ホワイト物流 賛同の輪(1)/オルビス、宅配危機「荷主にも責任」 再配達減へ梱包小型化
荷主
2020/05/14 0:00
通信販売を主力とする大手化粧品メーカーのオルビス(小林琢磨社長、東京都品川区)は「荷主にも宅配クライシス(危機)の責任がある」として、国土交通省などが展開するホワイト物流推進運動にいち早く賛同した。物流の改善を社会課題として捉え、梱包を小型化し、自宅ポストに商品を投函するポストインや、宅配ボックスのモニター配布実験といった宅配の再配達削減への先駆的な取り組みを推進している。(田中信也)
【写真=従来は対象外だった高額商品もサイズが小型であればポストインの対象に拡大】
1987年の通信販売のスタート時から期日指定や、コンビニエンスストアでの受け取りなど、顧客のニーズに対応した様々なサービスを手掛けてきた。近年は、宅配ドライバーの労働条件改善の観点から再配達削減に向けた取り組みを進めている。 こうした中、ホワイト物流推進運動の制度がスタート。「宅配危機に対する荷主側の責任はあると考え、様々な取り組みを行っている中で、経営トップから『(運動への賛同を)検討しては』との指示があり、良い機会と思った」(小川洋之・SCM推進部部長)として、2019年5月15日に自主行動宣言を提出した。
推奨項目として5項目を挙げているが、中でも、「宅配便の再配達の削減への協力」として、宅配ボックスのモニター配布実験を8月から開始している。「SCM推進部内での企画提案のアイデアを実現」(丸山三千代SCM推進部ロジスティクス管理グループマネジャー)したもので、宅配ボックス製造・販売のナスタ(笹川順平社長、東京都港区)と協力してオリジナルの宅配ボックスを製作し、顧客から選ばれたモニター5千人に配布。11月ごろ、利用に関するアンケートをモニターに実施し、結果を踏まえてボックスの販売も視野に取り組みの継続・拡大を検討していく方針だ。加えて、自社のインターネット通販サイト・アプリを改良し、配達希望日・時間指定のメニューを追加することも検討している。
受け取り方法拡充
再配達削減に向けた取り組みでは、早くから梱包用の箱の小型化を推進。19年からメール便での直接投函を開始し、「ポストイン配送への協力」をホワイト物流での独自の取り組みに挙げている。17年7月の宅配料金改定で5千円未満の購入の送料が有料化したことを機に、従来は対象外だった高額商品も、サイズが小型であればポストインの対象とした。
「当社の顧客は仕事や子育てで忙しい女性が多く、不在、在宅に関わらず受け取り方法が増えることはサービスの一つと捉えている」(丸山氏)としており、今後もメニューの拡大に取り組む。
▼オルビス 1984年6月設立の通信販売を主な販売チャネルとする大手化粧品メーカー。87年5月から通信販売事業を開始し、2000年からは直営店舗での販売も展開。長らく配送料無料だったが、宅配料金の値上げを機に18年6月から注文金額3240円未満(税込み)は送料負担としている。資本金は1億1千万円。従業員数は1302人。18年12月期の連結売上高は510億円。
トラックドライバー不足に対応し、国民生活・産業活動に必要な物流を安定的に確保するためにスタートした「ホワイト物流推進運動」は、関係者が協力して改善を進めることでサプライチェーン(供給網)全体の生産性向上につながることが期待される。運動の理念に賛同し、自主行動宣言を提出した荷主企業の取り組みを紹介する。
※本紙2019年9月20日付掲載
(「ホワイト物流」推進運動の加速を後押しするため、全文掲載しています)