港湾運送の働き方改革/残業規制 対応できない、厚労省専門委員会 雇用安定計画を審議 24時間体制がネックに
行政
2018/11/15 0:00
港湾運送では、働き方改革関連法の罰則付き残業規制に対応できない――。厚生労働省で9日、労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の専門委員会が開かれ、2019年4月から適用する新たな「港湾雇用安定等計画」の内容を労使が審議し、働き方改革関連法を踏まえた内容を盛り込む方向で一致した。ただ、経営者側の委員から「港湾が24時間体制で稼働し続ける限り、残業規制には対応できない」といった意見が出た。(辻本亮平) 同日、労政審職業安定分科会雇用対策基本問題部会の港湾労働専門委員会(鎌田耕一座長、東洋大学名誉教授)で審議した。 同計画は、港湾労働法に基づき、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、関門の各港(6大港)での雇用改善や能力開発に向けた指針を示すもの。5年ごとに見直すよう定められており、19年4月に新計画が適用される。見直しに向けた審議で、働き方改革関連法への対応が俎上(そじょう)に載った。 19年4月から大企業を対象に順次、適用される罰則付き残業規制について、経営者側の鶴岡純一委員(東海海運社長)は「現時点では対応できない」と指摘。理由として、港湾では24時間稼働で船舶の寄港に合わせなければならず、残業抑制に向けたスケジュール調整が難しいことを挙げた。 加えて、後藤正三委員(伊勢湾海運社長)は「季節によって需給の差が大きく、人手確保の面でも厳しい」と述べた。 労働者側の委員も、働き方改革への対応に向けた取り組みの必要性を強調。事務局は「港湾が今のまま、働き方改革に対応できるとは思えない」とした上で、「同計画の中に関連する記載を盛り込む」との方針を示した。 また、港湾労働法の適用範囲を6大港の一部職種から「全港湾、全職種」に拡大する方向で労使が合意しているとして、労働者側の玉田雅也委員(全国港湾労働組合連合会書記長)が「法整備に向けた先鞭(せんべん)をつけるため、計画の中に範囲見直しについての記述を盛り込むべき」と主張した。 一方、経営者側は「大枠では合意したが、具体的な中身は何も審議していない」「6大港への適用を前提とした計画に盛り込むのは無理がある」などと反論し、学識者の委員もこれに同意した。今後の対応方針案として、事務局は「労使間での議論も踏まえ、様々な機会で議論していくべき」とした。 【写真=19年4月から適用する新たな「港湾雇用安定等計画」の内容を審議】