農水省、食品流通の合理化方針 評価と懸念が分かれる パレット化・共同配送
行政
2018/10/11 0:00
食品流通の今後の在るべき姿は、製・販・配の連携による合理化――。農林水産省は4日、食料・農業・農村政策審議会(農水相の諮問機関)の部会で、「食品等の流通の合理化に関する基本方針」案と「卸売市場に関する基本方針」案を妥当と認め、議決した。食品メーカーの委員などから、評価する声が多く上がった一方、実効性の確保を懸念する意見も相次いだ。同省では今後、地域の実情に沿った好事例の発掘と普及に努めていく。(辻本亮平) 同日、食料産業部会(伊藤雅俊部会長、味の素会長) で、両方針案を諮問した。 食品などの流通の合理化に関する基本方針は、トラック輸送の負担を軽減する取り組みを関係事業者に求めるもの。パレット化や既存施設をストックポイントにした共同配送、トラック予約受け付けシステムの構築が盛り込まれた。 卸売市場に関する基本方針では、流通効率化や衛生管理の高度化に向け、備えるべき施設が示された。トラックバースを設けたり、それぞれの市場が荷物を集約して別の市場に転送できるようにしたりする。 両方針案について、加藤百合子委員(エムスクエア・ラボ社長)は「今後の在るべき姿が示されている」と評価。森山透委員(三菱食品社長)も「食品業界で懸念されていることが、よく反映されている」と述べた。 ただ、実効性の確保を懸念する声も多数あった。例えば、地方では農業協同組合(JA)の施設を含め冷蔵倉庫が足りないことから「都心だけ固めても食品流通の品質は高くならない。地域の実情に応じた対応が必要」(栗田美和子委員、クリタエイムデリカ社長)との発言があった。 また、加藤氏は「旗振り役がいないと、現場で基本方針と同じ方向性を目指すことは難しい。忖度(そんたく)だらけの施設ができかねない」と指摘した。 事務局は「メーカー、産地、小売りも巻き込んで取り組まないといけない。好事例の発掘と普及に取り組む」と強調。その上で「(トラック運送事業者の時間外労働など罰則付き上限規制が始まる)5年後までに方策を現実化できるようにしたい」と述べた。 【写真=「卸売市場に関する基本方針」案などを議決】