ホワイト物流 賛同の輪(4)/岡山村田製作所、ハブ倉庫で物流効率化 「協力者との共栄」理念
荷主
2020/05/26 0:00
村田製作所グループの岡山村田製作所(唐木信太郎社長、岡山県瀬戸内市)は、国土交通省などが展開するホワイト物流推進運動の自主行動宣言を2019年4月に提出し、外部にハブ倉庫を確保することでトラックドライバーの待機時間を解消している。「協力者との共栄」がグループの経営理念で、今後も物流事業者とウィンウィンの関係を強化し、効率化を推進していく。(江藤和博)
【写真=瀬戸内市の本社構内は増産に合わせて新工場の建設が続く】
同社はスマートフォン(スマホ)や携帯電話基地局で必要なセラミック原料の電子部品が主力商品の一つ。全世界に製品を供給しており、次世代通信規格「5G」の普及に伴って出荷量は大幅に増加する見込みで、瀬戸内市内の本社では今も工場を増設中だ。
構内には着荷場があり、一時期は一日当たり30~35台のトラックが流入していたが、人の動線が入り乱れて危険な状態だった。また、着荷場と保管庫が離れており、作業効率も低下していた。
そこで、資材課が主体となり、18年に物流グランドデザインの策定に着手。瀬戸内市長船町にある協力物流会社の外部倉庫を賃借する契約を交わし、そこをハブ倉庫とする改善策を実行した。
ハブ倉庫は2階建てで、常温の1階は床面積2970平方㍍、定温の2階が1420平方㍍。岡山村田製作所の委託業務に従事する協力会社側のスタッフは6人で、工場で使う原材料は全てここに集約する。約5㌔メートル離れた本社工場に必要な分だけ定期便で届ける方式を採用し、現在は4㌧車を一日6回、10㌧車を3回運行している。
資材課の尾堂陽子チームリーダーは「これにより、本社構内の待機時間を解消できた。定期便以外の物流事業者の流入も基本的には無い。納品がかぶらないよう実績データを分析し、協力会社と密な調整をしている」と話す。
ハブ倉庫への納品もトラックの待機時間は大幅に短縮された。仮に待ち時間が発生しても駐車場があるため、安全確保は万全だ。
独自の取り組みとして行っているのが、パレットやカゴ台車の活用。岡山村田製作所が購入して協力会社に提供しており、バラの荷物は無くなった。また、クラウドサービスを利用した在庫管理の「見える化」を進める一方、スタッフが他業務をこなす多能工化も図り、残業時間は基本的に解消されている。
資材課の田中克幸・シニアマネージャーは「定例会を週1回開いて、現場の課題を吸い上げている。日頃の会話を重ねながら改善を続け、製品の安定供給につなげていきたい」と話す。
また、唐木社長は「トラックドライバーの不足は当然、理解している。一連の対策でストレスも大幅に軽減されたのではないか。協力者との共栄は村田製作所グループ全体の経営理念であり、今後も物流効率化を進めていきたい」と話している。
▼岡山村田製作所 1992年の創業で、村田製作所グループの中では若い会社。セラミック原料の電子部品のほか、インダクター、多層デバイス、樹脂多層基板「メトロサーク」などを製造する。ワークライフバランスの実現をサポートする職場づくりに取り組み、福利厚生の充実などにも力を入れる。社員数は2100人、派遣やパートが千人。村田製作所グループの連結売上高(2019年3月期は1兆5750億円)の占有率10%を目指す。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
※本紙2019年10月18日付掲載
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)