日立物流、AIT株の20%を取得 日新運輸全株と交換 中国関連貨物を強化
物流企業
2018/10/15 0:00
日立物流は、日中間の海上フォワーディング事業が主力のエーアイテイー(AIT)と資本・業務提携する。日立物流がAITの株式の約20%を取得する一方、AITは日立物流傘下の日新運輸(坂本泰典社長、大阪市此花区)を完全子会社とする。中国及びASEAN(東南アジア諸国連合)市場では日系企業とともに多くの海外物流大手が進出しており、2社は新体制の下で競争力強化に注力していく。10日の共同記者会見で、日立物流の中谷康夫社長は「2社合計の海上貨物取扱量は業界トップ3に入り、競争力が更に強化される。アジア市場でのシェア拡大に向けた対応を加速させていきたい」と狙いを語った。(高木明) 資本提携では、日立物流がAITの発行済み株式の20%を保有し、AITを持ち分法適用会社とする。日新運輸との株式交換を通じ、AIT株を日立物流に割り当てる。AITでは、2019年3月1日付で日新運輸を完全子会社化し、両社の資本業務提携を確実なものにする。 AITは東証1部上場で、海上フォワーディング業務を主力とし、特に中国から日本向けの衣料品、雑貨などの取り扱いに強い。年間約20万TEU(20フィートコンテナ換算)の海上貨物を取り扱っているが、うち中国関連が8割を占めている。直近の売上高は251億円(18年2月期)。 会見で、AITの矢倉英一社長は「(1998年の創業以来)業績は順調に伸びてきたが、最近は『踊り場』にあり、伸び悩んでいる。今回の日立物流との資本・業務提携を一大飛躍の絶好のチャンスとしたい」と語った。 一方、日新運輸は同じく日中間の海上フォワーディング事業とともに、衣料品を中心とした検針・検品・加工業務などに強い。現在、中国に7現地法人、アセアンにも5現法を配置。売上高は140億円(18年3月期)で、海上貨物を5万8千TEU、通関は6万4千件を取り扱っている。 中谷社長は「(日立物流グループでは)フォワーディング事業の強化が経営課題の一つになっていた。しかし、今回、強いパートナーと組むことができ、体制が整った」と話した。 日立物流の18年3月期の連結売上高は7004億円で、うち国際物流事業関連が4割弱を占めている。国内市場が伸び悩む中、国際物流のてこ入れを成長戦略としている。16年3月には佐川急便(荒木秀夫社長、京都市南区)を中核事業会社とするSGホールディングスと資本・業務提携し、経営統合を視野に入れながら収益基盤の強化に取り組んでいる。 物流業界では、中国及びアセアン地域などの物流ネットワーク拡大や海上・航空フォワーディング事業の強化が目覚ましい。日立物流とAITによると、2社合計の海上貨物の取扱量は73万TEU。専業大手では郵船ロジスティクス(水島健二社長、東京都港区)が77万TEU(17年3月期)、近鉄エクスプレスは66万TEU(18年3月期)を取り扱っている。 【写真=資本業務提携を発表した日立物流の中谷社長(右)とAITの矢倉社長】