貨物事業法改正案、衆院国交委に提出へ 自公承認し野党も大筋合意 会期中の可決「不透明」
行政
2018/12/03 0:00
貨物自動車運送事業法の改正案を臨時国会に提出へ――。自民、公明の両党は、違反の原因となっている疑いのある荷主への国土交通、農林水産、経済産業、厚生労働の各大臣による働き掛けや、標準的な運賃の告示を2023年度末までの時限措置として新たに規定することなどを盛り込んだ法案の要綱を11月30日までに承認した。野党側とも大筋で合意しており、12月4日の衆院国土交通委員会(谷公一委員長)で、委員長提案として審議、採決される見通し。ただ、会期中の可決、成立はいまだ流動的な情勢だ。(田中信也) トラックドライバーの労働条件改善を目的に、全日本トラック協会(坂本克己会長)が議員立法での実現を模索してきた貨物自動車運送事業法の改正は、11月22日に自民、公明両党の国交部会で概要ベースで了承された。 その後、野党との調整に入り、28日までに立憲民主など野党と大筋合意。更に、28日に自民、29日には公明の国交部会で法案審議が行われ、要綱案を承認。衆院国交委が11月30日の理事会で審議、採決を行う方針を決めた。 改正案では、23年度末までの時限措置として「違反原因行為への対処」「標準的な運賃」を付則に盛り込む。 違反原因行為への対処では、荷主が、トラック事業者の違反の原因となる行為をさせている疑いがある場合、当該荷主の情報を国交相が関係行政機関の長(農水、経産、厚労の各大臣)と共有するとともに、荷主への働き掛けを実施。疑いが立証された場合、国交相が各大臣と連携して荷主へ要請を行い、それでも改善されないケースでは、関係省協力の下、荷主への要請、勧告、荷主名の公表などを行う。荷主の行為に独占禁止法違反の疑いがある時は、公正取引委員会にも通知できるようにする。 標準的な運賃では、ドライバーの労働条件を改善するとともに、一般貨物自動車運送事業者の健全経営ができる「適正原価、適正利潤」を基準とした標準的な運賃を定めることを規定。設定に当たっては、国交相が直ちに告示し、運輸審議会に諮る、としている。 また、恒久的な措置として「事業の的確な遂行」を新設し、車庫の整備・管理の明確化、健康保険加入の順守義務と改善命令を規定。更に、「荷主の配慮義務」を新たに設けるとともに、荷主勧告制度を強化するため、軽貨物事業者を対象に追加したり、勧告を受けた事業者の公表制度を法的に位置付けたりする。 このほか、参入規制の厳格化などに向け、行政処分による事業廃止後の欠格期間の延長(現行2年から5年)に加え、休廃業の手続きの事後届出制から事前届出制への移行、事業継続に必要な許可基準(保有車両数・車庫の規模、事業用資金など)といった順守事項をそれぞれ明確化する。 法案は、4日の衆院国交委に委員長提案として起案される見通し。しかし、臨時国会は10日の会期末まで1週間しか残されておらず、成立は微妙な情勢だ。 【写真=自民、公明の国交部会で要綱案を承認(28日の自民国交部会)】