由良海運、セメント搬入機能強化 サイロ改装 圧送式パイプライン新設 東海地区で拡販狙う
物流企業
2019/05/10 0:00
由良海運(寺岡洋一社長、名古屋市港区)は、取り扱うセメントを輸入品から国産に切り替えるため、名古屋港西三区の由良埠頭(愛知県弥富市)に所有するセメントサイロを改装し、搬入機能を強化している。化学品大手のトクヤマが由良埠頭(ふとう)事務所内にセメント基地の名古屋サービスステーション(SS)を開設。今後は、由良海運グループでセメントの仕入れと販売を担当するシースリー(大江康夫社長、名古屋市港区)、トーヨーテクノ(同)とともに、名古屋駅前の再開発やリニア中央新幹線の工事需要が旺盛な名古屋を中心に、愛知、岐阜、三重の東海地区への拡販を狙う。(梅本誠治) 由良海運では、トクヤマの名古屋SSを迎えるにあたり、船から1万トン保管可能なサイロへ効率的にセメントを下ろすため、1時間に900トン搬送できる圧送式パイプラインを新設するなど7千万円を掛け、3月に施設を改造。4月26日にはSS開設に合わせて、セメント積載船の設備やセメントを実際に搬入する様子を公開する現地見学会を開き、多くの関係者を迎えた。 国内のセメント需要350万トンのうち7%を扱うトクヤマは、全国5地区で28カ所のSSを保有。セメント事業を始めて今年で81年目に入る。国内セメント需要は東海以東で利用量が多い「東高西低」となっており、今回開設した29カ所目の名古屋SSは中国地方を地盤に西日本で営業力を持つ同社にとって、特に伸び率の高い地域への念願の初進出となる。 この日、ゼネコン関係者などを招いた名古屋SS開設記念パーティーで、トクヤマの横田浩社長は「化学品製造の副産物として生産を始めたセメントは、再生利用ができる循環ビジネスのゼロエミッションに大切な産物であり、当社にとって化学品を含めたネットワークの健全さを示す重要なポジションと位置付けている」と強調。 その上で、「由良海運さんのステーションを使わせてもらえるこの機会に、当地の商売を本格化させていくので、皆さんの力添えと支援をお願いしたい」と述べた。 由良海運の寺岡社長は「100年以上の歴史を持つ名門企業のトクヤマさんは、様々なところで名前を聞く長年憧れた会社。素晴らしい縁をもらって、ともに事業を行えることを誇りに思う。由良グループの総力を結集してセメント販売を促進するので、ここに集まった方々とウィンウィンの関係になることを期待している」と強調。 ゼネコンを代表してあいさつした五洋建設の清水琢三社長も「少しでも多くトクヤマさんのセメントを利用することが、我々の使命と考えている。この機に、東海地区の土木、建設事業を一層盛り上げていきたい」と祝辞を述べた。 由良海運が名古屋港で保有する私設バースは、岸壁が全長250メートルで、敷地面積は4万9500平方メートル。1982年の開設後、当初は愛知県瀬戸市の窯業原料やガラスの原材料となる珪砂(けいしゃ)の内航船運搬をスタートさせた。2018年の受け入れ船舶は1カ月平均12隻。今後は、トクヤマが1万トンのセメントを月2便で搬入し、まずは年間12万トンの出荷を目標に掲げている。 【写真=セメントをサイロへ積み降ろす現場見学会を実施】