国交省/共同物流研究会、「荷主側の認識」提示 規格統一 国の支援必要 環境負荷低減の意義を指摘
行政
2019/02/19 0:00
国土交通省は、共同輸送など荷主間の連携による効率化の促進に向け、各社が保有するデータのオープン化や、コスト削減目標の設定が重要との見地から、これらを実現する新技術の導入補助、パレット・伝票などの規格統一に向け、国による支援を必要とする荷主側の認識を提示した。(田中信也) 13日の「共同物流等の促進に向けた研究会」(矢野裕児座長、流通経済大学教授)の会合で、加工食品や日用品などのメーカー、商社、物流子会社など10事業者を対象に行ったヒアリング結果を報告した。 報告によると、2011年の東日本大震災などによって表面化したドライバー不足をきっかけに、共同物流の取り組みを始めた企業が多数。特に、荷主企業の物流部門や物流子会社が集まって検討を進めてきたケースが多い。苦労した点としては、荷役の範囲などドライバーの業務の条件統一に調整を要すること、事業者によって「コストか労働者不足対策か」など重視するポイントが異なることなどが挙げられた。 また、製造、配送、販売各社の慣習の違いが障壁となったり、短期的に物流コストが上昇するといった課題があるものの、長期的にみて「商品を運べなくなるデメリットは大きい」として、今後更なる困難が予測される車両確保への対策、環境負荷低減に意義があると指摘。中継輸送に加え、発着地での2社の拠点間輸送を組み合わせることで、コストを25%、二酸化炭素(CO2)排出量を27.5%それぞれ削減した事例を紹介した。 このほか、災害時のBCP(事業継続計画)対策として、モーダルシフトや輸送モードの多様化が有効であることも強調。 今後必要な取り組みとして「翌日から翌々日への配送の変更」「車両や輸送量の平準化」「これまで当たり前だった検品などの工程の廃止(検品レス)」などが挙がった。半面、アパレルメーカーからは「アパレルはリードタイムが競争の源泉で、業者間の連携や共同輸配送は考えられない」との指摘もあった。 更に、実現に向けて「共同輸送イコールコスト削減」という固定観念、モーダルシフトを進める上での鉄道・海運のキャパシティー(収容能力)の限界、検品レスや翌々日配送への対応がシステム上困難――といったことが障壁になっていると指摘。共同物流を進めるため、経営トップの関与、各社の保有データのオープン化が重要と訴えた。 課題解決には、自社内で物流への意識を高めることはもちろん、①コストが高い新技術導入に対する補助②パレットや伝票、バース予約、バーコードなど業界全体でのシステムの統一③共通データ基盤の構築④異業種による物流手順の共通化――といった国の後押しの必要性に言及している。 会合では、荷主企業などによるプレゼンテーションが行われ、キユーピーが翌々日配送の試行を実施し、更なる拡大を検討していることを紹介。また、日本パレットレンタル(加納尚美社長、東京都千代田区)が移動データ管理システムを活用した共同輸送マッチングの構想を、全国物流ネットワーク協会(森日出男会長)はダブル連結トラックを活用した共同輸送の計画を、それぞれ説明した。 今後、中小・地場のトラック事業者を対象にヒアリングを行い、次回会合で結果を集約。6月をメドに取りまとめを行う予定だ。 【写真=共同物流等の促進に向けた研究会で荷主へのヒアリング結果を報告】