PwCジャパン、一帯一路取り巻く状況解説 「大規模物流網」構築へ リスク認識がカギ
産業
2018/11/29 0:00
中国が提唱する広域経済構想「一帯一路」により、今後5年で大規模な物流ルートが構築され、関係国間の貿易が興隆し、日本企業の物流施設や道路などのインフラ輸出が進む――。PwCJapanグループ(木村浩一郎グループ代表、東京都千代田区)が21日開いたメディア向けの解説セミナーで、PwC中国の一帯一路事業リーダーの黄耀和氏と、税務・アドバイザリーサービス担当の李子聡氏が、日本企業を取り巻く状況を解説した。(田中信也) 一帯一路の関係国の44億人と、21兆米ドルの総GDP(国内総生産)の「物理的連結」により「今後5年間で大きな投資が生まれる」(黄氏)と指摘。南北の二つの鉄道、東西の複数の高速道路の整備で「大規模な物流ルートが整備され、化石燃料の新たなルートが形成される」と言及した。 また、2011年の重慶―独デュイスブルクからスタートした中国―欧州の鉄道ネットワークは「これまでに1万便の運行実績がある」と説明。重慶や西安、武漢、成都といった中国西部から欧州への鉄道ルートは「日本にとっても貿易強化につながる」と強調した。 更に、過去10年間に日本企業は、東南アジアでのエネルギー、インフラ、物流の各分野での市場協力で「高い存在感を示してきた」(李氏)と評価。物流分野での具体例として、タイ・メコン地域でのロジスティクス機能強化のための地域統括組織の開設、シンガポールへの南アジア・オセアニア地域の統括会社設立、タイへのコンテナバージ専用ターミナル運営会社の設立などを挙げた。 一方、「一帯一路にはリスクもある」として、プロジェクト実施中の政権交代などの地政学的リスクや、返済期間の長期化といった資金調達リスク、多くの供給者、建設業者が関与することによる運営の脆弱(ぜいじゃく)性などを指摘。「リスクは必ず生じることを認識し、それを踏まえた運営に努めていくことがカギ」とした。 【写真=PwC中国の黄、李の両氏が日本企業を取り巻く状況を説明】