ホワイト経営認証制度、来年度「1つ星」から開始 全事業者の平均以上対象 「改善基準順守」項目追加
行政
2018/09/24 0:00
国土交通省が2019年度の創設を目指す「ホワイト経営認証制度(仮称)」は初年度、「一つ星」のみでスタートさせる。一つ星はトラック、バス、タクシーの各モードで平均水準を上回る事業者を対象とし、取得の翌年度から、より高度な「二つ星」「三つ星」を申請できるようにする。認証を判断する評価項目は「必須」「加点」を合わせ83項目(トラックは80項目)、制度案は12月までに取りまとめ、2018年度末までに認証団体の公募を実施する見通しだ。(田中信也) トラック、バス、タクシーの業界労使団体の代表と有識者、自動車局の担当課長らで構成する「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」(野尻俊明座長、流通経済大学学長)が19日開かれ、認証対象項目と認定基準について協議した。 7~8月に全モードの事業者、労働組合を対象に実施した項目別の達成状況に関するアンケートを踏まえ、モード別に基準値を算出。「全事業者の中で、上位の一定割合の水準」とする考え方に基づき、①一つ星=全事業者の上位50%②二つ星=上位25%③三つ星=上位12.5%――を認定割合基準案とすることを確認した。 配点は認証項目ごとに最大2点(一部営業所適合は1点)で、トラックは128点満点中、基準値ベースで一つ星75点、二つ星87点、三つ星96点が最低点となる。ただ、項目が新たに追加されたため、いずれも最低点のハードルは上がる見通しだ。検討会で論点として挙がっていた地域や事業規模による基準の「差異」については、地域別では設けないが、規模別に関しては引き続き検討していく。 初年度は一つ星のみでスタート。二つ星以上は翌年度から一つ星取得の事業者を対象に申請を受け付ける。なお、一つ星は書面審査により認定するが、二つ星以上は多くの項目で現地審査を行う。この際、申請内容の事実関係について従業員の過半数で組織する労組の証明がある場合、事者の負担軽減の観点から現地審査の実施率を引き下げる。更に、申請料の軽減も図り、過半数組織労組のお墨付きをインセンティブとしていく方針だ。 認証項目は、①不適切事業者の排除(法令順守などの状況)②態勢整備・PDCA(計画―実行―評価―改善)③労働時間・休日④心身の健康⑤安心・安全⑥多様な人材の確保・育成⑦自主性・先進性――の分類に分かれる。ただ、前回会合で抽出した66項目案についてアンケートで達成しているか否かの回答を求めたものの、多くの項目が具体的な要件とするか、必須か加点対象か――など詳細が固まっておらず、委員からの意見や、アンケートの結果を受け、要件の見直しと項目の追加・再編を行った。 追加は19項目で、働き方改革関連法に基づく、罰則付きの時間外上限規制の導入を踏まえ「改善基準告示に規定する月の拘束時間または休日労働の限度違反が無い」(全て必須項目)、「運転者の時間外労働の合計が年間960時間以内」(二つ星以上必須)、「時間外労働と休日労働の合計が年間960時間以内」(同)など労働法規の順守に関する項目が多く規定された。 そのほか、「運転者の離職率が過去3年間平均で25%未満」(全て必須項目)、「女性運転者が常時いる」(全て加点項目)、「運転者が利用できる資格支援制度(運行管理者、フォークリフト、クレーンなど)を設けている」(同)などを加えている。 要件の見直しでは、「過去3年間に運転者が死亡または重傷を負った労働災害(交通事故を除く)が発生していない」については、中小規模事業者のハードルを下げる観点から、「荷役作業中の労災も含む」との記述を加えた上で必須項目から加点項目に変更。また、「退職金制度を設けている」は、特にタクシーで「中小規模事業者の多くは制度が無いのが実態」との指摘があったことを受け、一つ星は必須から加点に改めている。 アンケートでの申請意向に関する回答結果を踏まえ、認証への申請件数をシミュレーション。「申請する」「おそらく申請する」を合わせ6割と全モード中、最も意欲が高かったトラックは7150社が申請すると推計。全体では8901社と予測している。 なお、検討会での意見などを踏まえ認定基準、認証項目について更に精査するとともに、認証団体の要件や実施体制など詳細を詰め、12月にも開催する次回会合で制度案を取りまとめる。19年度中の制度創設に向け、18年度末までに認証団体の公募を実施する見通しだ。 【写真=検討会で認証項目と認定基準について協議】