北海道の港湾、物流拠点へ期待高まる 荷役効率化など推進 釧路港は大型船も満載で入港可能
行政
2019/01/10 0:00
【北海道】北海道の各港湾に物流拠点として期待が高まっている。釧路港は2018年11月、国際戦略バルク港湾としてのターミナルが全国で初めて完成。将来的な飼料原料の取扱量増加に向け、企業は投資を加速させる。また、苫小牧港では19年3月にも、20~30年後を見据えた同港の長期構想がまとまる。ドライバー不足に対応するため、情報の一元化や自動化を推進。併せて、ターミナルや大型冷蔵倉庫の整備を通じ、道内を支える「食」の輸出拠点としての機能を強めていく。(土屋太朗、岡杏奈、那須野ゆみ) 釧路港の背後圏は全国有数の酪農地帯で、主な飼料原料のトウモロコシは北米から輸入。しかし、近年は船舶の大型化が進み、飼料原料を満載した状態で入港することができず、非効率な輸送体勢となっていた。 同港で完成した国際物流ターミナルは水深14メートル、延長300メートルで、貨物を満載した状態での大型船の入港が可能となった。輸送効率化が見込めるのに加えて物流コストが下がり、生産者の競争力強化につながる。 これに対応するため、地元企業は投資を活性化させる。港湾荷役を手掛ける三ッ輪運輸(栗林定正社長、北海道釧路市)は4月をメドに、飼料工場へ供給するためのサイロを17基(貯蔵量1万2千トン)増設。投資額は30億円で、既存サイロや倉庫を含めた全体の貯蔵量は17万1千トンに高まる。 大手飼料メーカーの中部飼料は、6月にも新たな飼料工場を稼働させる。63億円を充て、生産量は1カ月当たり2万トンに上る。 新ターミナルでは、飼料工場までの荷役作業についても効率化を実現。貨物を陸揚げする荷役機械「アンローダー」の処理能力を1時間当たり800トンと従来比2倍に引き上げたほか、陸揚げ後の穀物を直接サイロに送るベルトコンベヤーも設置した。 三ッ輪運輸の遠藤浩昭取締役(57)は「ターミナルの完成で利便性が高まった。体制は整ったので、いかに釧路港を利用してもらえるか、重要なのはこれからになる」と強調。将来的な取り扱い貨物の増加に期待を寄せた上で、更なる設備投資について「今後の動向をみながら、情勢に応じて視野に入れなければならない」と語る。 飼料工場から生産者への輸送を行う物流事業者の期待も大きい。釧路市や苫小牧市に営業所を持つ幸和運輸(小樽市)の横川幸和社長(47)は「中部飼料の工場の稼働を見据え、ハード・ソフト両面で体制を整えている」と説明。人員と車両を増やしているのに加え、同工場の近くに9900平方メートルほどの土地を取得した。 また、三ッ輪物流(釧路市)の工藤誠一社長(67)は「釧路港が国際バルク戦略港湾との位置付けで整備されたのは大変意義深い。国内有数の酪農地帯となっている道東地区は都市間距離が長いため、今後の課題としてインランドデポと道路環境の整備が急務だ。根室から釧路までの距離は100キロもあり、高速道路の建設を強く望みたい」と指摘。その上で「物流事業者としては、輸入貨物の種類や量に応じた車両の導入を進め、効率化を図っていく」と話す。 【写真=釧路港では穀物の取扱量増加に期待が高まる】