北陸豪雪1年、チェーン規制の有効性は スタッドレスで十分? 物流事業者に広がる波紋
行政
2019/01/24 0:00
2018年2月6日、福井県内の国道8号でトラックと乗用車1500台が長時間立ち往生し、物流が大きな影響を受けた記録的豪雪から、もうすぐ1年になる。各県の自治体やトラック協会が雪道対策を強化する一方、国土交通省はタイヤチェーン規制を打ち出し、昨年末には北陸を含む全国13区間の規制エリアを公表した。大混乱を未然に防ぐため、チェーン規制は本当に有効なのか――。トラック事業者の体験談と意見を交えて考える。(星野誠) 2月6日未明、祇王運送(福井市)の伊藤多津男社長(44)はツイッターで異変を知る。「坂井市丸岡町の国道8号で、トレーラが脱輪しているとの情報が入った。とても嫌な予感がした」。そして午前7時、新潟方面に向かっていた北陸トラック運送(同市)の水島正芳社長(47)は「丸岡町の高架上で、車列が完全に動かなくなった。交差点までは距離があり、Uターンも不可能だった」ため、午前0時までの17時間にわたり、乗用車に閉じ込められた。 自社ドライバーからのSOSで現場に駆けつけ、自ら進んで「身代わり」となった経営者もいる。春江貨物(坂井市)の後藤隆一社長(51)は「本社から距離4キロの場所で当社の2トン車が立ち往生していた。『俺が代わるから』とドライバーを帰らせ、自衛隊の復旧作業が終わるまで丸2日間車内にいた。本社スタッフは雪かきなどで忙しく、交代を頼むつもりは無かった。携帯電話で仕事はできるので、覚悟を決めた」と振り返る。 あれから間もなく1年――。大混乱を教訓に、北陸各県の自治体では除雪体制の見直し・強化を図り、大雪に備えている。また、福井県トラック協会(清水則明会長)も、ラジオで雪道情報を発信するなどの注意喚起を行っている。 こうした中、国交省の打ち出したタイヤチェーン規制が、物流事業者に波紋を広げた。北陸エリアでは、直轄国道が福井県あわら市の国道8号、高速道路は北陸自動車道の石川県―福井県、福井県―滋賀県で、それぞれチェーン規制区間が設定されているが、「規制区間では非装着車両を一斉に取り締まるのか」「スタッドレスタイヤでもチェーンが必要なのか」など、懸念する声が一気に噴出した。 【写真=国道8号で立ち往生する車両(18年2月6日、水島正芳氏撮影)】