厚労省/パワハラ防止措置義務化、就業規則に処分明記 次期国会で法案提出へ 加害・被害者 個人情報保護も盛り込み
行政
2018/11/29 0:00
厚生労働省は19日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会で、経営者のパワーハラスメント(パワハラ)防止措置の義務化に向け、法整備を進める方針を示した。2019年の通常国会での法案提出を目指し、今後、細部を議論する。パワハラの定義や、措置の具体的な内容は、法制化後に同分科会で定める指針で示す。加えて同日、クレームや不適切な取引の押し付けなど、社外からのパワハラへの対応策も提示、指針で講じるべき方策を示し、周知・徹底することとした。(辻本亮平) 同日、雇用環境・均等分科会(奥宮京子分科会長、弁護士)で、取りまとめ方針を提示した。年内をメドに最終取りまとめを行い、法整備に進む。 パワハラの定義として「優越的な関係に基づく」「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」「就業環境を害する」――の三つを満たしていることを挙げた。業務上、必要な指導との線引きなど、具体的な定義については、今後定める指針で示す。 経営者に義務付ける措置の内容としては、パワハラを行った従業員の処分を就業規則などで明確にし、社内で周知することを示した。加えて、パワハラを受けた従業員が相談しやすいよう、窓口を設置。加害者・被害者のプライバシー保護も盛り込んだ。 加えて、顧客や取引先からの迷惑行為への対応策を指針で示し、周知・啓発する。迷惑行為の中身については今後議論するが、クレームや、親会社が下請け会社に不利な取り引きを押し付ける「下請けいじめ」などが俎上(そじょう)に載る見通し。物流業界では、荷主とトラック運送事業者の不適切な取引などが挙げられる。 また、同分科会では、パワハラを法律上の禁止行為とする方策が挙がっていたが、中長期的な検討課題として見送ることとした。理由として、違法となる要件がまだ明確でないことを挙げた。 同分科会ではかねて、パワハラ防止措置の義務化を巡って労働者側と経営者側の委員が激突。パワハラ防止の強化を求める労働者側に対して、経営者側は企業の負担増加を懸念していた。19日公表の取りまとめ方針には、中小企業のパワハラ防止措置を支援するため、コンサルティングを行うとともに、相談窓口を設置することを記載した。 同分科会によると、都道府県労働局に寄せられる職場の「いじめ・嫌がらせ」の相談件数や、嫌がらせ、いじめ、暴行による精神障がいの労働災害認定件数は増加傾向にある。パワハラの事例は物流業界でもみられ、共同通信によると、福岡県宗像市の運送会社「大島産業」を巡っては、元ドライバーの男性がパワハラによる損害賠償と未払い賃金などを求める訴訟を起こし、福岡地裁が9月、約1500万円の支払いを命じている。 【写真=パワハラの定義や措置の具体的な内容は、今後定める指針で示す】