可能な物流を実現するため。荷物の輸送をお願いしている運送事業者から、人手不足や長時間労働といった課題を耳にすることも多かった」と話す。
その上で、「ホワイト物流を可能にするには、荷主である当社と運送事業者が対等な立場で話し合うことから始めなければならない」と強調する。
同社では、物流事業者と話し合う場を定期的に設けて互いに意見を出し合い、一体となって改善につなげている。時間指定について提案した時には、一部の運送事業者から反発もあったが、納得するまで話し合った。「時に反発もあるものの、相手の意見に真摯(しんし)に向き合い、共存共栄の道を探っている」
服部氏は「物流の改善はエンドレス。乗用車用タイヤの場合、耐久性の問題などがあり、クランプリフトは利用できない。更なる効率化に向け、倉庫業者やマテハンメーカーと、乗用車用タイヤでもリフトを利用できる方法を模索している。今後の課題として、ピッキング管理にタブレット(多機能携帯端末)を活用するなど、事務作業におけるIT(情報技術)化を進めていきたい」と意欲を見せる。
ホワイト物流の自主行動宣言を行って以来、社内での物流に対する考え方は変わりつつあるという。「物流業界にとっての悩み事、課題は次々に出てくる。荷主として、運送事業者と話し合いを続けながら、物流の改善へ取り組んでいきたい」(服部氏)
▼住友ゴム工業 1909年創業のタイヤメーカー。「広く地域・社会に貢献し、期待され信頼されるグローバルな企業」を理念に、乗用車やトラック・バス用のタイヤを製造する。このほか、ゴム手袋、介護用品といった産業品事業、スポーツ事業も展開する。資本金は426億5800万円。従業員数は7175人(2018年12月末時点)。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。
運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
※本紙2019年11月19日付掲載
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)