大王運輸、個人むけ宅配スタート 4月 食品など2000アイテム 利便性向上 電話注文にも対応
物流企業
2019/01/03 0:00
【三重】大王運輸(天白拓治社長、三重県明和町)は2019年4月から、個人向け宅配を行う新事業「おとどけ王子」をスタートさせる。全国農業協同組合連合会(JA)の関連団体の事業を引き継ぎ、独自のブランド化を図りながらサービス内容を大きく向上させるもので、「物流企業が運営するショッピングモール」(天白社長)を目指す。将来的には、独立事業として分社化することも視野に入れる。(星野誠)
JA関連団体の日本文化厚生農業協同組合連合会(文化連)は、三重県全域と愛知県の一部を対象に、組合員向けの共同購入・宅配事業を行ってきた。大王運輸では00年から、同事業における在庫管理、仕分け、配送業務を受託してきたが、文化連がコスト削減のため事業からの撤退を決定。大王運輸が丸ごと事業を引き継ぎ、自社で運営することになった。
天白社長は「農家を中心に3700人の顧客がいて、買い物に行くのが難しい高齢者も多い。『宅配を続けて欲しい』との声が多く寄せられたため、我が社でやることを決めた。これまでは色々な制約も多かったが、今後は自由に出来る。中間コストも掛からなくなるので、確実に収益も上がる」と話す。
冷凍の肉や魚、野菜・果物などの生鮮食品、加工食品、調味料に加え、洗剤やシャンプーといった日用品など、商品2千アイテムを顧客3700人に届ける。更に、クリスマスケーキなどの季節商品も取り扱うが、天白氏は「スタッフの仕事はこれまでと変わらないので、現場は全く問題ない。大事なのは、我が社独自の付加価値を足した上で、どう発展させていくかだ」と強調。
商品の注文方法も、より顧客ニーズに応える形にする。これまで、顧客が手書きした注文書を配達時にドライバーが回収する方法を取っていた。そのため、急な注文には対応できなかったが、大王運輸では電話での注文も受け付け、顧客の利便性を向上させる。
スマートフォン(スマホ)などデジタル通信機器での注文が一般的になった現在、電話注文でも古く感じられるが、「通販大手とは違う。スマホやパソコンを使えない高齢者も多いので、注文書や電話のアナログ方式を大切にしたい。また、ドライバーの定期訪問を生かし、見守りサービスなどの提供も可能になる」と天白氏は強調する。
新事業の名前は「おとどけ王子」。社名の「大王」の子供なので王子だ。親しみやすいロゴマークも作り、ブランド化を進めていく。文化連の宅配事業は「しんよやく」の名称だが、なじんでいる利用者が多いのでそのまま残しつつ、「おとどけ王子」を全面に押し出し、新規顧客の獲得を狙う。
大王運輸は14年4月、地産地消ネットワーク「たべねっとみえ」をスタートさせた。ルート配送のトラックが生産者から集荷し、保管、物流加工、輸送、販売管理までをワンストップで行う取り組みで、同様の事業を手掛ける神姫バス(兵庫県姫路市)とも提携し、双方の産品交流を進めている。
これまで、たべねっとの販売網は県内スーパーマーケットの専用コーナーに限られていたが、新事業では大王運輸が自由に商品を決められるため、今後は宅配で売ることもできる。神姫バスが提供する丹波栗や黒豆など兵庫県の特産品も加えれば、商品ラインナップは更に充実する。
天白氏は「たべねっとの販売チャンネルが増えることはもちろん、あらゆる意味で我が社の可能性が大きく広がる。問屋を1軒丸ごと買ったようなものだが、我々が持つノウハウを生かし、顧客本位のショッピングモールを目指したい」と意気込む。
【写真=親しみやすいロゴマークを作り、ブランド化を進める】