佐川急便など、過疎地で貨客混載 タクシーで集荷は全国初 互いに利点享受し効率化
物流企業
2018/11/01 0:00
佐川急便(荒木秀夫社長、京都市南区)と山城ヤサカ交通(粂田晃稔社長、京田辺市)は10月29日、タクシーを活用した貨客混載による宅配輸送を開始した。佐川急便京都精華営業所(精華町)の担当エリアである笠置町を対象に実施。当面、山城ヤサカ交通のタクシー1台を投入し、同町への荷物の配送に加え、集荷も行う。 佐川急便によると、タクシーを活用した貨客混載輸送で集荷業務を行うのは初めて。1日当たり配送10~20件、集荷5~10件を手掛ける。実績をみながら、他の過疎地域への拡大も検討していく。 26日、記者会見を開き、佐川急便の内田浩幸取締役が「物流効率化と地域社会の活性化につなげたい」と抱負を述べた。 担当するドライバー3人は、交代要員2人とともに、荷扱いや接客マナーについて佐川急便で研修を受けた。タクシーのトランクに積載できるサイズの集配用ボックスを佐川急便が用意。集配時に着用するジャンパーや、データ処理に必要なハンディーターミナルも貸与する。取り扱うのは一般のドライ貨物で、クール便は対象としない。 運送業界でドライバー不足が深刻化する中、同営業所では笠置町、和束町、南山城村といった過疎地域への集配効率化が課題となっていた。一方、山城ヤサカ交通は、過疎地域への効率的な配車やサービス体制の維持・向上が求められていた。今回の提携によりトラックの集配業務が効率化され、稼働率が上昇。当該地域にタクシーを常駐させることで、旅客のニーズにも素早く対応できるようになる。 山城ヤサカ交通は、新たに貨物自動車運送事業の許可を取得。貨客混載事業の開始に合わせてタクシー会社が事業許可を取るケースは初めてで、粂田社長は「貨客の輸送は本来、別々の事業として行われるべきものだが、過疎地域では、需給関係や人手不足から、どうしても効率が悪くなっていた。佐川急便と協力することで、お互いにメリットを享受するとともに、地域の活性化にも貢献できると考えている」と述べた。 会見後、テープカットを実施。佐川急便のドライバーから山城ヤサカ交通のドライバーに荷物が引き継がれ、粂田氏の合図で第1便が拍手に送られ出発した。(小菓史和) 【写真=貨客混載事業の開始に当たり、握手を交わす佐川急便の内田取締役(左)と山城ヤサカ交通の粂田社長】