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明送、民事再生のモデルケース 給料より燃料費を削減

物流企業

2018/10/29 0:00

 【茨城】低温食品輸送を主力に展開する明送(鶴岡英男社長、茨城県守谷市)は2007年、それまでの急激な拡大が要因となって30億円の負債を抱えて事実上倒産。直ちに民事再生法を申請した上で、08年には当時の社長に代わり、鶴岡氏(68)が専務から就任。社員と共に「民事再生のモデルケースになろう」と誓い、当初の再生計画10年を5年で成し遂げ、この10年で売上高は1.7倍に拡大している。(谷本博)  1967年の創業。東京都世田谷区に本社を構え、ピーク時には全国に10カ所近く拠点を持ち、トラック300台で売上高は76億円だった。「本業自体は利益も出ていたが、欲をかいて本業以外に手を出したことが原因」(鶴岡氏)。拠点を整理し、守谷営業所(守谷市)、東北営業所(宮城県大和町)、埼玉営業所(埼玉県戸田市)に集約し、本社を東京から守谷に移転した。  「運送業界での民事再生法による再建期が難しいことは分かっていた。それだけに民事再生のモデルケースになるという意志が強かった」  荷主に加え、トラックディーラーなどから支援を得られたほか、当時のドライバーがほとんど辞めなかったことが大きい。ドライバー募集に際しても「民事再生中」を包み隠さず説明した上で、採用することができた。新しい取り組みとして、人材重視の考えから「燃費や修理代などの経費は削減するが、社員の給料は絶対に削減しない」方針を貫いた。  安全対策として「新車乗務」を掲げる。「中古車は安く手に入るが、その分修理代も掛かる。ドライバーは新車に乗ると、喜んで故障のストレスも無くなる」として、新車導入から5年で中古車市場に売却。走行距離が40万~50万キロ程度のため、高値で売れるのも魅力だ。  高速道路での社速を時速80キロに設定したことで、燃費が全社平均で14%アップ。事故減少にもつながり、損害保険料の優良割引率は最大の75%を8年連続継続している。  18年12月期の売上高は16億5千万円と、10年前の1.7倍を見込む。現在の従業員126人、トラック104台を、3年後をメドにそれぞれ150人、130台に増やし、売上高20億円を目指す。  17年は創業50周年、新生「明送」となって10年の節目を迎え、取引先関係者らを招いて「感謝の集い」を開催した。式典に合わせ、新しいロゴマークとオリジナルのユニホームも作製した。  ES(従業員満足度)重視の姿勢を貫いているのも大きな特徴だ。無事故のトライバーには毎月コメ5キロをプレゼントするほか、奥さんの誕生日には花束を贈る。また、記念日などを「アニバーサリー休暇」として導入。18年からは脳ドックまで含めた人間ドックを従業員全員に強制的に受診させている。  「人間ドックでは一人当たり7万~8万円掛かるが、従業員全員の健康管理が最大の責務」。今後は安心して働けるように、現在65歳までの定年を70歳まで延長する方針を決めている。「働き方は様々ある。再生時から共に苦労してきたドライバーたちだからこそ、できるだけ長く働いて欲しい」 【写真=本社が東京から茨城県に移転】





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