改正省エネ法、達成度に応じクラス分け 「低い場合指導」検討 大手荷主など対象 単独制御困難 指針必要
行政
2018/12/06 0:00
資源エネルギー庁は11月29日、改正省エネ法でエネルギー使用量の定期報告が義務付けられている大手など「特定荷主」を達成度に応じてクラス分けし、達成度が低い場合は指導を行う方策の検討に着手した。再配達削減を荷主の責務として明記し、トラック運送事業者の働き方改革にも寄与する同法の実効性を高めるのが狙い。ただ、荷主は貨物輸送にかかるエネルギー量を単独でコントロールできる範囲が限られており、達成度の判断は難しい。(辻本亮平) 同日、荷主判断基準ワーキンググループ(WG、矢野裕児座長、流通経済大学教授)で、検討方針のたたき台を示した。 省エネへの取り組みの達成度によって事業者をクラス分けする仕組みは、既に工場などを対象とした規制で、2016年度に導入されている。これを荷主が対象の規制でも導入したい考え。工場版では、低クラスに分類された事業者がその後、省エネへの取り組みを強化する傾向がみられた。 特定荷主には、貨物輸送に関わる発注量が年間3千万トンキロ以上の事業者が該当する。たたき台では、特定荷主を省エネの達成度に応じてS(優良)、A(一般的)、B(停滞)、C(注意を要する)の各クラスに分類。改正省エネ法で定められている努力目標が未達成で、かつ2年連続でエネルギー消費が前年度比プラスとなっている事業者などをBクラスとする。Bクラスの事業者には文書で注意喚起した後、現地調査を重点的に実施する。 Cクラスには、Bクラスの中でも特に、改正省エネ法で求められる省エネへの取り組み事項を実施できていない事業者が該当。省エネ法に基づく指導を行い、取り組みを促進する。 Sクラスの要件は、工場版では努力目標を達成していること。しかし、エネルギー消費の大部分を占める貨物輸送の分野は、荷主単独でのコントロールが難しい場合が多いため、新たな指標を設けることが必要となる。 この新たな指標に関して、WGでは委員から「運送事業者を含む労働時間の削減など、労働生産性と関連付けてはどうか」といった提案が出た。一方、矢野座長は「改正省エネ法の主眼は、あくまでグリーン物流の促進。労働生産性に関しての記載を何らかの形で盛り込むことはあるかも知れないが、指標とする考えは現時点では無い」と述べた。 加えて課題となるのは、エネルギー消費量の算定方式。17年度時点で6割の事業者がトンキロ法を採用しているが、より省エネの達成度を判断しやすい方式に移行させることが求められる。その際は、運送事業者の協力も必要となる。 また、同日、省エネ法の改正に伴い創設する「準荷主」を対象とする、省エネに向けて取り組むべき方策を示すガイドライン案を報告。リードタイムと発注頻度・ロットの見直し、大型トラックやトレーラの受け入れ態勢と予約受け付けシステムの整備などを例示した。併せて、業態の特性に応じた柔軟な取り組みを可能とするため、技術的・経済的に可能な範囲で行うよう明記した。12月の適用に向け、WGでは同ガイドライン案を大筋で了承した。 【写真=12月の適用に向け、WGでは同ガイドライン案を大筋で了承】