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置田運輸、過失ゼロなのに弁償 追突され積み荷「全損」 荷主が一歩も譲らず

物流企業

2018/10/11 0:00

 居眠り運転のトラックに追突されて積み荷が「全損」し、過失ゼロにもかかわらず弁償――。実運送事業者にとって納得しがたい事態が現実に発生している。過失が無いため、貨物保険に入っていても適用されず、これといった対策も無い。追突された置田運輸(横浜市南区)の置田圭三社長(39)は「物流業界にとって由々しき問題。同様のケースで泣き寝入りしている事業者は少なくないのではないか」と話す。(吉田英行)  事故は2017年10月31日午前5時過ぎ、岡山県備前市の山陽自動車道上り線で発生した。福岡県内の倉庫から関東方面に向け、飲料を輸送していた同社の大型トラックが、居眠り運転のトラックに追突された。幸い双方のドライバーにけがは無く、トラックも荷台の変形なども無く、自走できる程度の損傷で済んだ。  その場で積み荷を確認すると、梱包する段ボールや樹脂製ラップに外傷は無く、追突の衝撃でパレットごと10センチほど前方にずれていた。  元請けの指示で福岡県内の倉庫に戻り、積み荷を下ろしたところ、荷主は「商品の安全性を100%保証できなくなった」として「全損」と判断し、元請けに対し商品代金264万円を請求。元請けは置田運輸に請求したため、同社が支払うこととなった。  交通事故としての過失割合は10対0で、置田運輸側に過失は無く、相手側の福岡県内の運送会社も過失を認めた。置田運輸は相手側に対し、商品代金と運搬処分費の計292万円の支払いを求めた。しかし、相手側は積み荷について「商品としての価値は損なわれていない」と主張。18年2月に横浜簡易裁判所に調停を申し立てた。  横浜簡裁は、全損の評価を示す科学的証拠を出すよう指示。しかし、荷主側が提出したのは、商品落下の衝撃に関するデータで、追突に伴う横からの衝撃に関するデータでは無かったため、不採用となった。こうした経緯を経て7月、292万円の7割を置田運輸、3割を相手方運送会社が負担することで調停は成立した。  元請けはこの調停結果を荷主に示してみたものの、荷主は一歩も譲らない。過失が無いため、貨物保険も適用されない。結局、無過失の交通事故でありながら、物損で7割の損害賠償を強いられることとなった。  どの実運送会社にも起こり得るこうしたケースについて、置田運輸の顧問である未来創造弁護士法人(横浜市西区)の松本圭以弁護士(32)は「荷主が科学的根拠を示さず、全損を主張していることが問題。対策として、元請けとの運送契約に『事故の際、裁判所の判断があるまで、下請けは支払いをしない』『第三者に損害が発生した場合は、元請けが対応する』などの条項を明記する方法がある。ただ、そうした条項を入れると、元請けが契約に応じない可能性もある」と指摘する。  置田氏は「何が最善の策なのかが分からない。物流業界全体に関わる問題だ。運送契約についても今後検討したい」と話している。 【写真=対策について話し合う置田社長(右)と未来創造弁護士法人の松本弁護士】





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