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改正貨物事業法 参院国交委が承認 標準貨物など「恒久化も」

行政

2018/12/10 0:00

 参院国土交通委員会(羽田雄一郎委員長)は6日、貨物自動車運送事業法改正案を審議し、全会一致で承認した。荷主対策の深度化として、国土交通、農林水産、経済産業、厚生労働の各大臣の協力による働き掛けや標準的な運賃の告示は、2024年4月に始まる自動車運送業務への時間外労働上限規制適用までの時限措置として規定するが、同委の審議の中で「延長もあり得る」との見解が示され、恒久化される可能性が出てきた。(田中信也)  事業法改正案は4日、衆院国交委員会(谷公一委員長)で委員長提案として起案、審議の上、承認。同日の本会議で可決され、衆院を通過した。改正案の最大の目玉である「違反原因行為への対処」「標準的な運賃」は、23年度末までの時限措置として付則に盛り込まれる。  違反原因行為への対処では、トラック事業者の違反となる行為をさせている疑いのある荷主の情報を、国交相が関係行政機関の長(農水、経産、厚労の各大臣)と共有。荷主に対する要請・勧告などの働き掛けや荷主名の公表、独占禁止法違反の疑いがある場合は公正取引委員会への通知などが行えるようにする。  対象となる違反行為は政令で定めるが、6日の参院国交委での審議で、提案者の一人である盛山正仁衆院議員(自民、兵庫1区)が過労運転や過積載、最高速度違反を招く事例として①荷主の都合で長時間の荷待ちが恒常的に発生②積み込み直前に貨物量を増やすよう指示③適切な運行では間に合わないような到着時刻指示――を挙げている。  一方、標準的運賃については、ドライバーの労働条件改善、事業者の健全経営が図れる「適正原価、適正利潤」を基準とした標準的な運賃を国交相が告示し、運輸審議会への諮問を経て設定できる、としている。  衆参の国交委では、実際に基準運賃を告示することとなる国交省の対応を問う声が上がった。奥田哲也自動車局長は「ドライバーの労働条件改善、健全な事業経営が可能な適正利潤を得られるといった法の趣旨を踏まえて対応していく」と答えた。  また、参院国交委で山添拓委員(共産、東京)が、関係大臣の協力による荷主への働き掛けと標準的運賃について「時間外上限規制の猶予期間後も適用を検討すべき」と提案。これに対し、盛山氏は「(時限措置の)期日までにしっかり対応するのが前提」としつつも、トラック事業者と荷主の取引実態や、ドライバーの労働条件改善の状況などを踏まえ「上限規制適用後も、必要性があれば延長もあ り得る」と見解を述べた。  改正案では恒久的な措置として、健康保険加入に対する改善命令や車庫の整備・管理の明確化などを規定する「事業の的確な遂行に関する順守義務」を新設。また、悪質事業者の排除に向け、行政処分による事業廃止後の欠格期間について、現行の2年から5年に延長するとともに、処分逃れのために自主廃業を行った者や親会社といった密接な関係者の参入制限、休廃業の事前届出制などを規定する。更に、荷主対策の深度化として、勧告を受けた事業者の公表制度の法的位置付けなどを講じる。  悪質事業者排除の実効性の担保に関し、提案者の津村啓介衆院議員(国民民主、比例中国)は、処分逃れを許さない改正案の効果を強調。その上で「これで終わりではない。事業者を守るよう国交省に働きかけるとともに、我々(政治家)も後押ししていく必要がある」と力を込めた。  荷主に加え、国民の理解も重要との指摘に対しては「一般消費財の最終ユーザーで、宅配便の利用者である国民の理解は不可欠。新たにスタートする『ホワイト物流推進運動』などを通じ、日本経済・国民生活を支える物流の重要性を周知する」(盛山氏)とした。 【写真=衆参の国交委で全会一致で承認(6日の参院国交委)】





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